食品メーカーで商品企画を行っていた私が思う、モノタロウのデータドリブンな商品販促の面白さ。
※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職等は取材時点のものを掲載しております。
モノタロウは間接資材を取り扱うBtoBオンラインストアを運営しており、商品点数は1800万点にも及びます。間接資材販売のECとして日本最大規模のサービスへと成長している当社で、商品情報の整理や販促業務を担う商品販促担当はどのような仕事をしているのか、モノタロウに中途入社した商品採用Aグループの河杉さんにインタビューしました。
PDCAを多く回して改善ができる仕事を
ーまずこれまでのご経歴について、教えていただけますか?
新卒で飲料メーカーに入社し、事業企画関係の部署に配属されました。
そこは自動販売機を使って飲料を展開する部門だったので、自動販売機そのものやそれに関する販促資材の調達・管理・活用推進、さらには取引先との折衝、営業からの問い合わせ対応など様々な業務を担っていました。コスト削減をしながら売上の最大化を目指していく中でPDCAサイクルを回していたのですが、この経験を通して「改善」が私の中で一つの大きなキーワードになっていきました。
その後今度は商品企画・マーケティング部門へ異動になり、実際に全国で販売される商品の企画開発に携わりました。
ー担当されていた業務は、メーカーにおいてはいわゆる花形と言われるような部署だと思うのですが、なぜそこから転職されたのでしょうか?
食品の商品企画は企画から発売までのサイクルが年単位で長く、前の部署のように目の前の課題をスピード感を持って解決していくような働き方はできませんでした。
加えて、伝統的な会社だったので縦割りが厳しく、自分ができることも限られていました。意見やアイデアを出すことよりも、様々な調整をすることが主業務とも言える状態だったんです。
私の中で軸になっていた「改善」とずれが生じ、また新型コロナウイルスの影響により生活が変わり、人生についても色々と考えるようになりました。それをきっかけに転職活動を始めることにしました。
ーモノタロウ以外にはどのような会社を見ていましたか
有名な会社からベンチャーまで、業界や会社の規模など関係なくチェックしていました。
前職で培った武器を活かせるような企画やマーケティング系の仕事に絞り、「改善」というキーワードに合致する会社を探していました。
ーモノタロウは河杉さんが想像していた通りの会社でしたか
まず「改善」という点において、まさにその通りでしたね。そして、裁量権を持って働けるところや会社全体としてデータを活用している点などは入社前から伺っていた情報と同じで想像通りでした。基本的には自分で考え業務を遂行できる環境ですし、意思決定が早くスピード感を持って仕事に取り組むことができています。
データドリブンな文化と聞いていましたが、実際にデータ活用に関してはSQLを使い欲しいデータを抽出したり、BIツール(※)を活用して情報を可視化したりしており、データに基づいて物事を判断する環境が整っていると感じています。前職で経験していた分析よりもはるかに高度なことを行っているので、そこは自分自身も勉強中です。
商品販促担当の仕事とは
ー現在の担当業務を教えてください
現在の担当業務は大きく分けて2つあり、1つ目は商品情報の整備です。
モノタロウはECサイトなので、ホームセンターのようにお客様が現物を手に取って確認することはできません。だからこそ、サイト上で情報を的確に伝え、この商品が欲しいものかどうかをお客様が判断できるようにする必要があります。画像を工夫したり細かなスペックを記したり、数多くある商品をいかに効率良く整備していくかなど、そういった配慮や改善がサイト全体の利便性、そして売上へと繋がっていきます。
2つ目は販促業務です。モノタロウの販促担当はカテゴリ単位で仕事を担っているので、同じカテゴリの商品採用担当者とタッグを組みます。何を売りたいかを考えるのが採用、どうやって売るかを考えるのが販促、というイメージです。
その中で私が担っているのは年2回刊行のカタログ制作とWEB上の特集の企画です。
カタログ制作においては、お客様に購入していただくためには、掲載情報の取捨選択が重要で、商品の実績や特性を確認しつつ掲載場所や内容を細かく決めていきます。
特集の企画は、テーマを決めてカテゴリに特化したプロモーションを展開していくのですが、その際はコンテンツの制作・管理を実際に行うメンバーと一緒に進めていきます。企画に合わせてセールを実施することも多く、商品をどう見せたらお客様に買っていただけるか、アップセルやクロスセル(※2)を狙えるような商品選定になっているかにも注意を払っています。
