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モノの図書館研究所、開設します
初めまして
モノの図書館研究所を開設します、佐藤翔一と申します。普段はMaaSコンサルティング・マーケティングプランニング・プロジェクトマネジメントサービスを提供する小さな個人事務所で働いています。2023年に慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科に入学し、シェアリングエコノミーの仕組みである「モノの図書館」に出会い、「モノの図書館」の研究を始めました。現在修士論文作成の真っ最中ではあるものの、修了後もこの領域を研究していきたいと思い、研究所を立ち上げることに致しました。と言っても、誰かに頼まれて行う訳でもなく(笑)、私自身がこの仕組みに強い魅力を感じているため、ある意味自分用に研究していると言う所があります。私自身が、使いたい、ほしい仕組みだと思っているからです。
※「モノの図書館」については、改めて別の記事でご紹介させてください。
きっかけは、近所のゴミ処理施設で働く友人
私は新卒来マーケティングに関わる仕事を続けてきました。企業の商品やサービスを販売する仕事です。どうすれば売れるか、どうすれば買ってもらえるかを徹底的にプランニングし、実行し、結果を検証し、新たなプランに活かすという活動を続けていました。この仕事そのものは、私自身をとても成長させてくれました。経済は、労働と対価の交換で成り立っています。その経済を循環させる手助けとして、私自信の仕事には誇りを持っています。
しかし、転居によって興味の方向性が変わる出来事がありました。
転居先の近所に外国人でゴミ処理施設で働く人と出会いです。
彼はとても誠実でキレイ好きでユーモアのある人で、いつも自宅だけでなく近所の家の前まで掃き掃除をし、通学路の子どもの見守りをし、BBQを開催して近所の人を呼んでくれるようなとても温かい人です。彼の家の庭には、沢山の植栽が植えられ、手入れされていて、家自体がとても美しく保たれています。庭で子どもたちがプールに入り、(親も一緒になって)走り回って遊んでいます。私は彼のような人間性と暮らしは良いなと思っていました。
ある時、「佐藤さん、これいりますか?」と彼が私の家を訪ねてきました。
彼の手元には未開封のゴム手袋。職場(ゴミ処理場)に捨てられてきたとのことです。「いいの?新品みたいだけど」と聞くと、「もちろん。こんなのたくさんあるよ。毎日使えるゴミが沢山捨てられてくるんだ」と。
それを聞いて、なんともったいない、と感じていました。
趣味をきっかけに、構造上の問題に気づく
私は庭仕事とバイクいじりが好きで、庭で作業をしていることが多いのですが、これらの趣味をしていると、何かの作業のための道具が必要になることがよくあります。例えば、庭仕事で言えば、床と壁の高圧洗浄。年に2回行っています。バイクいじりで言えば、ジャッキアップ(バイクを持ち上げて作業するための道具)。タイヤ周りをいじる時に使います。年に1回くらい。
これらの作業が必要になった時に、買うか借りるかまず悩みました。なぜなら年に1-2回しか使わないからです。年に1-2回しか使わないことがわかっているモノを買うか?場所も取るしお金もかかるし。
そこで一旦調べてみました。
新品で買う場合、中古で買う場合、借りる場合。
そこでわかったことは、新品で購入することが、如何に経済的に得か、ということです。新品で購入する場合、送料無料で1年間保証がつきます。加えて、他の商品を購入するクーポンも付。中古品はどうでしょうか。送料は有料(しかも、重たいものだから送料も高い!)、もちろん保証などはなく、値段は(送料を含めると)新品とほぼ変わらない。借りる場合も、1週間借りる場合、購入するのと対して変わらない、という結果でした。
みなさん、このような状況でどの手段を選ぶでしょうか。
私は新品を選びました。もちろん、「環境負荷を最優先に!」で中古品やレンタルを選ぶ人もいるでしょう。「買っても置く場所がないから」という理由でレンタルを選ぶ人もいるでしょう。しかし、来年も使うことがわかっている、置く場所もあって、値段が変わらないとしたら、多くの人は新品を選ぶのではないでしょうか。
私は、自分がしてきた仕事を思い出しました。
新品の商品を買ってもらうために、様々な販売促進プランを検討してきたことを。
ゴミが増える原因は、新品がお得だから
人類の歴史から考えても、人類は1次産業、2次産業、3次産業と発展し、モノを作って売る、役務を提供してお金を得るという基本的な原理原則で経済を拡大させてきました。この仕組みは、何かを生み出すことを前提に置かれています。何かを生み出して、それを売る。売られたものは、ゴミになるか、2次流通市場に流れる。2次流通市場は海外に派生し、最終的には途上国に届く。途上国に届いたモノは、新たなモノが届いたらゴミになる。新しいものを生み出したら、必ず最後にゴミになっていくという現状があるのです。(現代は処理技術が進歩し、再利用が可能な方法も検討されていますが、最終処分場不足や海洋ゴミ、熱処理による温室効果ガスの発生、PFASなどの問題は深刻です)
必要な人に、必要な時だけ使える方が良い
借りるには、他にも選択肢があります。それは友人や、近所の住民から借りるという手段です。私も今でこそ、近所の住民に頼り相談してみる関係ができてはきましたが、それでも限られた範囲です。重たいものの場合、遠方の友人には頼めないですし、ご近所さんも数名という範囲です。
そんな時、ヨーロッパには「モノの図書館」というものがあるということを知りました。よく調べてみると、「モノの図書館」は普段あまり使わないものをシェアし、使い方のワークショップを通じて地域内にコミュニティを生成していることを知りました。
この仕組みは、必要な人に、必要な時だけモノを提供し、ゴミを減らしながら地域のつながりを生み出すことができると感じました。
持続可能な社会の実現に貢献する仕組みである
この仕組みは、経済性の観点からは価値が高いとは言えません。(私は学部時代の専攻は経済学・経営学でした)
しかし、現代の経済システムが、このまま未来永劫続けていけるものでもないと思っています。
一方で、この仕組みの導入にはほとんどお金がかからない、というメリットもあります。私は、この仕組みを研究し、広く様々な場所で導入されていくことを望んでいます。
導入してみたいという自治体の方、地域団体の方、NPOの方、企業の方、気軽に連絡をください。一緒にその場所に合わせて作っていけたら幸甚です。
モノの図書館研究所
佐藤翔一