見出し画像

NHK-FM「ヤング・ジョッキー」BBCイン・コンサート スティーヴ・ヒレッジ(1978年3月4日放送)

NHK-FM「ヤング・ジョッキー」BBCイン・コンサート スティーヴ・ヒレッジ(1977年12月4日、ロンドン「パリス・シアター」での収録)
Steve Hillage Concert
BBC "IN CONCERT", Recorded live at the Paris Theatre, London, UK, December 4th, 1976.

放送曲目:
1. The Salmon Song
2. Hurdy Gurdy Glissando

未放送曲目:
3. Meditation Of The Dragon
4. It's All Too Much
-----
5. Not Fade Away (Glid Forever)

演奏者:
Steve Hillage: Guitar, Vocals
Miquette Giraudy: Synthesiser, Vocals
Clive Bunker: Drums
Colin Bass: Bass, Vocals
Christian Boulé: Rhythm Guitar, Glissando Guitar
Phil Hodge:  Keyboards
Basil Brooks: Synthesiser, Sequencer, Flute


 イギリスBBCが制作したライヴ録音は、NHK-FMでよく放送されていますが、わたしのラジオ聴取歴では、渋谷陽一さんがDJ(パーソナリティ)を務めていた番組「ヤング・ジョッキー」での放送が最初です。そもそも、1976年4月から1980年5月まで断続的につけていたラジオ聴取ノートに「ヤング・ジョッキー」が最初に登場するのも、クイーン Queen の「BBCイン・コンサート」を放送した1976年10月10日でした。これが同番組を聞き始めるきっかけかどうかは忘れてしまいましたが、まだライヴアルバムがリリースされていないバンドのライヴ演奏を聞くことは鮮烈な体験でした。

 「ヤング・ジョッキー」を聞いていくうちに、気になるミュージシャン、バンドがいくつか、と言うよりも、いくつも出てくることになりました。スティーヴ・ヒレッジ Steve Hillage もそんな風に「気に入った」ひとりです。ラジオ聴取ノートをたぐると、クイーン「BBCイン・コンサート」放送の翌週、1976年10月17日に、ソロ第2作 "L"(1976年9月発売)からの "Lunar Musick Suite" を聞いています。1977年5月28日には、やはり "L" からビートルズのカバー "It's All Too Much" がかかりましたが、エアチェックに失敗し、「次にかかったらエアチェックする曲」の印がついています。この時点では、ゴング Gong については知らなかったように思います。"L" のプロデューサーが、同じ時期に興味を持ち始めたトッド・ラングレン Todd Rundgren だったことくらいしか背景は知らなかったはずですが、1977年夏に、渋谷陽一さんが編集長を務める雑誌「ロッキング・オン」を読み始め、竹場元彦さんの文章で、ゴング周辺を知ることになります。そんなかんじで、1978年3月4日の放送を迎えました。

 ところで、1978年3月4日の前にも、「ヤング・ジョッキー」で「BBCイン・コンサート」特集が組まれており、この回は「BBCイン・コンサート」5周年記念プログラムを元にしているとのことでした(1978年1月8日放送)。レコード情報サイト「Discogs」で、BBCの番組配布用ディスクを検索してみると、1977年10月に、"IN CONCERT 156/157 5TH ANNIVERSARY SPECIAL" がリリースされており、曲目も一部ですが一致します。この5周年記念番組が1977年秋に放送されたとすると、「イン・コンサート」シリーズは1972年に始まったものということになりそうです。

 「ヤング・ジョッキー」で放送されたスティーヴ・ヒレッジのライヴ録音は、ソロ第1作 "FISH RISING"(1975年4月発売)からの "The Salmon Song"、"L" からの "Hurdy Gurdy Glissando" の2曲。どちらもこの時点では初めて聞く曲でしたが、躍動感のあるドライヴする演奏、スリリングな展開、奔放なエレクトリックギターと歌に感激しました。なお、この日は他にも紹介されたバンドがありましたが、記録していないため、不明です。

 放送の3か月後、大阪・梅田「阪急32番街」(1977年8月オープン)にあった巨大レコード店「Daiga」の輸入盤コーナーで、"L" の安いアメリカ盤カットアウトを見つけて購入しました。オリジナル盤がどうこうということよりも、安く手に入れるほうが重要だった…というか今でもそうですが、製造ミスで、盤が一部薄くなっていることには閉口しました。でも、そのことよりも、"Hurdy Gurdy Glissando" のエンディングが、ライヴ録音で聞いたものとは異なり、コーダがカットされ、途中でテープスピードをどんどん早めて、きゅるきゅると終わることに驚き、がっかりしました。プロデューサーであるトッド・ラングレンの意向なのでしょうか。そう言えば、"L" では、ライヴ録音のバンドではなく、トッド・ラングレンのバンド、ユートピアのメンバーが演奏を務めていますが、ドラムがずいぶんもたついているように感じたものでした。