ーモノタロウの商品販促担当者の特徴について教えてください
必要なデータを自らデータベースから集めてくることが習慣化されていることですね。
私も入社時はまったくの素人でしたが、データを扱うリテラシーが高いメンバーがモノタロウには多くいるので、その方々に助けてもらいながら勉強し、今では簡単なSQLなら使えるようになりました。
また、カテゴリごとに担当を持つからこそ、そのカテゴリや商品への深い理解や知識を得ることができるのも特徴だと思います。カテゴリによって市場環境はまったく異なりますし、また販促に関しても正解はないので、自分で仮説を立てていく力は自然に養われていきます。
ーどのようなデータを分析し、活用しているのですか
まず基本となるのが、売上や購入ユーザー数などのデータで、現状把握や課題発見のためにそれらを使うことが多いです。商品単位やカテゴリ単位など条件を変えて確認し、過去からの推移や現在のトレンドなども確認していきます。BIツールやデータ抽出ツールなど、モノタロウは社内ツールが充実しており、それを使えばSQLなどのスキルに精通していなくてもデータ分析が行えます。
とはいえ、自分が欲しいデータをピンポイントで取りたい時や、既存ツールで出したデータよりなお一層深い情報を知りたいなどの場合にはSQLも必要になる場面もあります。商品販促担当者ならSQLを使えた方がより仕事の質を上げることができると思います。
ーカタログについてもお伺いしたいのですが、ECが主であるモノタロウが、今なおカタログを作っている理由は何なのでしょうか
カタログはモノタロウの顔の一つであり、重要な販促ツールだからです。現場で実際に作業されるお客様からすると、現場にはパソコンを置いていない場合もあり、わざわざ事務所に戻ってインターネットを開くのではなく、紙媒体のカタログの方がなにかと楽なんですよね。
例えば工場の方々にとってカタログはかなり役立つツールになります。現場に一冊置いておけば「これが欲しい」とすぐに示せますし、それを現場の事務の人にお願いして買ってもらう、という連絡手段にも活用できます。他にも、商品紹介のツールとしての側面もカタログにはあるので、モノタロウではこういう商品を扱っているんですよ、という宣伝の場にもなっています。
とはいえ、紙媒体であるカタログの効果はどうしてもWebと比べると定量的に計測することは難しい部分があります。ちょうど今、今後のカタログのあり方を検討しているタイミングで、現場に気軽に置いておける厚さ、重さのカタログというものも展開していこうか、メーカーとより協業して商品のピックアップに注力していこうか、などを部門としても考えているところです。
さきほど工場の方々にとってカタログは重要と言いましたが、研究系のお客様では役割はおそらく違うと思います。その方面の方々はパソコンを使う機会が多いでしょうし、そうなるとカタログの意味合いも変わってきます。
ユーザーの実情にあったカタログというものも今後どんどん探って見つけていく必要があると考えています。
圧倒的なデータ量による改善が面白さ
ー仕事における面白さを教えてください
大量のデータを使って様々な分析ができることは大きな魅力だと思っています。
モノタロウは自社サイトを持っているので、単純な売上や購入ユーザー数だけでなく、どういったお客様がどれくらいの頻度で商品を買われているか、どのようなキーワードが多く検索されているかといったデータも蓄積されています。だからこそ多角的な分析ができ、より質の高い施策に繋げることができます。
前職はメーカーでしたが、基本的に卸業者に対する売上情報しか持っておらず不十分なデータ量で分析を進めていかざるを得ませんでした。また、販売を担うのはメーカーではなく小売店ですので、ユーザーの購買情報に関してはメーカー自身では収集できず、外部のリサーチ会社に依頼して収集するというような、費用も時間も掛かるもので、どうしても量にも質にも制約があります。
ですがモノタロウでは、ECサイトを自社で持っていますから、そうしたデータを自分たちで持っています。自分が納得するまでデータを見て、これぐらいの根拠があれば胸を張って仮説が立てられる、というところまで踏み込めます。
そして、その仮説を自らの手で検証できる機会が非常に多いです。
自社サイトを持っているからこそ、アウトプットもある程度自由に行えますし、施策を打つ上での制約も少ないです。そして、数百万のユーザーの皆様に支えられていますから、実際にアウトプットの結果が目に見えて出てきます。
