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JBL 104-BT-Y3 & ヒビノ 104-Y用ケーブル ※2021.5.20追記

さて、今回は昨年(2020年)に新規導入した小型のモニタースピーカー、JBL 104-BT-Y3(以下、104-BT)をご紹介しましょう。購入にあたっては、IK MULTIMEDIA iLoud Micro Monitor(以下、iLoud MM)も同時にお借りして、自宅スタジオでテストしました。正直、 製品としてのバランスはiLoud MMの方が整っていると思います。音質的にもすごくしっかりしていて、小さいくせにめちゃくちゃ低域が出るし!このサイズを超えた鳴りは、DSPを使って内部で音作りしている効果でしょう。もし他にスピーカーを持ってなかったら迷わずそっちを買ってましたね(笑)。でも、僕はJBL LSR305という2WAYスピーカーをすでに持ってるので、それと似た方向性のiLoud MMよりも、同軸スピーカーである104-BTの方が面白いと思ったのでした。それに、ECLIPSE TD508MK3というパッシブのフルレンジスピーカーからの買い替えというのもあって、丸みを帯びた見た目と音の特性がそれと似たような方向性だったというのも理由のひとつです。

今回は細かいスペックなんかはあまり語らず、このスピーカーを使う上でのコツみたいなものをご紹介しようかと。10ヶ月近く使ってきて、だいぶコイツのキャラが分かってきたので。当初の予想とは裏腹に、思ったよりも一筋縄ではいかないスピーカーでした(笑)。

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デモ機をお借りしての試聴。
左が104-BT-Y3、右がiLoud Micro Monitor。


◉特徴

個人的に気に入ってる104-BTの特徴をざっと挙げてみましょう。

・同軸2WAYによる定位の良さ
・Bluetooth搭載
・BTに加え、AUX(3.5mm)、RCA、TRSの入力があり、
 それらを排他的にも使えるし、ミックスして出力することも可能
・音質補正用のEQなどは一切なく、DSPでのデジタル的音作りはされていない
・スレーブ側のスピーカーもそこそこ重くなっていて左右の重量差が少ない

つまり、DSPパワーバリバリのサイボーグ的なiLoud MMとは対照的に、素のままで勝負するという、何とも潔いスピーカーなんですね。Bluetoothを使うことはほとんどないので、BT非搭載の104-Y3でも良かったんですが、何かの時に使うかな?と思って一応(笑)。BTの音質は有線接続に比べたらだいぶ劣りますが、来客時に参考音源流すとか、そういう用途には十分だと思います。まぁこのご時世、誰もうちに来ないですけどね(苦笑)。

有線接続の音質についてですが、基本的に素直な傾向だけど、その中でも部分的に大きな起伏がある感じ。初めて店頭で試聴した時には「結構ハイ上がりだな」と思ったものですが、自宅で試してみると、それに加え中域が凹んでるなというのも感じました(これに関しては後述)。低域はiLoud MMよりも明らかに出ませんが、無理して出してる感じがないし、それでいて寂しさはまったく感じません。むしろ見た目からの想像よりもしっかり出る!定位に関しては同軸らしく、センターがバシッと出る感じ。オーケストラなんかを聴くと、奥行き感なんかも結構頑張ってます。けど、やっぱりなんかしっくりこない部分があるなぁ……というのが正直なところでした。というワケで、出音の周波数特性をSonarworks Reference 4で測ってみることに。

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一番気になってた中域の凹みですが、案の定、1kHzが盛大にディップしてます。こうなると、声などが引っ込み、その下の400Hzあたりのピークが目立つので箱鳴り感のような癖を感じるのです。あとは10kHzに深いディップがあって、その上がグワっと持ち上がってるあたりにハイ上がり感を感じていたんでしょう。100〜130Hzあたりの低域のピークや左右の乱れはルームアコースティックが大きく関係しているので、他の環境ではもうちょっと違う結果になると思います。というか、この測定自体、毎回微妙に違ってくるので、あくまで参考程度に見てください。

とにかく、この1kHzの深いディップは深刻。声の処理をするときなんかには確実に影響出てしまうので、このままでは仕事には使えないなと(汗)。前述の通り104-BTには補正用のEQなどはついてないので、置き方などのセッティングでどうにかするしかないけど、まぁSonarworks Reference 4でフラットに補正しちゃえばいいかと思い、ここ10ヶ月近くはそうやって使ってきました(苦笑)。けど、音のプロとしてこの辺はもうちょっと何とかしなきゃなと思い始めたところで、輸入元のヒビノから104-Y3用のケーブルが発売されました。

