01-2 寺田ひろみ(シンガーソングライター)の場合
ホルモンの森に消えゆく人たち
01-2 寺田ひろみ(シンガーソングライター)の場合
数か月前、年下のアイドル男性との恋仲がマスコミに取り上げられた。
根も葉もない話だ。
その男性が所属するグループに楽曲を提供していた。
打ち合わせの後、皆で会食の帰り、ヒールの踵が外れてしまい困っていたところ、そのアイドル男性が背負ってタクシーまで乗せてくれたのだ。
揺られる背中越し、申し訳なさと恥ずかしさで顔を真っ赤にしていたと思う。(慣れないヒールなんて履いてくるんじゃなかった。)
激しい後悔の念。
運悪くそれが恋愛ネタとしてスクープされた。
二日後の金曜日のことだ。
マスコミに取り上げられるなんて、めったに無いこと。
誤った報道にもかかわらず、まんざらでもない気分になっていた。
テレビ報道の取材で誤解であることを弁明したが、とくに寺田のそれは使われることがなく、年下のアイドル男性の映像が使われた。
「ネコみたいに軽かったっすよ」「可愛かったすよ」
彼も否定はしてくれたものの、リップサービスのつもりで発言したのだろう、いくつかのふざけた言葉のほうにマスコミは反応してしまった。
弁明のつもりで書いた寺田自身のブログに、彼のファンと思しき人々から揶揄され、それが発端となってブログは炎上してしまった。
収集がつかなくなり、やむなく閉鎖。
いままで細々とだがファンを繋ぎとめていたのに…。
どん底の空虚感。涙もでなかった…。
illustration:holmium
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