第八話 ニューヨーク(後編)|ドリアン助川「寂しさから290円儲ける方法」
ケイタさんとSAKEバーで声を嗄らし合った翌々日の午後、私はチャイナタウンからウォール街を抜け、マンハッタンの最南端に位置するバッテリー・パークへと向かいました。海に面したこの公園で、ケイタさんにお助け料理を手渡すことになっていたのです。
バッテリーという公園名は、ピッチャーとキャッチャーのコンビではなく、もちろん電池でもなく、砲台を意味します。米国独立後の第二次英米戦争でここに砦が築かれ、海に向けて砲身が並んだのです。
約束の時刻より早く着いたため、公園内にケイタさんの姿はありませんでした。私はベンチに腰かけ、目の前の海を眺めました。ブルックリン地区とニュージャージー州の両岸に臨み、イースト・リバーとハドソン・リバーの合流点でもあるこの狭い水路は、大小多数の船が行き交います。そして私の目は、様々な形の船の向こう、遠くに霞む青銅色の像に吸い寄せられます。
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2023年5月23日(火)発売
『寂しさから290円儲ける方法』ドリアン助川/著
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