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やりたいことが無いのかと聞かれるのが、ずっとしんどかった

私はやりたいことがある人間ではない。

自分を美大生だと紹介すると、
「やりたいことあって良いよね〜」
とか、
「好きなとこできて羨ましい〜」
とか言われてしまう。

そうじゃない。
やりたくないことから逃げて、逃げて、逃げた場所が美術という領域だった。

小学生時代はかなり荒れている環境で過ごしていた。と言っても暴力が横行するというのではなく、出る杭が打たれる、目立つ人は足を引っ張られるという薄らと曇りがかった場で生きていた。
その環境から抜け出すために中学受験をした。
でも今度は勉強でどれだけ頑張っても勝てない、順位をつけられるのに疲れたと言い訳をして、美術をやることにした。
美大に行ってもなるべく人気のない専攻を選んだ。

他人から見ると私はアクティブに見えるかもしれない。でも違うのだ。ひたすらに消去法で自分の道を決めてきた。
だからこの先美術でやりたいことがあるかと言われたら困ってしまう。私自身は空っぽだ。障害物を避けて行き着いた先に美術があっただけ。美術にゴールがあるわけではなく、通過点に美術が存在したというだけの話だ。

生きがいは大切。
夢があることは素晴らしい。
それは一つの正解でありながら、全員に当てはまる正解ではないと思いたい。
壁を乗り越えた先にしか輝かしい未来がないのか。そんなはずはない。それを否定されたら私は生きていけない。今を生きるために美術をやっている。この前生きた先に美術があるかは今はまだわからない。それでいい。それがいいのだ。
先にある事を目指すんじゃなくて、目の前にある事をただひたすら紡いでいく日々にも、きっと小さな煌めきがあるんだと信じていたい。

今まで書いたことと矛盾するかもしれないが、もう一つだけやりたいことの話。
バイト先でお世話になったおじさんが退職する時に、
「夢、叶えてな!」
と言われたことが自分でも意外なことに凄く嬉しかったのだ。
無愛想でお世辞にも好かれているとは言えなかった、でもこんな捻くれ者の私のことは不思議と面白がって可愛がってくれたおじさんのこと。
私はこれからもずっとずっと忘れないと思う。

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