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高齢者がスポーツチームの未来をつくる?

Jリーグクラブでは、来場者の平均年齢が上がるたびに、若者へのプロモーション施策を増やす傾向があります。もちろん、将来のファンとなり得る若い世代へのアプローチが必要であることは間違いではありませんが、「観客数を増やす」という点においては、高齢者へのアプローチを強化することも重要だと僕は思います。

人口動態は、他のどの統計よりも予測が正確であると言われていて、大きくぶれることはほとんどありません。例えば山形県であれば、すでに人口の約3分の1が高齢者となっていて、今後その割合はさらに増加することが見込まれています。そのため、若い世代に向けた施策を行っても、ターゲットとなる人口の母数が少なく、プロモーションに対する効果はそこまでレバレッジが効きません。一方で、高齢者は増加傾向にあるため、そこに対して効果的な施策ができれば、集客として大きな成果が出せると思っています。

高齢者へのアプローチを強化することは、若い人と高齢者を区別するという考えではありません。
世代を区別して取り組むことではなく、世代を超えたつながりを築き、幅広い層に愛されるクラブを目指すことです。
モンテディオ山形では、U-23マーケティング部やOver-60Communityなど、23歳以下、60歳以上のサービスを行っていますが、これもどこかで必ず交わるところをつくっていこうと思っています。
老若男女あらゆる人がスタジアムに集い、交流を図る。そういう空間をつくれるのが地方にあるプロサッカークラブではないかと思っています。

昨年、高齢者へのアプローチとして、O-60モンテディオやまびこ(現在:Over-60 Community)をリリースしました。
O-60は、「健康」「繋がり」「機会」の3つを目的にしています。
「健康」というのは、今ある健康課題の解決というよりかは、今後起こりえることに対しての未病、予防を重視しています。その一つとして、「声磨きトレーニング(ボイストレーニング)」を導入しています。こちらは、誤嚥性肺炎や認知症の予防、アンチエイジングケア、オーラルケアが期待できるトレーニングになっています。サッカーの伝統的な応援スタイルであるチャントにも通ずる部分があり、鍛えた声を存分に発揮していただきたいと考えています。
次に、「繋がり」です。年を重ねると、人との交流機会が激減します。人は、他人との繋がりがあるからこそ、楽しさや、自己の必要性を認識できると思っています。1年間やってみて1番良かったなと思うのは、参加者の皆さんが新たに出会い、日々交流を重ねていったことです。参加者の方にとって、家族でもない、近所でもない第三の場所がスタジアムになっていきました。
そして、この活動の集大成は「機会」です。機会に込めた思いは、高齢者の方が支えられる側から支える側、必要とされる人として生涯を過ごすということを意味しています。それが雇用であれ、ボランティアであれ、活躍の機会をつくることを目指しています。その一つの取り組みとして、参加者がJリーグの1試合を企画する「O-60プロデューサー シニアデー」をコンテンツに入れています。60歳以上の方が自分たちの理想を本気でつくる。きっと難しいことや、できないことにぶつかるわけです。年を重ねてもそれを超えてチャレンジすることができれば、きっと年をとることも楽しくなるし、若い人に背中を見せ続けられると僕は思います。

このサービスをはじめた時から、口癖のように言ってることは、高齢化は脅威じゃなくて機会だということです。
遅かれ早かれ全国、世界の至るところで高齢化は進みます。その先行事例になるチャンスが日本の地方都市にはあります。
Over-60Community(O-60)を通して、高齢者とつくるスポーツチーム、広義でいればまちづくりを証明していきたいと思っています。

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