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実父との再会

「実父に会ってみる?」

そう母から言われ、私は「うん」と即答しました。

振り返るとその時の感情は、会いたい、より好奇心が勝っていたと思います。

そしてとうとうその日はやってきました。

その日は東京駅のKITTEで母、実父と待ち合わせをしていました。私は時間通りに着く予定だったのですが、緊張のせいかお腹を壊してしまって、東京駅のトイレに引きこもっていました。

緊張でお腹を壊したりすることはほぼないので自分でもそんなに緊張してるのか...と驚いたのを今でも覚えています。

そしていよいよ実父が待つKITTEの飲食店に入ると、母と実父が気まずそうに笑いながら出迎えてくれました。

私も実父もなんと挨拶して良いのかわからず
「はじめまして...?かな...?」とよくわからない挨拶を交わし、一先ず席につきました。

それからどんな会話をしたのか私は全く覚えていないのですが、東京駅での別れ際は昨日のことのように覚えています。

なぜか別れ際になって、無感情だったはずなのに涙が溢れて止まらなくなってしまったのです。

初めての感覚でした。というか経験する事がまず無いので当たり前なのですが。

ほぼ初めて会って数時間会話をしただけなのに、血の繋がり、遺伝子の繋がりを肌で感じてしまったのです。

「ああ。私の父親だ。」

と心から思いました。そう思った途端涙が次から次へと溢れて、その別れ際だけはもう少し一緒にいたい。離れたく無いと強く思っていました。

その瞬間実父も涙を流し私を抱擁してくれました。温かい何かで心が満たされていく感覚がありました。

私は後に是枝監督の「万引き家族」を観ることになるのですが、既にご覧になった方はわかると思います。あの映画はドキュメンタリータッチで血の繋がりが大事なのか、一緒に過ごした時間が大事なのか、家族とはなんなのかを完全に観る側に投げかけています。

余談になりますが、私は是枝監督の映画が大好きです。何故かというと、物語に白黒を付けないからです。最後は必ず観る側に優しく問題提起をしてくれる。何も考えたく無い時は起承転結がハッキリとした作品を観ますが、しっかり映画を楽しみたい時はそういう作品を選ぶようにしています。

話を戻しますね。

私はその「万引き家族」を観た時、血の繋がり、遺伝子って恐ろしいなと瞬間的に思いました。

私にとっての父親はやはり育ての父親ですし、何にも変えられない愛着や愛情があります。ですが、血の繋がりっていうものには敵わないです。肌で感じてしまうものだから。何も言わなくても実父が考えていること、感じていることがなんとなくわかってしまうのです。

だから、たかが家族。されど家族。なのです。

確かに家族には色々な形があって一概にこれが家族というテンプレは決められないけれど、血縁関係は、とにかく愛おしくもあり面倒な柵でもあります。

私はそれを身をもって感じてしまいました。

実父と直接会い、私の中の色々な事が精算されるはずでした。しかしこれが地獄の始まりというか、私がもがき苦しむことになる入り口になるなんてこの頃は微塵も思っていませんでした。

では。また次回。



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