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104シリーズはマスターとなる右チャンネルのスピーカーにアンプや操作子を搭載していて(ちなみに僕は配線の関係でマスターを左に置き、インプットを左右逆に接続して使ってます)、左チャンネルへは付属のスピーカーケーブルで渡り配線する仕様。その渡り線のリケーブルというのがこの商品。商品説明によると「より明瞭な定位と空間表現、力強いパワー感」とあるんだけど、渡り線でホントに音が変わるのかな?と疑問を持ちつつも、出音に不満を持ってた僕は、とりあえずこれを試してみようと長年お世話になってる宮地楽器(RPM)さんに取り寄せてもらいました。

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左の透明シースのものがリケーブルで、右の赤黒が付属のもの。もう明らかに太いですよね(笑)。104シリーズで使える最大限の太さにしたらしい。

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シースにはJBL PROFESSIONALお墨付きの印と方向性の表記が。ケーブルには方向性があって、接続する向きによって音が変わるそうなので(諸説あり。個人的には実感たことはない)、基本的にはこの矢印の通りにマスターからスレーブに流れるように配線します。その際、「+」と「-」を間違って配線しないように「JBLの方が赤、矢印が黒」など、自分で決めて間違えないようにする必要がありますね。

とりあえずケーブルを交換して音を出してみました。一聴して感じたのは「ケーブルも太いけど、音も太いな!」ということ(笑)。リケーブル前の違和感は完全に払拭できなかったものの、明らかに聴きやすくなりましたね。

◉スピーカー配置の重要性

ここで重い腰を上げて、スピーカー自体の置き方などのセッティングを詰める決意をすることに(笑)。もちろん導入直後にも何回か置く位置を変えたりしながら試聴をして位置を決めたのですが、その時は広がり感を重視してスピーカーの間隔を106cmにしたんですね。それが拙著「映像制作のための自宅で整音テクニック」の表紙にもなってる状態です。この本では整音を含めたMAのワークフローの紹介に加え、自宅を簡易スタジオ化するためのノウハウなんかも多少紹介してますので、この記事を読んで気になった方は是非!(笑)。

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まず手始めに、スピーカーではなくディスプレイの位置を再考。ディスプレイがスピーカーより前にある状態は良くないので元々少し奥まった配置にしてましたが、さらにもうちょっとだけ後ろに。加えて、ディスプレイの角度を調整して、いままでよりもさらに斜め上を向くようにしました。ディスプレイに反射する音の影響は結構大きいので、これだけでもセンター位置の聴こえ方がより自然な感じなりますね

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ディスプレイを真横から見たところ。
スピーカーよりもだいぶ後ろに配置し、仰角をつけている。

次にスピーカー自体の位置。スピーカースタンド天板の上でざっくりと前後左右に動かして変化を探りました。その結果、スピーカーの間隔を狭めると、凹んで聴こえてた1kHzあたりが明らかに改善することが判明!!これには思わずガッツポーズしたくなりましたね(笑)。

改善前は106cm(ユニット中心からの距離)でしたが、最終的にそれを87.5cmに狭めました。実は86cmや88cmなども試したんですが、僕の環境だと狭すぎれば中低域がピーキーになるし、ちょっとでも離すと1kHzが引っ込んじゃう。その結果の87.5cmです。どうやらこのスピーカーは85〜90cmくらいの間で部屋の環境に合わせて調整するのが良いようです。ホント、ミリ単位で動かしても音変わるんですよ。いやぁ、こんなにシビアなスピーカーだとは思いませんでしたね。リスニング時のスイートスポットは広い方ですが、それは自分がスピーカーに対し平行に動いた場合。前後に動くと聴こえ方が大きく変化するので注意してください。スイートスポットを探る場合は、2個のスピーカーと自分が頂点となる正三角形を描くような位置に陣取り、そこから頭を前後に動かしてみてください。スピーカーに近すぎるとセンター定位の歌なんかの存在感が希薄になり、遠すぎると全体の音像がセンターに寄りつつ奥に引っ込んでいくような感じになります。その中間のどこかに、歌などの存在感がハッキリするポイントがあるハズです。そこがスイートスポットなので、シビアにモニタリングするときは毎回そこで聴くようにします。

