農家とマーケティングに想いを馳せる
どうも、お久しぶりです。
ゆうきです。
僕は、マーケティングが好きです!
いきなり何を言い出すんだという感じですが、これにはちょっと訳がありまして。
最近(と言っても数年前から)マーケティングだ、ブランドだとよく耳にするのですが、最先端からレガシーの領域にどんどん広がってきているんですね。そして、僕が思うに、「農業」って結構対極にいたと思うんですよ。
「良いものを作っていれば勝手に売れる」
古き良き言葉で、昔の日本を支えてきた考え方なんですが、それが染みついてしまっているあまり、なかなかどうして1次産業は苦労しているわけです。
だから書く
この筆をとった理由は、自戒を込めて、です。
これからエンドユーザーを向き合って商売をしていく私たちですが、お客様からお金という対価を頂くわけですからプロにならねばいけません。
つまり、常により良い商品、サービス、提供できる価値を高めていかねばなりません。
その為には、マーケティングという学問は非常に重要であると考えているので、自戒を込めながら、自身に定着させるためにここに書き綴らせていただきます。
立場が変わるとなぜこうも分からなくなるのか
客観的に分析をしてみると、誰でも理解できるのに、実際に中に入ってしまうと全然違うことをやってしまうのです。
例えるなら…サッカーの試合をテレビや動画で見たことがあるでしょう?
日本代表メンバーに選ばれるレベルのプロの試合でも、
「なんでこっちにこんなにスペース空いているのにパス出さないんだ?」
「今この人フリーじゃん!」
とか、思ったことはありませんか?
あれって見ている私たちは、上空から俯瞰した映像で見れているために全体像が把握できているからなんですよね。
つまり、フィールド(現場)にいる人とテレビで観戦(外)にいる人では、同じ空間にいるにも関わらず、違ったものが見えているわけです。
これはビジネスにおいても似たようなことが起こりえます。
今回は、生産者と消費者の例で見ていきましょう。
目線を合わせる必要がある
農家は、”食”を思い浮かべて作物を生産しています。
消費者も、”食”を思い浮かべて作物を購入します。
しかし、農家が思う”食”と消費者が思う”食”は色々なズレが散見されるのです。
消費者の思う”食”は”食事”です。
トマト1つ買うにも、食事のことを考えて買います。
食事はブツ切りの思考で考えません。
誰と、いつ、どこで、どんな風に、どんな気持ちで、を考えながらトマトを選ぶのです。
対して、生産者の思う”食”は”農作物”です。
品質、味、色、栄養。
これらはとても大切な要素ですが、点でしかありません。
消費者に買ってほしいと必死に頭をひねり、より良いものを作ろうとする努力が、いつのまにか消費者を置いてけぼりにし、ついには選ばれなくなるという悲しい現実を引き起こしている理由の1つが、このズレです。
恋愛も、夫婦生活も、人間関係も、他のビジネスも、なんだってそうなんですが、相手の気持ちを推し量って、話せたり、提案出来たり、行動できる人は、どんな時でも高い評価を得ます。
恋愛であれば、モテます。
夫婦生活であれば、夫婦円満でしょう。
人間関係であれば、良い友人に恵まれるでしょう。
ビジネスでは、出世したり成功したりするでしょう。
人は誰だって、興味があることは自分に関わることです。
自分が関わらないなら、例えそれがどんなに良いものであったとしても、視界に入りません。気づかないのです。
相手の気持ちを推し量り、相手に”これは自分のことだ”と思ってもらえるようにするのがマーケティングであり、相手のことを想い、考え、よりよい未来に連れていけるのがマーケティングです。
そしてその後に、売上という結果がくっついてきます。
農家とマーケティング
僕たちのような、小さな小さな農家はマーケティングを駆使しなければ簡単に淘汰されます。
価格競争に飲み込まれれば、薄利多売の苦しい経営状況が両手を広げてお出迎えしてくれますし、戦う土俵を間違えれば、資本の力であっという間に押し出し一本です。
どうすれば、消費者に継続的に選んでもらえるのか・・・。
僕たちは、頭をひねって考えるわけです。
モノよりオモイデ
昔のCMで、こんなキャッチフレーズがあった気がします。
今や多くの場所で「͡コト売り」「体験売り」と叫ばれています。
そして、これは小さな農家が生き残る1つの術になると僕は思っています。
素晴らしい体験は価値があり、お金を払ってでも体験したいと人が集まります。
