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【臨床で使える解剖学】肩関節の外転について
【2020/03/25 更新】鍼灸師・柔道整復師1年目の方向けの内容をまとめています。国家試験対策では出題されないけど臨床に役に立つ内容にしています。
【今日のテーマ】
肩関節の外転に関する内容
肩関節は0~60°までと60°~150°までと150°~180°までの3段階に分けて考えることができます。
まずは肩関節の解剖学から復習していきます。
有料記事に設定していますが、期間限定で最後まで無料公開しています。
肩甲上腕関節について
上肢帯は肩関節の動きに合わせて肩鎖関節と胸鎖関節も動きます。
これら3つの関節は滑膜関節と呼ばれており、烏口肩峰靭帯は機能的な第2肩関節とも呼ばれております。
肩関節外転の第一段階目(0~60°)
第一段階では三角筋と棘上筋が作用します。
【三角筋の解剖学】
作用:肩関節の外転・屈曲・伸展
起始:肩甲骨の肩峰・肩甲棘・鎖骨の外1/3
停止:三角筋粗面
支配神経:腋窩神経
【棘上筋の解剖学】
作用:肩関節の外転
起始:棘上窩
停止:大結節
支配神経:肩甲上神経
肩甲上腕関節は特に他の作用が働かずにそのまま外転していくと90°付近で関節窩上縁に大結節が衝突してしまいます。
これを肩甲骨の運動や肩関節の外旋・軽度屈曲を行い、後方へと大結節を逃して衝突を避けています。
肩甲骨の位置により肩関節は30°屈曲位での外転が生理的な外転と考えられます。
【臨床でのワンポイント】
肩関節の外転・挙上の際に肩関節は外旋して、大結節との衝突を避けています。
ですが、現代社会での業務の多くがPC作業となってきました。
デスクワークをする際の肩関節の関節位置は屈曲、軽度内転、軽度内旋です。
このため、デスクワークを長時間しているクライアントは手を外転させるなどの動作を行う際に大結節との衝突を避けれず回旋腱板(特に棘上筋)を損傷するケースがあります。
デスクワークを長時間行った際は、肩関節を外旋するストレッチなどを行うように指導すると軽減します。
肩関節外転の第2段階目(60~150°)
第2段階の動力筋は「僧帽筋」と「前鋸筋」が作用します。
【僧帽筋の解剖学】
作用:上:肩甲骨と鎖骨の挙上
中:肩甲骨を内方に引き固定
下:肩甲骨を回転、上腕の挙上支援
起始:外後頭隆起
項靭帯
棘突起
(第7頚椎+全胸椎)
停止:肩甲棘
肩峰
鎖骨外側1/3
支配神経:副神経
第2~4頚神経
【前鋸筋の解剖学】
作用:肩甲骨を前へ引く
肩甲骨を回す
起始:第1~8肋骨
停止:肩甲骨内側縁
支配神経:長胸神経
第5~7頚椎
肩関節の外転運動に関して、肩甲骨上腕関節のみでは外転は60°程度で止まります。
そこからは、肩甲帯と共同して外転を継続させます。
肩甲骨自体は肩甲上腕リズムで外転していきますし、胸肋鎖関節と肩鎖関節も機能的に関連しています。
前鋸筋と僧帽筋は肩甲胸郭関節(肩甲胸郭連結)での外転の連携を形成している
この前鋸筋や僧帽筋の作動・肩甲帯との共同運動は150°でまた制限が入ります。
【肩甲上腕リズムについて】
肩関節の外転は30°付近までは肩甲骨は殆ど動きません。
これをセッティングフェイズといいます。30°以降では上腕骨挙上と肩甲骨上方回旋の比率は2対1で動いていきます。
肩甲上腕リズムは外転時のときのみ注意しがちですが、屈曲でも同様に肩甲上腕リズムが起こります。
しかし屈曲時は60°付近まで肩甲骨が動かないので臨床時は注意が必要です。
屈曲時に30°と勘違いして、この患者は肩甲骨の動きが悪いと判断するとのちのち問題となることがあります。
肩甲上腕リズムでの肩甲骨下角の位置は中腋窩線を超えないのも特徴です。
