医療は普通の職業なのか?
僕は経営コンサルがすごく嫌いなのだが、その時に言われることがある。
「普通の商売なら、、、」ということだ。僕は医療を特別な職業と考えている。
なぜなら圧倒的に自己犠牲が必要な職業だからだ。
ある日、Xでこんなポストを見た。誰かわかると問題があるので少し細部はボカすが、
「昭和や平成じゃねーんだから、家に付いてるタイプの病院だからって深夜にピンポンして痛いから診てくれじゃねーよ」みたいなことを書かれていた。
多分歯科医師だったと思うのだが、皆さんはこれをみてどう思うだろうか?
実は僕は親が歯科医師でこういうタイプの医院だったので、こういうことはたまにあった。父は一度だって断ったことなかったし、僕もそれが普通だと思っていた。困っているひとがいたら手を差し伸べるのに理由はいらない。むしろ手を差し伸べないのに理由がいるだろう。
僕は今、そういうタイプの医院ではなくなったが、もしそういうタイプの医院だったら迷わず診ると思う。
まぁ確かに歯科医師であればずっと定期的に来てくれているひとであるかどうかとか、痛い時だけくるタイプのひとかによって対応は少し変わるかもしれない。ただ、それでもまぁ最低限痛みは取りたいところだ。
ここから少し例え話をしよう。仮にあなたは明日盲腸の手術がある患者だとしよう。医療費の削減などで病院の経営はギリギリを迫られている。人員がギリギリだ。そして手術当日になった。
執刀医が「お腹痛いから今日は休みます」と言ったらどうだろうか?有給休暇は残っていて法的に問題はない。むしろ労働者の権利だ。人員はギリギリなので代わりの執刀医はいない。患者であるあなたは「じゃあ仕方ないので別の日にオペの日を取り直してまた入院してくださいねと言われ退院です」と言われたら。
こんなことが許されるわけがあるだろうか?実際は非番の人が呼び出されて対応することになると思うのだが、緊急なことがあれば電話一本で呼び出されるそんな職場なのだ。
そして、それは家族で楽しんでいる時でもオンコールは鳴る。そしてそれがどうしても自分が行かねばならないのなら医者は行くのだ。家族をおいてでも。
皆さんお分かりだろうか?自分や自分の家族を犠牲にしている医療従事者は多くいる。僕も妻に「お前は自分の家族より患者を優先するのか?」と聞かれたことがある。僕は「患者を優先する」と答えた。それに妻は激昂していたが僕の考えは変わらない。例えば目の前に手術中の患者がいるとして、妻が倒れたと言われてもその場を離れることはできない。目の前の手術を処理して、術後の指示も出して、諸々離れても回るようにしてからしか出ない。
開業医なら目の前の患者や予約の患者のキャンセルはできるだけするが連絡がつかないなどあれば、僕は待機するだろう。約束をとったのだから待つのは当然だ。こちらの都合で時間をずらすならばお願いするしかない。僕はそういった覚悟で医療を行っている。
みんながみんなそうではないだろう。実際普通の職業と同じように適度な距離をおきながら医療をしている開業医(開業医がという意味ではない。医療と普通の職業の垣根のない医師という意味。大きい病院ではそれはできないので開業医とした)の方がお金儲けはうまくいっているのだ。僕より稼いでいる医師歯科医師は多くいると思う。
でも、そういった医師や歯科医師より僕の方が目の前に困っているひとがいたら助ける可能性は高いと思っている。しかし、そういったところは評価されることはない。ましてや稼ぎに直結しないし、効率を考えたら稼ぎが悪くなるまである。
それでも僕は自分のスジを通すのだ。
しかし、これは一般的な医療従事者に求めるべきではないとも思っている。あくまで僕が個人的に感じている正義に過ぎない。
皆さんは救急で医療を受けられることを当たり前と思っていないだろうか?急に痛いといって診てもらえることを当たり前だと思っていないだろうか?予約ありの診療でなく緊急で診ることのほとんどが誰かの犠牲の元成り立っているといって過言ではない。
それを医療従事者のやりがいやプライドに求めるのは古い考え方なのだ。
僕みたいなやつは絶滅危惧種なのだ。
その中での医療費の削減、物価高や人件費の上昇に対応していない医療費の点数などを考えると、日本の医療は滅びの一途を辿っている。
しかし、国民保険は高いとみんなXで投稿する。もう保険で賄える医療はもっと最低限でいいと思う。国民の負担も減るし、医療側の負担も減る。ある一定以上のレベルの医療は富裕層のためのものにするのがいいのではないだろうか?日本の医療のコスパが良すぎるのが問題なのだと思うのだ。
このままでは優秀な医者ほど海外に出ていく。出るほど実力のないものが日本に残ることになるのだ。僕もこのまま日本という国が医療に対して冷たいなら海外に行こうと思っている。正直、日本の医療の未来は明るいとは思わない。
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