平和通りに蛇屋があった昭和の時代、ほんの小さな子供だったブッツリさんを見かけたことがある。
胸のなかでシンバルが鳴ったかのように、私はそう確信しました。赤影のアイマスクを付けて平和文具店の前に佇んでいたのは、小学二、三年生だったブッツリさんに違いないと思ったのです。
でも私は、それを口にはしませんでした。記憶のなかの少年が仮面で顔を隠しているなら、たとえ半世紀という歳月が流れても、彼の正体を暴いてはいけないのです。少年は赤い仮面をかぶることで、何者かに変身する夢を見ていたのですから。
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2023年5月23日(火)発売
『寂しさから290円儲ける方法』ドリアン助川/著