私はピーさんから拝借した寸胴鍋にオイルをひき、薄皮をむいたペコロス(小玉ねぎ)を軽く炒めました。料理に少々の香りをつけるためですが、のちにペコロスを輝かせるためには、ここで焼き色をつけてはいけません。本当にさっと炒めるだけでよいのです。
「それで、ペットの話なんですけれど」
「あとでゆっくり伺いますね」
話したがっているピーさんの言葉をさえぎるようにして、私は寸胴鍋に赤ワインを振りかけました。すべてのペコロスが浸ってもなお、ボトルの三分の二ほどを注ぎ入れます。ほぐした二缶のコンビーフと、ひとつかみの干しぶどうも投入しました。
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2023年5月23日(火)発売
『寂しさから290円儲ける方法』ドリアン助川/著