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【モノの図書館事例紹介】Library of Things Ltd.
こんにちは。モノの図書館研究所の佐藤です。
今回はこれまでご紹介した公共型のLoT(公共団体、図書館が運営するモノの図書館)ではなく、拡大型に属するLoTのご紹介です。イギリスを中心にEUで広がりつつあるLoTの1つ「Library of Things Ltd.」を紹介します。
Library of Things Ltd.
”株式会社”が運営するLoT
Library of Things Ltd社が他のLoTと最も異なる点としては、株主から出資を受けて営利活動を行いながら実施している点が挙げられます。多くのLoTは、NPO団体や地域団体、公共機関が運営をしており、その目的は非営利です。(一部、アイスランドのLoTについては、国として非営利のステータスが存在しないため、営利企業として登録している例もありますが)
そのような中、Library of Things Ltd社は営利活動を行い事業を拡大しながら社会課題にも貢献している点は秀逸な形態であると言えます。2024年時点で、イギリス国内で19箇所の拠点を持っています。
セルフ貸出モジュールを様々な場所に配置。ショッピングセンター、公民館、もちろん図書館にも
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Library of Things Ltd社が行うLoTの特徴として、独自のセルフ貸出モジュールを持っている点が挙げられます。セルフサービスで借り入れ・返却が可能な物理的な保管庫を持ち、これらを図書館を始め、ショッピングセンター・公民館などの市民が集う場所に設置している点が特徴的です。ユーザーはWEBサイトから借り入れの申込みを行い、決済を行います。借り入れ・返却はセルフ貸出モジュールで行う仕組みになっています。
道具メーカーと協業
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また、Library of Things Ltd社はヨーロッパの大手企業と連携し事業を行っています。日本でも有名なケルヒャー社やボッシュ社と言った企業から製品・メンテナンスの提供を受け、ユーザーに貸出を行っています。企業には、ユーザーからのフィードバックを返します。企業からすると一つのマーケティング調査の一貫でもあるのかもしれません。
社会課題の解決を目的とした収益レンタル事業
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Library of Things Ltd社のLoTで提供されるアイテムは、基本的に全てが有料です。また、その価格は他のLoTが行っている価格帯と大きく異なります。公共型やコミュニティ型のLoTでは、無料ないしかなり安価な価格でアイテムの提供が行われますが、Library of Things Ltd社のLoTは、一般的な道具のレンタルの価格に近いものと言えます。(例えば、高圧洗浄機 17.5ポンド(日本円で約3,400円)/日、電動ドリル 6ポンド(日本円で約1,100円)/日、プロジェクター5.5ポンド(日本円で約1,100円)/日)※2025.1.8時点)
参考
インパクトレポートを発行
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Library of Things Ltd社は毎年インパクトレポートを発行しています。道具のレンタルを通じて、どれだけ廃棄物の削減に貢献できたか、CO2排出を削減できたか、ゴミの埋め立ての量を減らすことができたか、をまとめています。また、Library of Things Ltd社が行うレンタルの意味には、ユーザーのコストメリット(どれだけ節約することができたか)が含まれており、その結果についてもまとめています。2022-2023年に110tのゴミの埋め立てを防止、228tのCO2の削減、640,000ポンドの節約したと報告しています。
https://libraryofthings-files.s3.eu-west-2.amazonaws.com/Impact+Report+2023.pdf
このように、収益事業として行われるレンタルサービスが社会問題への貢献に繋げられるという側面もあります。これも一つのサーキュラーエコノミーの形なのかもしれません。今回は、Library of Things Ltd社の紹介でした。
イギリスでのレンタルサービスの参考
ピアツーピアーレンタルサービス「FatLlama」
機器レンタル会社「HSS」
St.Thomas RENT-ALL
https://www.stthomasrentall.com/electric-tools