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第八話 ニューヨーク(前編)|ドリアン助川「寂しさから290円儲ける方法」
ドリアン助川さんによる、一風変わった「旅」の短編小説連載。
日本中(あるいは世界中?)の孤独な人、苦悩している人に会いに行き、何か一品料理を作ってあげながら人生相談に乗る男の物語。290円は何を意味するのか……? ちょっと不思議な感覚の、旅する「おたすけ料理」小説。
月1回更新予定です。
ロスアンゼルス経由の乗り継ぎ便を利用したため、ニューヨークのケネディー空港までは丸一日かかりました。ほとんど眠れなかったせいか、私はぬいぐるみの綿にでもなったような気分でアメリカ合衆国に入国し、マンハッタン行きのバスに乗りこんだのです。ところが今度は渋滞に巻きこまれ、バスはなかなか進みません。グランド・セントラル・ターミナル駅に着いたときには、身体が座席の形に固まっていました。
一刻も早くホテルにチェックインし、ベッドの上で身体を伸ばしたい。そう思っていたのですが、ようやくマンハッタンの路面に立ち、鉄串のようなクライスラービルの尖塔を仰いだとき、かつてこの街で体験したとびきりの料理が頭のなかに浮かんだのです。疲れているはずなのに、舌の奥が盛り上がり、つばが湧いてきました。休んでいる場合ではない。お悩みのお客様と会う前に、まず私にとってのニューヨークと再会しなければと、なぜか駆り立てられるような気分になりました。
この話が読めるのはこちら↓
\書籍化決定!/
2023年5月23日(火)発売
『寂しさから290円儲ける方法』ドリアン助川/著
ドリアン助川
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家等を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説はフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞」の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。2023年、フランス語版『あん』がリヨン大学より「翻訳作品賞」を授与される。
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