【日本全国写真紀行】65 徳島県勝浦郡上勝町
徳島県勝浦郡上勝町
葉っぱで輝く彩の山村集落
「葉っぱビジネス」というビジネスをご存知だろうか。徳島県の山奥にある小さな町が、料理の〝つまもの〞用の葉っぱを自分たちで採取し、それを全国の料亭や料理屋などに売るというビジネスである。これまで見向きもされていなかった葉っぱを商品化したこと、そしてそれに関わる人々に高齢者が多かったことから「葉っぱビジネス」は大きな話題となり、映画化されるほど注目を集めた。
このユニークなビジネスを始めたのが上勝町である。人口約1300人、高齢化率50%以上、豊かな自然だけが財産ともいえる典型的な過疎の町だ。かつて、この町は林業と温州みかん栽培が盛んな地域だったが、1981年の異常寒波によってほとんどのミカンの木が枯死。町は大打撃を受けた。この危機を救うべく一人の農協職員が考え出したのが、自分たちの山林にある葉っぱを売るというビジネスだった。アイデアもすばらしいが、それを軌道にのせた町の人々、とくに高齢女性たちが活躍したことが、さまざまな示唆を含んだ成功例として広く知られることになった。最盛期、葉っぱの売上は年間3億円近くまでになったという。
徳島市から車で約50分。ひっそりと上勝町はあった。町の85%が山林というだけあって、どこを見ても豊かで厚い緑に覆われた山がある。この山林の間に50程度の小さな集落が点在。険しい山を切り開き、斜面にへばりつくように家々が並んでいる。山奥の沢から水を引き、野菜や米は自分たちの手で作り、極力薪を燃やして火を使う。そんな昔ながらの暮らしをしている人々が上勝町には多いと聞く。
実は、この上勝町、2003年に日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」をした自治体なのだ。ムダ、ゴミ、浪費をなくし、リサイクル率100%を目指す。上勝町はこの二十数年間、高いリサイクル率を維持し、ゼロ・ウェイストを持続可能な自治体として注目を集め続けている。
高齢化が進んでいたものの、こうした町の取り組みや豊かな自然に魅了された若者たちが移住するなどして、少しずつ町は活気を取り戻しつつある。もちろん、自分たちのくらしを支える葉っぱビジネスをさらに成長させる取り組みにも余念がない。かじの葉、青柿葉、もみじ、山ぶどう、南天、レンコン葉……取り扱う葉っぱの種類は年々増えている。
上勝町の自然がもたらした恵みは町と人々に潤いを与え、それがそのまま町の魅力になっているのかもしれない。
※『ふるさと再発見の旅 四国』産業編集センター/編より抜粋
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