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幼い頃は分からなかった。代打がどれだけスキルと精神力の要る立場なのかを。

フリーランスをやっていると、時々ピンチヒッターを頼まれることがある。
最近は新型ウイルスの影響でスタッフが突然現場に入れなくなってしまい、話が舞い込んでくるケースも多い。
(大体が家族の感染による濃厚接触者認定だったりする、世知辛い世の中だ)

私に声を掛けてくれるのはとても嬉しいし、経済事情としても願ったり叶ったりの状況である。
全力で喜ぶべきチャンスなのに、私の胃はキリキリと痛む。
私は思う。「引継ぐ」っていうのは0から自分で作り上げるよりもエネルギーの要ることだと。

そう考えたとき、私の脳内に神宮球場が表れた。そしてゆっくりと誰かがネクストバッターズサークルへ歩みを進める。
あれは真中…?いや、荒木か!?
そう、「代打のプロ」たちの姿が現れた。

スポーツ全体に言えることだが、旬の選手はスタメンで起用されることが多い。「代走」はちょっと専門色が強くてそれはそれで評価をされるが、代打のイメージはどうだろう。
正直、これから売り出す若手選手や、フルイニングがしんどくなったベテランがそこに座っているというイメージではないだろうか。
プロ野球選手自体も、代打をやりたくてプロになった、という人は恐らく居ないんじゃないかと思う。

でも、仕事の代打を任された私は思う。
代打は何か特別なスキルが必要な玄人の仕事だ。

スタメンは自分色にゲームメイクができる

私の仕事は、ある現場が始まる前に指名をされることから始まる。つまりスタメンに選ばれるのだ。
現場に入ることが決まると、私はプレイボールに向けて準備を始める。必要なデータをまとめて、いざ試合が始まった時、様々な作戦に対応するためだ。

これがはじめてのチームメイトだったりするため、中々難しい作業なのだ。
でも、自分の計画通りに現場が動くと、これが気持ちいい。次もスタメンで、なんて話になったりする。スタメンはゲームメイクのチャンスに溢れている。

順調にいく現場ばかりではない。自分のやり方と先方の戦略が違っていることもある。そういう時は打席毎に調整をかけていく。第一打席は様子見、第二打席は挑戦、そして第三打席で攻略する、といった具合だ。
たまに失敗もあるけれど、野球と違って途中交代はほぼ訪れない。試行錯誤しながら打率3割を目指す感覚だ。

スタメンの仕事が出来ないと代打はできない

果たして代打はどうだろう。ここで一発確実に流れをモノにしたい。そんな時に代打は呼び込まれる。ある意味10割を期待されていることになる。

しかも、自分のペースで組み立てた試合ではない。
途中合流をして、自分のスタイルを崩しおっつけてでも一打席で結果を出さなければいけない。スタメンよりも求められるものは大きい。

荒波の中を勝負してきた人にしか代打のプロは名乗れない。

代打はいつか分からない、安定ならやっぱりスタメン

代打ってすごいと思う。でも本当にいつ出番が来るのか分からない。恐らく、代打だけで食べていこう、という精神でいると、代打の仕事もままならなくなると思う。
それに、なにかのプロジェクトが始まる時、名前を上げてもらう事は仕事をする身として嬉しいことだ。

代打で決めることの出来る人は、本当に実力のある人だ。だけど代打をゴールとしては行けないと思う。代打はあくまで誰かの代わりなのだ。

君と一緒に仕事がしたい、そう思われる人は必ずスタメンに名前を挙げられる

私たちは、仕事をしていく限り、安定したスタメンを目指さなくてはならない。
でも、スタメンで結果を残さない人に代打の機会は訪れない。そして、代打で活躍した人にはまたスタメンになるチャンスが巡ってくる。

仕事人として、今ある役目を全うしていかねばならない、どんな仕事にも格好良さがあることを忘れないでいて欲しい。


今回は、ビジネスと野球を混ぜて話を進めてきた。
ちょっと分かりづらい例えもあったかもしれないが、何かを卑下したり、こっちの方が優位だ、と言いたい訳では無い。

なぜ、こんなに私が力説していたか。
私が代打で見逃し三振しちゃったからですよ。

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