ちょうど先日、秘密のケンミンSHOWで放送されていた2つのお店が、体験を上手に生かした営業を行っていると感じたので、少しご紹介させていただきます。
1つ目は、宮城県のある油揚げ屋さんです。
その油揚げ屋さんは、中心地から車で1時間以上もかかる、山奥にもかかわらず休日には80人以上の長蛇の列をつくり、多い日には油揚げを1日で1万枚売るそうです。
油揚げは1枚130円。
しかし、この130円の油揚げの為に、車を1時間以上走らせそのお店に行くんだとか。
凄いですよね。
2つ目は、福井県にあるドライブインで販売されている、ドライブインよしださんのイカ丼です。
こちらのイカ丼は、1杯1700円で、そのイカ丼を食べる為だけにそこまでやってくる人も少なくないそうで、映像では駐車場はほぼ満車で、店内は人で溢れかえっていました。
また、付近は三方五湖というロケーションが最高のスポットがあるツーリングにもってこいな環境で、元々このイカ丼もツーリングを楽しむ人たちから美味しいという評判が広がって、今の行列店になったそうです。
10日間で3回もイカ丼を食べている人もいました。
個人的な推察ですが、この油揚げ屋さんもイカ丼を提供するお店も、体験という武器を活用して選ばれ続ける行列店になったのだと考えます。
商品のクオリティと体験の融合
油揚げ屋さんの成り立ちは、元々は定義山にお参りに来る参拝客向けに始めたそうです。
そして、この定義山はドライビングスポットとして地元で有名であり、よく免許取り立ての初心者ドライバーが、最初のドライブとして定義山のドライブを選ぶのだとか。
その道中で油揚げを買い、SNSなどに投稿をするので、免許取り立ての時期には、多く若者のSNSにこの油揚げの写真が投稿されるのだそうです。
僕は、このお店に行くまでの道中から、体験は始まっていると考えます。
そこで提供される油揚げが美味しいことは間違いないのですが、それをさらに美味しくさせている原因の一つに、多くの時間をかけて現地まで行った体験があると考えています。
環境の変化、道中の苦労、希少性など、それらがバランスよく混ざり合って、山奥にもかかわらず80人以上の長蛇の列を作り、たった130円の油揚げの為に1時間以上も車を走らせるのです。
そして、人気が途絶えない理由の一つに、若者にも漏れなく伝播しているところをあげておきます。
「同じような時期に同世代の若者のSNSに、この油揚げの写真が並びまくっている」
スタジオで宮城県代表のタレントさんがポロっと言った一言でしたが、これも行列を途切れさせない一つの理由になっていると考えます。
また、イカ丼は三方五湖を走るツーリング愛好家から愛されたドライブインのご当地グルメです。
そこに行ったらとりあえずイカ丼食べなきゃと付近に住む多くの人に言わしめるブランド力をもつイカ丼。
強いですよね。周りの人が勝手に宣伝をしてくれますから。
そしてそこは抜群のロケーションを堪能でき、道中の物語もあり、商品のクオリティを最高となれば流行らないわけがないですよね。
映像では、ツーリング愛好家はもちろん、家族連れや女性客で大賑わいを見せておりました。
ちょっと遠出のグルメって、もちろんご飯を食べているときも最高ですが、その道中の行き帰りが楽しいんですよね。
行きはたわいもない話に花を咲かせ、期待とワクワクで向かい、帰りは味の感想を言い合いながらワイワイ帰る。
こんな体験をさせてもらったイカ丼は、思い出として深く残り、人に話したくなるグルメに昇華されます。
話題性があり、メディアでも取り上げられた今、更に人気は加速するでしょう。
個性を出すならココだ
僕は、小さな農家が消費者から選ばれ続ける為の術は、ココにあると考えています。
もちろんそれだけでは足りませんが、体験は1つの強い武器になると考えています。
体験をコーディネートする。
農家の場合、畑や田んぼの位置によって、地の利や周辺環境など、先天的に決まってしまっている要因もあるかとは思いますが、それでも出来ることはあるはずです。
大前提として、安心安全があり、商品の高いクオリティがあります。
そこは忘れてはいけません。
ですが、それだけでは生き残れないのも事実です。
僕たちが農家という職業でご飯を食べていくには、リピーターの獲得は最重要事項であり、その為には”選ばれなければ”いけません。
その為にまず始めることは、顧客目線で考えることです。
顧客の立場で考え、生産者独自のズレてしまった常識を外へと追いやり、良い!と思った判断は思い切って取り入れていこうと考えます。
三方良しのその先へ。
(自戒をこめて)