サイエンスアゴラ2022「だれのための、なんのためのジビエ?」実施報告
私達、もののみLab.は、サイエンスアゴラ2022に参加しました。
(YouTubeのアーカイブ:https://www.youtube.com/watch?v=tgK_Q8pcZG0)
サイエンスアゴラとは、国立研究開発法人 科学技術振興機構が主催する、さまざまな立場の人たちが参加して科学分野について対話するオープンフォーラムイベントです。
https://www.jst.go.jp/sis/scienceagora/about.html
今年のサイエンスアゴラは、10月20日(木)~22日(土)はオンライン、11月4日(金)~6日(日)は実地のハイブリッド開催でした。
私達は今回、10月22日(土)17:30~19:00という枠で、オンラインで参加しました。
前半の1時間は、事前募集のZoom参加者だけでなく、YouTubeからも配信を見ることができるオープンな時間で、後半の30分は、より深く対話を深めることができる、アーカイブの残らない時間でした。
今回、私達が選んだテーマは「ジビエ」。
近年ブームとなっているジビエを通して、獣害対策について様々なステイクホルダーの意見を聞いてもらい、参加者の皆さんが「消費者」という立場で何ができるのか?を考えてもらう場にしようと考えました。
オープニングから、もののみLab.のキャラクター「ミカタくん」と一緒にジビエについてお話ししていきました。
最初の20分は知識の共有をメインにお話しました。ジビエの食文化はフランス由来であること、野生動物の増加により近年獣害被害対策の一環としてジビエが注目されていること、農業や林業などの獣害被害、ジビエ利用の実際についてなどのお話をしつつ、Zoomで参加されている方には、チャット機能を利用してクイズに答えてもらったりしながら進行していきました。
途中、ゲストでお迎えした北海道の猟師、能登咲子さんに、猟師のお仕事の内容や動物との向き合い方、獣害被害の現状についてなどを取材したインタビューVTRをご覧いただきました。
さらに、動物園で「と体給餌」という、皮や骨がついたままのお肉を与える給餌方法を、駆除されてしまった野生動物を活用して行っている団体、ワイルドミートズーの伴和幸さんに、「と体給餌」とは何か、と体給餌の問題点、と体給餌を行うことの意味についてなどを伺ったインタビューVTRもご覧いただきました。
その後、インタビューを受けてくださった能登さん、伴さんそして、ワイルドミートズー代表で日本大学教授の細谷先生と中継を繋ぎ、質疑応答の時間を設けました。
以下、出た質問とその時にお三方にお答えいた回答をいくつかご紹介します。
・と体給餌は、どんな動物も喜んで食べてくれているの?
【伴さん】ほとんどの動物は食べてくれるが、動物園で育った動物は、慣れないと食べられない。動物園は域外保全といって、飼育環境外で動物を保全しておき、いつか野生に戻すこともある。野性に近い食事を動物園で再現する、皮や骨がついた餌も臆せず食べられるようになることが大切。
・逆に減ってしまった動物はいるの?
【細谷先生】直接鹿などに食べられることはないが、鹿が他の生き物の餌や生息地となる場所を食べてしまって絶滅が危惧されている生き物もいる。例えば、対馬のツシマウラボシシジミという蝶は、鹿がお花畑の植物を食べつくしてしまったことで、卵を産み付ける植物がなくなってしまった。
・私達と動物たちが同じ地球でなかよく暮らしていくにはどうしたらいいと思う?
【能登さん】答えを探し続けている。答えを見つけるために活動をしている。
【伴さん】明確な答えがないと思う。誰もが野生動物にかかわらない訳にいかなくなっていて、誰にとっても身近な問題である。命を奪うことは心が痛いことではあるけれども、私達も命の循環の中にいることを忘れてはならない。
【細谷先生】人間も生態系の一部。だからこそ、生き物同士の衝突があるのはしょうがない。なるべく衝突を避けるために、不必要な衝突をしないために住む場所を分けていくことが大事になってくると思う。
後半の30分は、事前申し込みされた方のみのクローズドな時間でした。
ここでは、前半で回答しきれなかった質問、例えば、精肉とジビエの違いについてや、と体給餌を野生動物にするのか?、専業猟師について、捕獲量について、変えたい文化について等の質問についてお答えしました。
(今回出た質問に関しては、後日Q&A集を改めて掲載します。)
終わってみると、あっという間の1時間半でした。
終了後、参加者の皆さんにアンケートのご協力をいただき、そちらの回答を集計したものをご紹介します。
15名の方にアンケートにご協力いただきました。
ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。
年齢構成は10代以下から60代以上まで、そして性別が半々とバランスの良い構成となりました。
専門分野に関しては、食品関係や農業関係などが多いという予想に反し、その他文系理系を選んだ人が半分という結果となりました。
また、初めて知ることがたくさんあったという回答が約半分を占め、今回、特に、と体給餌やジビエ、獣害被害や狩猟について等、様々な事柄について知ってもらう機会を提供できたというのが、アンケートからもわかりました。
印象に残った内容については、と体給餌についての他、獣害、猟師さんの心の葛藤について、精肉についてなど様々なものが出ました。
今回、ジビエを通して獣害被害を参加者の皆さんに消費者の目線から考えてもらうことを目標に、今回のイベントを企画しました。実際に参加してくださった皆さんがこの問題に真摯に向き合って考えてくださり、寄せられた質問の多さと質の高さにこちらが驚かされました。ジビエや獣害被害の関心の高さがうかがえるものとなりました。
今後も、もののみLab.として、動物たちの問題を身近なものにしてもらうため活動を続けていきたいと考えています。
執筆;阿多研究員