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【新刊試し読み】『ホーボー・インド』|蔵前仁一

海外個人旅行の先駆者でバックパッカーの教祖と呼ばれる著者が、初めて食をテーマにインドを巡った著書『ホーボー・インド』が2024年10月16日(水)に発売されたことを記念して本文の一部を公開します。

本書について

食をテーマに旅した南インド、天空の湖の国ラダック、先住民アートが残る奇跡の村、そして西ベンガルへ──インドの東西南北、ぐるりと方々(ほーぼー)を歩き回った、名著『ゴーゴー・インド』の著者による待望のインド旅行記。著者自身の撮影による各地の美しい写真が旅心を刺激する一冊。


試し読み

食べ歩くインドへ
2024年3月、18年ぶりに南インドを旅することにした。この旅はいつもと違ったテーマがある。食の旅だ。南インドで現地の特色ある食事をすることをテーマにしたのだ。
 実をいうと、僕は旅先の食事にはほとんど関心がない。安く、おいしく食べられればなんでもいい。ずっとそういう姿勢で旅をしてきたので、何度も旅をしたインドでも、食についてほとんど何も知らなかった。
 それが食をテーマにインドへ行ってみようと思ったのは、『食べ歩くインド』という本
を作ったことによる。この本は小林真樹こばやしまさきさんというインド食器販売業の方が20年以上インドに通って、インド全土の食を案内したものだ。それを僕が経営する出版社「旅行人りょこうじん
から刊行したのだ。自分で出しておいていうのもなんだが、この本は名著といってもいい。
(その後、旅行人が新刊の刊行と販売をやめたので『食べ歩くインド』は阿佐ヶ谷書院から増補改訂版として2024年に刊行し直された)
 北インドと南インドでは食文化が大きく異なる。北はチャパティを主食とする小麦文化で肉料理が多い。一方、南は米を主食とする米文化でベジタリアンが多い。僕はそういうイメージを持ってインドを旅していたが、『食べ歩くインド』を読むと、それは大幅にまちがっていた。例えば、南インドはベジタリアンが多いというのはまったくの間違いで、
むしろ近年は北インドの方がベジタリアン比率は高いらしい。南インドのタミル・ナードゥは「知る人ぞ知るノンベジ大国である」という。広大なインドには、各地に独特の食文化があり、インドの食文化を北と南で大雑把おおざっぱにわけることはできないということをこの本は教えてくれた。
 今まで僕がインドで食べていた食事はいったい何だったのだろう。あらためて僕はそう考えた。いろいろなもを食べたことは食べたが、それらはいったいどういうものだったのか。本で紹介されている料理の一部は確かに僕も食べたことがあるはずだが、とにかくやたらとおいしそうな料理が数多く紹介されている。これは食べないわけにはいかないではないか。そういうわけで、『食べ歩くインド』(南・西編)を持って僕は南インドへ旅立ったのだ。まさか食をテーマに自分がインドを目指すことになろうとは考えてもみなかった。
 本文中に「」付きで引用される文章は、他に断りのあるもの以外はすべて小林真樹さんの『食べ歩くインド』(南・西編)からの引用である。いちいち同じ引用元を書くのはわずらわしいので、あらかじめお断りさせていただく。


目次

◎南インドを食べ歩く
◎天空の国ラダックへ
◎ミーナー画を探して
◎ジャールカンドの奇跡の村
◎二つのベンガルを旅する


著者紹介

蔵前仁一(くらまえ・じんいち)
1956年鹿児島県生まれ。作家・グラフィックデザイナー。慶応義塾大学卒業後、80年代初頭からアジア・アフリカを中心に世界各地を旅する。個人旅行者のための雑誌「旅行人」編集長を務め、多くの旅行作家を輩出、バックパッカーの教祖と呼ばれた。『ゴーゴー・インド』や『ゴーゴー・アフリカ』(ともに凱風社)をはじめ、『旅で眠りたい』(新潮社)、『あの日、僕は旅に出た』(幻冬舎文庫)、『よく晴れた日にイランへ』、『旅がくれたもの』(旅行人)、『テキトーだって旅に出られる!』(産業編集センター)など著書多数。

ホーボー・インド
【判型】B6変型判
【定価】本体1,760円(税込)
【ISBN】978-4-86311-420-3

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