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このままでは日本の医療が終わる

昨今の日本という国の医療人への対応がひどい。
みなさんは保険料が高いと思っておられるだろう。実際僕もそう思う。じゃあ、なぜそれで医療関係者の給料は上がらないのだろうか?

それは保険点数が上がっていないからだ。

みなさんは知らないかもしれないが、日本の保険診療は行為に対して点数が決められている。それは1点10円で換算され、みなさんは3割だったり1割だったりを負担している。

この数年で物価や人件費はどのくらい上がっただろうか?10%は下らないだろう。物価に関しては20%程度は上がったように思う。しかし、保険点数は数%しか上がっていない。医科はまだマシで歯科はもっと終わっている。外部に発注しないといけないのに、その費用はもっと上がっていて、物価や人件費も上がっているのに点数はその上昇に全く追いついていない。つまり、儲けがこの数年でグングン下がっているのだ。

コロナ特需があったのではないか?というひともいるかもしれないが、それは内科などの特定の科に限られていて、ベッドの話もあったが、一般開業医は入院のベッドなどない。確保も何もいい思いなどしていないし、病院を避ける傾向のあった数年でダメージばかりだ。

じゃあなぜ国民の負担が上がっているかというと高齢者の割合が増えて医療をうける割合が多いからだ。それなら病院が儲かると思ったひともいるかもしれないが、わかりやすくいうと一人診ての儲けが減ったのだ。歯科に関しては診てマイナスまである。患者がくるから儲かるというものでもないのだ。
では、どうなるかというとぶん回すしかなくなる。パッと診て次パッと診て次に行かざるおえない。みなさんはそんなことをする医者を批判するかもしれないが、医者側からすれば、それ以上時間をかけると赤字なのだ。みなさんは仕事をするときに自分の赤字を享受しながら働くだろうか?それでは商売は成り立たない。正直誰も得しないのだ。

某政党が最低賃金1500円と訴えている。いやいや、結構結構。しかし、ということは有資格者はもっと時給を上げなければならない。医療従事者はほぼ有資格者だ。それも謎の民間資格などではなく、国家資格者になる。そのひとたちはもっと時給を上げなければならない。それを賄うのは保険料なのだ。
その某政党は最低賃金の話はしているが、有資格者をそれ以上に上げるために必要なお金の話を全くしていない。聞いたことがない。おそらく上げることを考えていない。

では、それで何が起きるのかというと、美容関係の医師になるのだ。形成外科と言ったりするが、一般的には美容整形外科という名前の方が一般的だろうか。これは自費なので、保険診療が絡まない。だから好きな値段をつけられる。それ自体は構わないのだが、実力のある医師が急に美容系に転向したみたいな話もよく聞く。そらそうだ。普通に保険診療してもしんどい上にリスクも高いのに儲からないのだ。リスクはあっても儲かる方に行くのがひとの心というものだ。ただ、これはまだいい。問題は実力もないのに、最初から美容外科を志望する医師がいることだ。これは非常にリスクが高い。表に出ていないが、美容整形の手術で多くのひとが死んでいたり、障害が残ったりしている。最近流行りのクマ取りでもひどいことになってフォローするためにパッチワークになったりする。気になるひとは調べてもらったらいい。

僕は高須克弥先生を尊敬しているが、あのひとはメッサーとして本当に実力のあるひとだ。確か救急だかなんかにしばらくいたはずだ。そして、調べてみると息子さんの高須幹弥先生もがんセンターみたいなところで働いていたようだ。これは何を意味するかというと、手術をしっかりしていたのもそうだが、癌の手術は信じられない数の縫合をする。手術は最初のメスでおおよそ決まるというのもあるのだが、縫合でも治癒の度合いや傷跡の綺麗さが変わる。おそらくそこで死ぬほど縫合して練習したと思われる。

基本的なことをしっかりし、実力がしっかりしたひとが美容整形に行くのはいい。しかし、安易に最初から美容整形に行く医師に僕はかなり危機感を覚えている。

とはいえ、全ては保険診療が儲からないことが全ての原因だ。これをどうしていくのかという話になる。僕はいつも正解かどうかは置いておいてとりあえず代替案を出すので、僕の考えた代替案を出す。

それは、
保険診療のクオリティを下げる
だ。

技術的な話ではなく、保険診療でできることを減らそうということだ。
例えば、開腹手術は〇〇円で、腹腔鏡手術であれば、プラス自費でいくら上乗せしてください。その部分は保険に含まれません。というような感じだ。混合診療を認める形になるが、その方が国庫にダメージも少ないし、医者の儲けも増えるだろう。本来、必要な技術や必要な機械が増えればもっと費用がかかるのは当たり前だ。海外と同水準としないまでも日本の医療はあまりにも安すぎる。

お金がなければサービスを受けられないというのは当たり前だ。国が福利厚生としてフォローするならいいが、フォローできないなら仕方ない。その歪みを医療関係者に持っていくのはお門違いだ。

他に例えば、歯科はかなり保険点数が終わっているので、歯のないところに歯を入れることを補綴というのだが、保険での補綴は義歯に統一して、ブリッジやインプラントなどの固定式の補綴は全て自費にするなどだ。そして、抜歯や虫歯の治療の保険点数を上げれば歯科も救われるだろう。

先日友人に聞いた歯科の点数が本当にひどくて、難抜歯と言われる親知らずを抜くような抜歯が500点なのだそうだ。もちろん初診料や麻酔などはまた別なのだが、なんせ難しい抜歯が500点つまり5000円ということだ。正直この段階でかなりおかしい。抜歯は手術であり、歯を抜いた後は骨が剥き出しになるような外科手術だ。リスクなども考えるとこの値段はあり得ない。麻酔なども踏まえることになるが、アメリカでは2,30万円する。

この中である止血剤が572点だというのだ。つまり抜歯は5000円なのに対し、止血剤が5720円と止血剤の方が歯を抜くという行為より高いというのだ。そんなことがあるだろうか?
それも材料がめちゃくちゃ高いけど、安全のために必要ならそれはいいとしよう。なんとこの止血剤の原価が一つ5720円なのだ。お分かりいただけただろうか?歯科医院は儲かっていないし、何なら在庫を抱える分マイナスと言っていい。しかもこの薬を使ったら患者さんの負担は倍増する。保険点数はこういった闇があるのだ。

歯科医師の友人からこういった話はよく聞くが、止血剤がその値段なら抜歯は流石にもっと高くないといけない。物価は医療業界でも上がってきているので、それを基準にするならリスクなどを考えると抜歯の点数は10倍でもまだ安いだろう。

これらの保健医療のクオリティを下げるのに必要なこととして、もう一つしないといけない制度がある。それは尊厳死だ。これによって不要な医療費を削減しつつ、お金ないひとが諦める術を得るのだ。
お金が払えなければサービスは受けられない。非常に当たり前のことなのだ。すごく大変なことなのに日本人はなぜか医療人に苦労を強いることを当たり前と思っている。国の体裁を守るためシステムを維持するのに国は国民にも医療関係者にも無理を強いる形になっている。無理なら無理でこういった方向に舵を切らなければならないし、それが嫌なら医療にもっとお金を落とさなければならない。

真面目にやっている医療人は本当にバカを見ているひとが多い。救ってやりたいが僕にそんな力はない。

こんなことをグチグチ言って、ひとを守れるほど稼げていない僕もまた罪が重いのだ。

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