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「イミテーション」を読み解く


Da-iCEが2024年7月8日にリリースした
配信シングル『Story』のカップリング曲である
「イミテーション」

"キリンレモン"のキャンペーンソングであり
作詞作曲にメンバーの工藤大輝が携わっている



今回は楽曲考察と併せて
"何故、曲名がイミテーションなのか"
についても、考えていきたいと思う。



1.歌詞に込められた想い


まずはいつも通り歌詞について考察していく。



最近のDa-iCEが多用している手法だが、
J-POPの型である"Aメロ Bメロ サビ"のどこにも被らないメロディが存在していて
それを頭に持ってきている。
(A2Z、I wonderも同様)


そして、先述したが同曲は
キリンレモンのキャンペーンソング。


イミテーションの頭のメロは
キリンレモンのCMソングでお馴染みの「キリンレモンのうた」と同じメロディを引用した形になっている。

そのため、
楽曲クレジットの作曲者の欄には三木鶏郎氏の名前がある。
(三木鶏郎:「キリンレモンのうた」の作曲者)

君でも 君でも
何かを変えれるはずだと
響いてよ 繋がる
いつかを思い出して

キリンレモンのキャンペーンソングを担当したアーティストはこれまで数多くいる。

各アーティストの色が出た「キリンレモンのうた」が聴けるのがこのタイアップの面白いところである。

しかし、その中で「イミテーション」だけ少し異なるところは
歌詞に"キリンレモン"の名前が入っていないことだ。



タイアップの付かない通常の楽曲では
歌詞に商品名を使う場合
企業側の許可が降りないと使えないので
そもそも使用しないということが多い。

タイアップは
企業側としても商品名を前面に売り出して欲しいのと
商品名を自由に使える絶好の機会でもあるため
歌詞中に商品名が出ることも多い。


特にキリンレモンは
CMソングの「キリンレモンのうた」のイメージが強いため
イメージを崩さずに他の歌詞を当てはめるのが難しい。


今回の楽曲制作に関して工藤はインタビューでこう答えている。

Q. 今回作詞作曲されたとのことですが、込められた想いを教えてください。

工藤:大人になって様々なことを覚えて気にするなかで、昔持っていた純粋な気持ちを忘れずにいたいという大枠のテーマを据えて、世代を言い訳にせずフレッシュでいたいという想いを込めました

https://www.thefirsttimes.jp/news/0000449493/

また、インタビュー以外では
「無理して若さを作っていくのではなく
大人にしか出せない表現でのフレッシュさを作った。」
とも発信している。


お馴染みの歌詞に空耳するようにも出来ていて
且つ楽曲に込めた想いも表現されているのが
「君でも何かを変えれるはずだと」
「いつかを思い出して」
という冒頭の歌詞だ。