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スピーカーの内振り角度ですが、これは導入当初からいろいろ試していた経験から、このスピーカーは浅めが良いというのが分かってたので、今回もほんの少し角度を付ける程度にしました。一般的なスピーカーよりも浅めですね。余談ですが、一般的な箱型のスピーカーなら角度付ける際の目安が、目視にしろメジャーでの計測にしろやりやすいんですが、こういう丸っこいのはなかなかに大変ですね(汗)。

そんなこんなで最終的にはこうなりました。Sonarworksによる測定結果も載せておきます。

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これを見ても、気になってた1kHzの不自然な凹みがある程度改善されてるのが分かると思います。その少し上の2〜3kHzあたりも少し平らになりました。

さて、この状態で渡り配線のリケーブルをしてみた結果がコチラ。

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一聴して太さを感じたのは、600Hzあたりが少し持ち上がってるからでしょう。1kHzはまた若干凹みましたが、その上の2kHz周辺がほんの少しだけ起伏が付いた感じ。あとは6〜8kHzあたりの山のカタチにも明らかな変化があります。実際の出音を聴いても、メーカーの商品説明にあった「より明瞭な定位と空間表現、力強いパワー感」というのは嘘じゃないなと実感できますね(笑)。3,000円ほどなので、104ユーザーは買って損はないと思いますよ♪

あとは低域の暴れをなんとかしたいところですが、これはルームアコースティックに手を入れないといけないので、追々(汗)。ちなみに、僕の自宅スタジオは都合により左右非対称なセッティングなのでこのような乱れが出ちゃうんですよね。右のスピーカーは側面の壁に近く、左のスピーカーは壁から遠い状態。引っ越す前の部屋では左右対称にしてたので、LRの特性はかなり揃ってました(別スピーカーでの測定)。

では最後に、改めて測定結果を「106cm間隔(付属ケーブル)」「87.5cm間隔(付属ケーブル)」「87.5cm間隔(リケーブル)」の順に掲載しておきます。

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◉モニタリング音量

これに関しては、小音量の方が好きかな。そこそこ大音量にしても印象は変わらないし、音割れすることもないんですが、前述の通り僕の環境では低域が暴れるので(汗)。リケーブルで音が太くなったぶん、音量を抑えても低域〜中低域のしっかり感が感じられるようになったので、小音量でのバランスチェックに力を発揮してくれそうです!

これでかなり信頼できる鳴りになりましたね!!当初感じていたハイ上がりな感じも薄れ、逆に中低域がしっかりした安定感のある音になりました。激変と言ってもいいくらいの変化です。スピーカーの間隔を狭めたので、当然サウンドステージも狭くなりましたが、出音のバランスは確実に良くなりました。実際、Sonarworksで補正もかけてみましたが、補正をかけない方がこのスピーカーのキャラが活きてる感じがするし、補正しなくても十分に使えそうだなと思ってます♪ もちろん補正した方が満遍なく鳴るんですが、なんかチート臭さが鼻につくように思えて……(苦笑)。いやはや、セッティングの重要性を改めて感じました。

◉その他の注意点

特徴のところで述べた通り、複数の入力をミックスして出力できますが、各入力のヒスノイズもミックスされてしまうので、INPUT SELECTを「MIX」(電源投入時のデフォルト設定)にしておくと、ちょっとヒスノイズが目立ちますね。なので、僕は毎回電源投入後にメイン入力としてる「RCA」にして使ってます。けど、一度電源落とすとリセットされてしまうので、レジューム機能が欲しいところですね。

あと、このスピーカーは地震が起こると回ります(笑)。2月に震度5弱を記録する地震がありましたが、翌日に作業するときになんか音に違和感を感じ、よくよく見たら、左右のスピーカーがそれぞれ正面を向くくらいまで回っちゃってました(苦笑)。どちらも背面にケーブルがあるので、それに引っ張られる方向(つまり外側)に少しだけ回転しちゃった感じですね。底面が円形なので、これは物理現象として仕方がないところ。このスピーカー専用のスタンドみたいなの作ったら、安定性とかセッティングのしやすさとかが劇的に改善するだろうなぁ。JBLでもヒビノでもいいから作ってくれないかしら?(笑)