商品販促担当は商品ページの構成を担いますが、それは実店舗に置き換えると、売り場や棚を作り変えることができる裁量を持つということです。
それが、実店舗のような物理的ハードルも特にないので、企画立案から実行、結果の検証までをスピーディーに進めることができます。もちろん仮説が外れ施策がうまくいかなかった場合でも自社サイトならすぐに中止し、改善してから再出発することが可能です。
このように、PDCAをどんどん回していくことができるので、成長を求めるにはとても良い環境だと思っています。
正直毎日2時間程度残業していた前職と、ほとんど定時上がりのモノタロウと比べた時に、今の方が思考疲れがあると言いますか、一日あたりで圧倒的に頭を使っている実感があって、非常に濃密な時間を日々送っています。(笑)
ギャップやそこから得たものとは
ー業界を変えての転職ですが、前職のどういった経験が活きるのでしょうか
初対面の方でも仕事に関係があれば臆せず確認しに行く習慣などはそのまま活きますね。前職ではわからないことが途方もなく沢山あり、それに加え問題も様々で、課題をスピーディーに解決するためには必要だったからこそ培われたスキルですね。モノタロウに入社してからも自らの足ですぐに聞きに行けるからこそ有益なデータを得ることができ、それを分析に役立てられています。
そのほかに役立っているのはマーケティング時に培ったフレームワークの考え方ですね。市場分析したりマクロやミクロの観点から見ていったりする際には、前職で培ったフレームワークが役立っているなと感じます。
ー反対にギャップがあるスキルはどういったことでしょうか
これまでのお話で感じられていると思いますが、分析などはかなりギャップがありますね。データの見方、使い方等のレベルは異なります。SQLをコーディングするなんて前職の時には考えていませんでしたから(笑) データアナリストというと大げさかもしれませんが、それに近いスキルを得られているように思います。
ーちなみに、風土面のギャップ等はどういったことがありましたか。
ギャップを感じたのはミーティングですね。前職は縦割りが厳しかったこともあり、合意形成や上の方々に指示を仰ぐことが多かったのですが、モノタロウは年次や役職に関係なく誰もがフラットに意見を交わしていて、風通しの良さを感じています。モノタロウには「傾聴」という行動規範がありますが、本当に文化として成り立つ現場があるのだなと非常に驚きました。
他にもギャップを感じたところを挙げれば、在籍されている社員のみなさんが落ち着いているところですね。モノタロウは現在右肩上がりで成長していますし、ギラギラしている方がたくさんいるのかなと身構えていたのですが、実際はそんなことはありませんでした
(笑)。むしろ落ち着いている方が多いような印象があります。行動規範はありますが、「こういう人であれ」という規範立ち振る舞いを強制するようなものではなく、「他者への敬意」を掲げているためか、それこそダイバーシティと言いますか、様々な人が自然体でいられる環境が整っているように感じます。
ー確かに多様性のある職場だと感じます。他にも、中途入社だからこそ感じるモノタロウの良さはありますか?
私を含め中途入社の方が多く、様々な業種や業界の方が社内にいるのも良いところだと思います。小売、商社、メーカー、業界によって扱っているものは異なりますし、だからこそ持っている知識もバラバラで、それぞれの方から学べるものも多岐に渡っています。
前職のように転職・中途が少なくて生え抜き社員ばかりの会社になると、やはり経験値や知識のベクトルがみんな似通ってしまうのですが、モノタロウは様々なバックグラウンドの方達が入ってくるので、それが集合知になっていますし、個人としても得られるものが多くあります。
今後の取り組み
ーモノタロウで今後取り組んでいきたいことはありますか
さまざまな販促を行い再現性を持たせていきたいです。
モノタロウの販促は実はまだまだ成長段階のところがあり、ノウハウも溜まりきっていない状態なので、私としてはまず販促手段の幅を広げていきたいと考えています。
今はWeb上での特集やセールを主に行っていますが、それ以外の手法も積極的に試し、販促方法のバリエーションを増やしていきたいです。それが増えていけば、あとは目的に合わせて適した販促手段が選べるようになると思います。これを実現するには発想力を広げ、さらに効果検証を繰り返す必要がありますね。
商品販促の仕事は正解がないですが、だからこそ無限に選択肢があって、これからいろいろなことを試していけるなと感じています。
ーありがとうございました!