「あの頃は」って
他人事みたいに話さないで
今だってずっと
側にあること忘れてない

"昔 持っていた純粋な気持ち"は
大人になって失った訳ではなく
案外、側に眠っているだけである。

ということを教えてくれている。

脚色も着色もしないで
「らしさ」は「らしさ」のままで
泡立つ透明の奥にある極彩色

"極彩色"とはとても鮮やかで濃い色のことで
言い換えると
ド派手、どぎつい、毒々しい色のことである。



思い出というものは
良くも悪くも時が経つにつれて色を付け加えられていく。

付け加えたりしないで、
ありのままの状態を見て欲しい。

純粋なものは
そんな事しなくとも濃い色を持っている。

明日のことばっか考えてるだけじゃ
大切なこと忘れそう
不純物無しの純粋の味
刻まれた日々でしょう


毎日のタスクをこなす事に精一杯になっている"君"へ

何のために、何をするのか、何をしたいのか

立ち返ってみれば
これまでの日々に深く刻まれているはずだ。

恥ずかしがらないで
ハジけたままオトナになれ
フタをしめたままいないで
等身大で童心抱いて
決して纏わないイミテーション
(ラスサビ)
決して迷わず生きてこう


子供の頃に抱いていた夢は

大人になってから振り返ると
その真っ直ぐさに眩暈がしそうになることもある。


それでも目を背けず、
周りに流されず、迎合せずに
大人になってからもその頃の夢を忘れず
生きていけたら。




イミテーションは模倣を意味する。


何にも染まること無く
あの頃の気持ちを大切にしていこう。

決して纏わず、
決して迷わず。


そんな想いが込められている。





また、
ラジオで語られた楽曲に込めた裏テーマ。



最近、音楽番組への出演が増えたDa-iCE

それに呼応するように増えるSNSでの
とある声。

「昔好きだったDa-iCE、最近よくテレビ出てるの見て嬉しい。」


このような言葉を見る度に
勿論 有難い気持ちはあるが
その反面、

"昔 好きだった"ではなく"今も好き"
過去形より現在進行形の方が嬉しいのに

と複雑な気持ちを抱くようで



そういう人達に向けて
"昔応援してたんだけどって言う人はみんな戻ってくればいいのにね"
という想いも込めて作ったそう。




昔から変わらず、今もここにいる。

「いつでも戻ってきていいよ」
という寛大さでもあり、
「今を見てないなんて損してるね」
という煽りにも感じる。

とても"工藤大輝らしい"と思った。




ここまで
歌詞に込められた意味を深掘りしてみて

"過去と現在を繋げる"ことが一貫していることを感じたはずだ。


そして、その意図は歌詞だけでなく
楽曲のトラックにも込められている。


イミテーションのトラックは
2 Step、Jersey Club、Dub Stepの全要素を
J-POPに混ぜ込まれている。


その理由についても、

2 Stepは2000年代
Dub Stepは10数年前
Jersey Clubは最近
と、それぞれ違う年代に爆発的に流行を生んだ楽曲ジャンル

ただ、
これらは流行りの時期はあれど
そのジャンル自体はそれ以前もそれ以降も存在している。


「あの頃 流行ってたよね」で流すのではなく
そのジャンルをしっかり現代でも形にしようとした。

ということが語られていた。




楽曲のトラックから歌詞まで
ここまで一貫したテーマで多角的に要素を盛り込む
工藤大輝の作家としてのクリエイティブ力に感服するしかない。




そして、もう1つ
この曲について考えたいことがある。

2.曲名に込められた意味

note内で何回も記したが、
この楽曲の曲名は「イミテーション」

しかし歌詞の中ではこう記されている。

決して纏わないイミテーション

"決して纏わない"と言っているのに
曲名が「イミテーション」

普通なら
纏わないと決心しているならその対義語を曲名に採用するだろう。

しかし、
この楽曲の曲名は「イミテーション」



何故 曲名がイミテーションなのか

考えられる理由が2つある。



1つは
工藤大輝は
"歌詞内で否定しているものを敢えて曲名にすることがある"
ということ。



以前、工藤がMISS MERCYという女性グループに提供した「Cinderella」という曲がある。


彼女達のデビューシングルということもあり
曲名から、シンデレラのように突然舞い降りる奇跡のような華々しい道を夢見る歌詞などを予想すると思うが実際は

「ガラスの靴じゃ走れない」
「ドレス身に纏うだけじゃ意味が無いの」
「程遠いCinderella story」
とシンデレラストーリーで歩もうとすることを否定する歌詞が並んでいる。


それでも曲名には「Cinderella」が使われている。



天邪鬼と言ってしまえばそれまでだが

恐らく
伝えたいメッセージの前フリとして
曲名を使っているのではないだろうか。


予想通りには進ませない、
意表を突く
手のひらで踊らされているのを感じる。




もう1つの考えられる理由は
"実際に模倣している楽曲だから"。


歌詞考察の方で少し記したが、
この楽曲の冒頭と締めの部分は
「キリンレモンのうた」のメロディをそのまま引用している。

タイアップによる引用とはいえ
"自身が作り出したものではない"
という所からリスペクトも込めて
「イミテーション」
にしたのではないかと考えた。







工藤制作の楽曲は
歌詞を複雑にしている変わりに
曲名はシンプル且つストレートにしていることが多いのだが

たまに
敢えて"カタカナ"や"ローマ字"を使って
ダブルミーニングにもトリプルミーニングにも
なるよう含みを持たせることがある。



これからも彼が作る楽曲の
隅々まで考察できるようになりたい。

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