 1986年9月にいわゆる「BBCセッション」「ピール・セッション」の製品化(Strange Fruit Records)がスタートすると、1991年には「イン・コンサート」の製品化(Windsong International)が始まります。エアチェックはしていたものの、あまりよい音とは言えなかったので、スティーヴ・ヒレッジ編を待ち望んでいましたが、1992年8月に発売されました。"BBC RADIO 1 LIVE IN CONCERT" です。小躍りして購入しましたが、この盤は、1977年12月4日収録の(NHK-FMでも放送された)2曲と1979年4月28日収録の9曲を併録したもので、しかも、1977年録音を1曲目と6曲目、1979年録音を2~5曲目と7~11曲目に収録するという妙な編集になっていました。

Steve Hillage "BBC RADIO 1 LIVE IN CONCERT"

 聞いてみると、さらに驚いたことに、"L" のスタジオ録音版になかった "Hurdy Gurdy Glissando" のコーダがまたもや途中でカットされ、1979年録音の "Unidentified (Flying Being)" に、1979年録音の "Electrick Gypsies" のエンディングが1977年録音の "The Salmon Song" に、メドレーのように繋げられているではないか。1977年と1979年では、バンドメンバーも変わっており、演奏スタイルやアレンジも異なっています。絶句しました。
 この二つの「BBCイン・コンサート」は、2016年10月発売の集大成ボックスセット "SEARCHING FOR THE SPARK" に完全版が収録されました。22枚のCDから成る高価なセットは入手することに躊躇しましたが、Windsong 盤の妙な編集に対する雪辱の気持ちが背中(の一部)を押したことは間違いありません。

Steve Hillage "BBC RADIO 1 IN CONCERT 1976 ("SEARCHING FOR THE SPARK" Disc 12)
Steve Hillage "BBC RADIO 1 IN CONCERT 1979 ("SEARCHING FOR THE SPARK" Disc 13)

  しかしながら。「残念盤」として放出対象にしてきた Windsong 盤ですが、"Hurdy Gurdy Glissando" のコーダ部分については誤りであったことが、2024年3月になって、ふとしたことから判明しました。きっかけは、定額制配信に "Uk Fm Broadcast Paris Theatre Lo…" なるアルバムがアップされていたことです。2021年8月10日にアップされたとあるこのアルバムは、Windsong 盤と同内容のようでした。iPad miniではタイトルが途中までしか表示されないのですが、"Uk Fm Broadcast Paris Theatre London 4th December 1976" のようです。この時点で、既にタイトルに偽りありとなっています。カバー写真にタイトルはなく、ギターの写真に「Steve Hillage」とあるのみ。あやしい、と思いながら、かけてみました。そうしたら… "Hurdy Gurdy Glissando" が完走したのです。冷や汗が出ました。もしかしたら、手持ちの盤がたまたまエラー盤だったのではないか。放出対象コーナーから救出し、手持ちの盤を聞いてみました。完走しました。どうも、1992年当時使っていたCDプレイヤーと盤の相性が悪く「音飛び」していただけのようでした。杜撰な編集と非難してきましたが、とんだ濡れ衣、言いがかりでした。別の意味でまた絶句することになってしまいました。30年間非難し続けて、申し訳なかったです。

Steve Hillage "Uk Fm Broadcast Paris Theatre London 4th December 1976"

 余談その一。スティーヴ・ヒレッジの「イン・コンサート」には、1978年12月30日、NHK-FMの年末特番「ロックスペシャル~未発表ライヴより」で放送された演奏もあります。1977年11月3日にロンドン「レインボウシアター」で収録されたものです。この録音は何故かボックスセット "SEARCHING FOR THE SPARK" には収録されませんでした。大好きな "Motivation" のライヴ版が(ゆるい演奏ながら)聞けたので、残念に思っていたのですが、2014年に "RAINBOW 1977" というタイトルでCDがリリースされていました。

Steve Hillage "RAINBOW 1977"

 余談その二。2009年9月30日に、NHK-FM「ライブビート」で、1979年4月28日収録の演奏が放送されました。このとき驚いたのは、"BBC RADIO 1 LIVE IN CONCERT" と同様に、"Electrick Gypsies" の次が "The Salmon Song" だったこと。1977年録音ではなかったのか。改めて「Discogs」で確認すると、この日の番組配布用レコード("IN CONCERT 197", BBC Transcription Services CN 3313/S)にも "The Salmon Song" が入っていた。「ライブビート」と番組配布用レコードは曲目も同じ。BBCでの放送時に1977年録音のものを混ぜて繋げたのだろうか。聞き直してみたら…ここでの "Electrick Gypsies" と "The Salmon Song" は繋がっていなかった。"The Salmon Song" も1977年録音のものとはちがっていた(何故ボックスセット版にはないのだろう)。それに、"Electrick Gypsies" の演奏がちがっているように聞こえる。編集によるものだろうか。
 余談の余談になりますが、1992年4月1日以降のNHKのラジオ番組が検索できる「NHKクロニクル」ページ https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/ で「スティーヴ・ヒレッジ」で検索しても、ヒットするのは、「ライブビート」一本きりです。寂しい。それ以前なら、「クロスオーバーイレブン」で、"Palm Trees (Love Guitar)"、"Open"、"Alone" といったキャッチーな曲のほか、20分あるアンビエント作品 "Four Ever Rainbow"、日本未発売シングルB面曲 "Before The World Was Made" などもかかっていたのですが。


いいなと思ったら応援しよう!