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コレクティブハウスと多様性

2021年7月29日の東京新聞で、「多世代つながる生活いかが?コロナ禍『コレクティブハウス』に関心」という記事を読んだ。

私は驚いた。

なぜなら、コレクティブハウスでの人間模様を描いた落合恵子さんの「偶然の家族」(東京新聞)そのものの世界が現実に存在していたからだ。

記事によると、「駅近くの十四階建ての店舗件住宅に、シングルマザーの親子、単身赴任中の男性などさまざまな八世帯が入居している」とある。

さらに、本格的な厨房機器が揃う台所とリビングは共有のスペースで、ただ場所を共同利用するのではなく、住人全員で暮らしを自主運営しているというのだ。

その一例として、大人の住人が持ち回りで食事を作る「コモンミール」を写真つきで紹介している。一つの白いお皿に野菜や肉、揚げ物など載っていて美味しそう。

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東京新聞 TOKYO Web版より画像を引用

同じ軒下に何人もの人が単身で入居しそれぞれ別の部屋に住み、玄関と水回りは共用というシェアハウスはすでにたくさんあるが、世帯で入居ができて、住人たちで暮らしを自主運営するコレクティブハウスの実例は初めて知った。

「偶然の家族」は、今年の6月ぐらいに初めて読んだ。三十年前に出版されたが、絶版になっていたところに東京新聞から今年復刊された。

古びた洋館アパートを舞台に繰り広げられる男女七人の偶像劇。肝になるのが、洋館の持ち主である夏彦と、パートナーの平祐(へいすけ)のゲイカップルである。

当時、シェアハウスはおろか、コレクティブハウスという共同生活、もっというと家族でない人たちが共生し合い、心身ともに支え合いながら暮らす場所はあまりなかったし、ゲイカップル、シングルマザー、学生、男性単身といった標準的な家庭か外れた暮らしを物語にすることは画期的だったのではないだろうか?

おろか、現在でもこのような暮らし方はまだまだ浸透していないと思う。私自身も、家庭を持ち暮らしているし、この国では家族の形態すら多様性を自分にも他人にも許さない。家と血縁家族というコミュニティが強固だもん。

そんなこと言っている私も、「偶然の家族」を読み始めた時はなんか、もぞもぞするというか、居心地悪いというか、そういった感覚がなかなか抜けなかったんです。

しかし、落合さんが四季の移ろいと共に描く人間劇は、ただただ美しい。その人の立場や境遇でなく、その人そのものと向き合っているから。読み終えた時には、洋館の住人全員のファンになっていたほどです。

読書は人の当たり前を覆してくれる、自分を疑うことができる唯一の営みである。

ちなみに、落合恵子さんは子どもと女性のための本&雑貨のお店「クレヨンハウス」を運営していることでも有名ですが、このお店がまた桃源郷で…ホントに素晴らしいのです。ここに行くと時間の流れが変わります。

「偶然の家族」と紹介したコレクティブハウスは全く同じ状況というわけではないので、お間違えなきよう。どんな暮らしをされているのか。今度、話を聞きに行ってみたいな。

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