『ベイビーわるきゅーれ』のアクション解剖
クライマックスのアクションシーンが見応えありすぎて、何度も見ている。スタントパフォーマー伊澤彩織演じる殺し屋のまひろと、殺陣師三元雅芸演じる渡部の最終戦闘シーン。アクション監督は園村健介。映画(特に邦画やアクション)をそんなに見ないので、他の作品と比べたりはできないが、どんなことが起こっていたか整理してみる。
渡部はまひろが持つ銃を落とさせるためもみ合う。銃弾をかわすためにしゃがんだところから背中につくが、すぐに振り返るまひろを押し込むが、離れる(ここがちょっと分からない)。渡部、蹴りのフェイントから、銃を持つまひろの腕をつかみつつ、滑り込んで下半身を両脚で挟む。
次のカット。まひろの足をつかんで転がる渡部。まだまひろは銃を持っている。反対に転がる。その動きに合わせてまひろも転がる(ヒールフックのエスケープっぽい)。渡部、まひろの左足首を掴んだまま立ち上がる。再びまひろ回転し、銃が手から離れる。渡部はまひろの両足の裾を持って、引きずっていく。(裾掴むのは柔術っぽい)
次のカット。まひろ、ふたたび回転して渡部に向き直る。手がクロスするので、渡部は手を離す。そのまま渡部はまひろを蹴ろうとするが、ブレイクダンスっぽい動きでまひろはかわす。渡部はころんで、画面手前に背中をつく。すぐに二人は起き上がり、渡部がまひろのバックを取りかけるが、まひろは体をしずめてエスケープし、向き直る。渡部、まひろの手首を掴んで背中の上で腕を極めようとする(多分)が、再び体を回転させて渡部の周りを一周することで逃れる。このあたりまで、グラップリング寄りの展開。
次のカット、銃の方に駆け寄るが、再びバックを取られ、失敗。まひろは体を反らせてまたも向き直る(すごい。総合の試合なら大歓声)。渡部の頭を下げさせて、背中に肘の打ち下ろし。クリーンヒットはせず、渡部はまひろの片足を抱えるが、すぐに落とす。反対の足を抱えて歩き(この最中で次のカットに)、まひろが倒れたところをサッカーボールキック。
立ち上がるまひろ。試合ならとっくにレフェリーストップだが、ここから互いに構えて打撃の展開。安定のカンフー感。渡部の攻撃をまひろはステップでかわす。拳をにぎるまひろに対し、渡部は手を開いて伸ばしてくる。フェイントも多い。まひろの右フックをウィービングし、左フックも中をかすめる。渡部は左腕でまひろの背中を抱え、離れたまひろの腹にサイドキック。顔への蹴りはまひろがしゃがんでかわす。
壁際に追い詰められたまひろは、タックルに入る(ここ、両脚抱えたらテイクダウン取れるのになあ)が、渡部に脇を差されている。そこから渡部は肘をつかってまひろを遠ざけ、パンチ3発。フック系のまひろに対して渡部のパンチはまっすぐが多い。再びまひろのパンチは空振りするが、ウィービングした渡部の襟を掴む。そこに渡部がまひろにボディブロー、からの左腕を取ってまた極めようとする。
走って逃げるまひろの首を後ろから抱えるが、まひろすぐに抜け、フック、ストレートを振るがまた空振り。渡部の襟を掴んでやっと顔パンチが当たるがしっかりガードされている。渡部のカウンターも沈んでかわすが、上着の裾を背中側から掴まれる。しかし、壁を背にした渡部を肩で押し込むと、奥足の膝を顎に命中させる。形勢逆転か。そのまま壁に押し付ける。ケージMMAが始まっている。
渡部はまひろの背中に肘を打ち下ろし、ボディからのもう一度背中に肘で、まひろを突き放す。再び打撃の距離になる二人。渡部のジャブ、アッパーは当たらず、ワンツーはガード。ストレートをウィービングしてまひろがボディフックを打ち込む。渡部はまっすぐパンチを打ち続けるが、まひろはずっと潜っている。多分渡部は膝蹴りを知らない。打ち合いの中でも渡部はバックテイクと腕の極めを狙っている。
が、まひろは再び回転して外し、逆に渡部の腕をひねる。この辺りは合気道の四方投げ?っぽい。再び、合気道っぽい投げを試みるまひろが回転して後ろを向いたところ、渡部が指をまひろの口に突っ込む。反則キタ。からの、向き直ったまひろに目潰し。汚いぞ。
まひろの見えていない方に回り込む渡部。両脇さして投げようとするが、足を使って踏ん張ったまひろの背中に膝。あ、膝知ってたんだ。からの走りながら連続膝。転がったまひろの頭を掴んで壁に押さえつけ、顔を殴る。ガードするまひろの両腕を壁に押さえつけ、顎に頭突き3連発。初期UFCか。
しかし驚異的に打たれ強いまひろは渡部の骨盤を両脚で押して突き放す。変則的だけど柔術っぽい。再び立って向き合う二人。まひろは落ちている銃にゆっくりと視線を送る。渡部もそちらを見る。これはもちろんまひろのフェイント。銃に駆け寄る途中で方向転換したまひろは、渡部の鼻に向かって飛び頭突きを食らわす。
渡部はまだ立ってくるが、銃を取り戻したまひろは超速で弾をこめ、無事に撃ち殺すのであった。
めでたしめでたし。
映画のアクションシーンは色んな格闘技や武術の要素を昇華させて作り込まれているんだな、と思いました。
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