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井上尚弥選手のフック🥊

現代ボクシングの最高傑作と言っても過言ではない選手が井上尚弥選手だとは常々言ってきた。先日ネット記事の写真で井上尚弥選手が左フックを打っている写真が上がって、前腕と上腕の太さが変わらないという記事があった。
しかし、僕が見た時に気になった部位はそこではない。

左広背筋の下の部分

だ。フックを打った時にここの部分が緊張しているのだ。これは肩でフックをする腕を振っているのではなく、肚からフックを打っていると僕は考えている。
肩でフックを打つと三角筋や広背筋の上部が緊張しやすい。これは単関節の筋トレをしているタイプの格闘家に多い。筋力がバカほどあるならKOパンチにもなると思うし、それで勝てるなら全然構わない。あくまで相手を打倒するのが目的だ。しかし、僕は武術研究家なので、それで終わってはいけない。

井上尚弥選手ももちろんムキムキなのだが、シャープな身体で動きやすい身体をキープしつつ、パンチ力も持ちたいとなった時の答えがこの身体の使い方だったのだろう。本人は「僕はパンチ力はないほう。」と言っているが、無敗の25戦22KOの王者がパンチ力がないわけはない。ただ、手を振り回すと言う力という意味では弱いのだろう。しかし、スピードとタイミングと身体の使い方でパンチ力を担保している。そのために筋肉ダルマみたいなタイプではなく動きやすいシャープな身体にしているのだろう。

165cm 55.2kgが今回の試合の井上尚弥選手の体格だ。前日軽量なので試合当日は60kg前後だろう。誤差はあるだろうが表記しやすいように60kgとする。

腕の重さは体重の6%ぐらいと言われているので、3.6kgとなる。ちなみに金属バットの重さは1kg満たない。正味3.6kgの棒を振り回されたらいかに危険かわかってもらえるだろう。

さて、井上尚弥選手の場合はどうだろうか。肚からパンチを振ると腕の長さが手から肚までになるとイメージしてほしい。体幹の筋肉、反対の腕の重さなども乗ってくる。体重の60kgとまでは言わないが、30kgぐらいは振っていると思う。それがあのスピードで襲ってくるのだ。恐怖でしかない。
ちなみに重さ✖️スピード^2が運動エネルギーだ。スピードの重要性がわかるだろう。

パンチと称した手から当たる体当たりだと思ってもらったらいい。
井上尚弥選手はそういう身体の使い方をしている。ただ、そういう身体の使い方をしているのは主にKOするときなのだ。

普段はなんとキレやスピードはあるものの弱いパンチも織り交ぜている。これが相手を惑わすし、身体が反応してしまって、パンチが効くのだ。強いパンチばかりだと身体が慣れてきて耐えられるのだが、弱いパンチとの落差を感じさせることでより重大なダメージを生み出す。

ヒトは差を感じる生き物なのだ!

合気道はこういうところも使っている。あくまで多くの理論のあるうちの一つと思ってもらいたい。
相手に感じさせず物理エネルギーを流すからバランスを崩すのだ。
「持ち手を大事にして」とか、「持ち手を変えない」、「強く握らない」、「赤子の手を握るように」という話は合気道ではよく出てくるが、それはこのためだ。相手に感じさせないためなのだ。

おそらくだが、井上尚弥選手はボクサーとしての寿命も長いと思うし、年老いても強いと思う。

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