完全外転時に肩甲骨下角は中腋窩線上に触れやすくなりますが、前鋸筋により胸郭から1cm以上は突出しません。
【臨床でのワンポイント】
患者を伏臥位(うつ伏せ)させて寝てもらう場合、手をベッドから垂らすため肩関節は外転30°から90°程度になります。
肩甲上腕リズムを考えると、肩甲骨の位置は解剖学的位置ではなくなりますので、そのまま解剖学的な位置関係を想像して触診すると正常な位置を見失います。
肩関節外転の第3段階目(150~180°)
肩関節の外転運動の後半に差し掛かると脊柱の運動を行い始めます。
脊柱起立筋による過剰伸展により180°を達成させます。
片方のみの外転挙上であれば反対側の脊柱起立筋の作用で側方傾斜を行うだけで足りるため、両側外転挙上と片側外転挙上では筋の働き方が少し異なります。
この3段階の外転運動は主導となる筋肉が変化してはいるが、他の筋肉が作用しなくなるとは言えません。
つまり第2段階でも棘上筋は作用しますし、第三段階においても棘上筋は作用し続けています。
つまり外転の最後では、すべての外転に使用する筋肉が収縮をしています。
肩甲骨の徒手とモビライゼーション
まずは外転時の肩甲上腕リズムについてさらに詳しく解説を行います。
基本的にはセッティングフェイズがあり外転30°までは肩甲骨は動かきません。
外転30°を超えた段階から肩甲上腕関節での運動と肩甲骨の回旋がやく2:1の割合で推移します。
上腕骨が2動けば肩甲骨が1動くというものです。
では臨床的にどのように用いるかですが、これは患者への動作の再教育でも使用できますし、施術者の患者への操作にも用いることができます。
筋の拘縮や筋力低下により、肩甲上腕リズムが機能していないことを問診・カウンセリングで発見したときに患者への説明を行い肩甲骨のモビライゼーションを行い、正常なリズムに戻していきます。
可動域の問題によって肩甲骨が動かないのであれば徒手検査で確認を行っていくと良いです。
患者を側臥位にし、後方から調べます。
術者は一手で肩甲骨を把持し、もう一手で上腕骨を保持します。
肩甲骨の動作を行う際に大切なのは、別途に対して水平や垂直と言った動きでは動きではなく、肋骨に沿って動かすことが重要です。
患者の負担が少ない範囲で動かし硬い部位を見つけたら30秒ほどそのままストレッチングかけるとモビライゼーションにもなります。
【大結節の衝突のタイミングについて】
手のひらを下にした状態で腕を外転していくと大結節と肩峰が衝突するタイミングがあります。
骨組みだけで理解している場合は90°付近でぶつかるように思えるかもしれませんが、肩甲骨の上方回旋が働くため145°までは大結節は肩峰に衝突をしません。
実際に挙上する際はその付近から手のひらを上にし、上腕骨の外旋によって回避して145°付近でも肩峰は衝突しません。
ただ現代人は上腕骨が内旋している場合が多く衝突することがあります。
鎖骨と肩甲骨の外転のメカニズム
肩関節の外転挙上を行う際に忘れては行けないのが鎖骨の回旋です。
フェーズで言うと60-150°あたりの第2段階の所で用いられます。
肩甲骨が上方回旋されだすと鳥口鎖骨靭帯が伸長されます。
伸長された靭帯に生じる張力によって鎖骨はクランクのように後方回転し、外転挙上をスムーズに行えるようにします。
肩関節の外転運動のまとめ
今回は肩関節の外転に焦点を絞って説明をしていきました。
問診時に肩が痛いと来た場合、肩だけみても改善しないケースも多々ありますが、まずは肩をみてどうなっているか。それから全身をみてどうなっているかと患部に遠い所と近い所両方の様子がわかると力強いですよ。
このノートを作成するにあたって参考とした書籍をお伝えしておきます。
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