そうそう、複数あるライン入力ですが、僕は現在、RCA入力に1,000円/1mくらいの安めのケーブルを使ってます。最初はTRS入力でベルデン 8412を使ってたんですが、ふと思い立って数百円のRCAケーブル(よくある赤白の)にしてみたところ、なんだかそっちの方がバランス良くて(笑)。8412は中高域がややピーキーな感じだったんだけど、そこがフラットになった感じ。けど、ちょっと高域が寂しいかなと思って家に転がってたオーディオテクニカのRCAにしたらちょうどよかった(笑)。でも、渡り配線もリケーブルしたので、ラインケーブルも再考した方がいいかもな……。

注意点ではないですが、モデル名末尾にある「Y3」が示す通り、ヒビノ取扱のものは独自の3年保証となってます。実は2020年末に片側ビビリのため修理に出して、年明けに新品交換されて帰ってきたということがあったんですよ。今回は1年も経ってないし、初期不良対応という感じでしたが、機材にトラブルは付き物なので、保証期間が長いというのは安心感ありますよね。

◉2021.5.20 追記

スタジオレイアウト変更に伴い、この104の設置も再考。左右スピーカー間隔を1mに変更するとともに、本体ボリュームの値を変更。これがかなり出音に影響がありました!いままで、うちのモニターシステムの関係で、104本体のボリュームはフルテン(最大値)で使ってました。けど、試みにこれを1時位置にしてみたら、音が変わったのです。

具体的には、中高域〜高域の鳴りに余裕が出て奥行き感が増しました。例えば、フルテンの時はメインVo.とBGV(バックグラウンドボーカル)が同列に並んでるように聞こえてたものが、BGVがしっかりと奥に行くようになりましたね。立体感が増し、明らかに心地よい方向に変わったので、104で音楽を聴くのが楽しくなりました♪

どうやら、フルテンにするとアンプ部が頭打ちになって若干のドライブ感が加わるようです。マイクプリなんかではこういったアナログアンプ部でのドライブは色付けやピーク取りに応用されたりしますが、スピーカーでそれをされると困ります(汗)。モニタースピーカーは正しい音を鳴らすのが仕事なので!

問題は、当然ながら音量レベルが下がるので、大きな音でのモニターができなくなるということ。僕は3セットのスピーカーを切り替えて使ってるんですが、その際に音量差が出ないように調整します。けど、メインモニターの音量に合わせるためには104をフルテンにしなければならない。まぁ大事なのは音の正確さなので、音量と音質のバランスを考えて最終的には2時位置にしました。これなら小音量〜ほどほどの音量ならば整合性が保てます。けど、この状態で大音量にすると104に出力してるオーディオI/Fの出力チャンネルがクリップしてしまうので、これを解消するためにはアンプ内蔵のモニターコントローラーが必要だな……。

もし104だけを使っていてオーディオI/Fから直で繋いでいる人は、オーディオI/Fの出力をユニティにしておき、104本体のボリュームで音量を決めるのが良いでしょう。その使い方ならまずフルテンの出番はないので(笑)。おそらく10時〜12時くらいの位置で事足りるはずです。

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僕はRCA接続で使ってますが、
オーディオI/Fの出力はちゃんと-10dBVに設定してます。
これを+4dBuで出力しちゃうと余計に歪みの原因になるので、
レベルのマッチングはしっかりと取りましょう。

ちなみに、今回は音響補正ツールでの補正は行わないことにしました。測定して適用してみたんですが、なぜだかちょっと声がぼやけるんですよ。補正を外した方がVo.やBassなんかがセンターにバシッと決まって見えやすい。もちろん、周波数バランス的には本文に掲載したグラフのように多少の癖はあるんですが、補正なしの方が使いやすいと判断したので、しばらくはこれで行きます!

◉まとめ

・このスピーカーのセッティングはやや狭め(85〜90cmくらい)に!
・内振り角度は浅めに!
・ヒスノイズが気になる時はINPUT SELECTを「MIX」以外に!
・ヒビノ謹製のリケーブルは使える!
・ボリュームはフルテンで使うな!※追記
・これで実売約2.2万円はお値打ち!

あくまで僕の環境での話なので参考程度に考えて欲しいですが、サイズからしても間隔広めの設置には無理があると思うので、104をお使いの方は自分の環境に合った距離を根気よく探ることをお勧めします!上手くセッティングできると、仕事にもバリバリ使えるスピーカーになりますよ。そして、以前ご紹介したヘッドフォン AKG K371-Y3なんかと併用すると、Web用のMAなんかはこれらだけでも出来ちゃいそうですね♪

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