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「I wonder」から見えてくるDa-iCEの可能性


配信リリースから4ヶ月ほどで
ストリーミング総再生回数1億回を突破した
「I wonder」



Da‐iCEはストリーミング億超え楽曲が3曲あるのだが
他2曲は約10ヶ月での1億回突破だった
(現在 CITRUSは5億回、スターマインは2億回)


なぜ、
これほどの速さで1億回に到達したのか

そして、
そこから見えてくるDa‐iCEの可能性について考えていきたいと思う。




1.なぜグループ史上最速の1億再生を果たしたのか


MVやライブ映像のコメント欄から
老若男女問わず、幅広い世代に響いていることが分かる「I wonder」

誰でもサビを口ずさめて
手だけで何となくの振り付けが踊れる曲というのは
ここ数年のヒット曲では少なかったと思う。




そんな「I wonder」のヒットの火付けとなったのは
間違いなくTikTok戦略の成功だ。

・リモコン音

・「音が止まった」からの冒頭15秒間にフォーカス

・全身ver.と簡素化された手振りver.の2パターンの振り付け

・様々なジャンルの方とのコラボ動画

・グループとメンバー個人の公式アカウントが積極的に「いいね」「再投稿」「コメント」を送る

リモコン音のような無機質さは
TikTokのようなスクロール型の動画配信アプリでは手を止める取っ掛りとして1番効果的な音だと思われる。



振り付けも戦略的で

ドラマ主題歌なのでリモコンを付けてテレビを見る様子をイメージした
"ボタンを押して覗き込む動作"には
前に出ることで顔がよく見えるようになる狙い

"みんなで顔を見合わせる動作"には
カップルや友達同士で目と目が合って照れてる様子は見てる側も微笑ましいはずという狙い

"首のアイソレーション"は
オトナブルーなどでも流行った通り
音にハマったらかっこいいが出来そうで意外と出来ない振り
(出来ない人用に首を左右に傾けるだけのパターンも提示)

"朗らかな表情で体を抱きしめる動作"で
間違いなく可愛いが引き出される


振りの1つ1つに意味と意図が込められている。


誰でも踊れて、仲良し感と可愛さが引き出される振り付け。

自身の楽曲でなくても
流行りの音源になれば
様々なグループが踊ってくれる昨今の状況にも狙いがマッチしている。

実際、
男女や国問わず様々なグループが踊ってみたを投稿しているが
コメント欄を見ると「これ踊ってほしかった」「アイソレ上手い」「最後の表情が可愛い」などの声がとても多く、
狙い通りの反応が見られた。



コラボ相手もとても幅広かった。


基本的に、好きなアーティストができると
フェスなどの機会がない限り
聴く音楽が固まってしまう。

特にアイドルとダンス&ボーカルの界隈はそれが顕著
(他のグループとライブで共演する機会が少ないことが原因)

どのグループもファンの年齢層は幅広く
ご年配のファンだとしても「好きなグループがやっているなら」と
馴染みないアプリでもインストールする人は多い。

TikTokなどでコラボすれば
そこのファンには確実に届くので、他のグループのファンにも認知させることができる。


その他にも
インフルエンサー、YouTuber、TikTokerとも
積極的にコラボしていた。

それらのファン層とTikTokを日常的に見る層が被っていることもあり
コラボ動画の再生数も桁違いに多かった。


見る機会が増えたことで一般人の投稿が増え、

若年層からの冒頭15秒のフレーズの認知が増えた。



TikTokは
「何となく聴いたことがある」
を増やすためには最適なアプリではあるが、
いくら狙っても狙い通り行くとは限らない。

最終的には運でしかない。


それでも
ヒットさせるために
できる限りのことを準備し、やり尽くし、
狙っていた軌道に乗った。

メンバー、スタッフの方々の
戦略と努力が
楽曲認知に繋がった。





もちろん、TikTok以外の要因も大きかった。


GP帯のドラマ主題歌の影響力はやはり強い。
(特にTBSの火曜ドラマの主題歌はヒット率が高いと個人的に思っている)

40〜50代からの認知はドラマからのものが多い。


エンディングで流れる際
演出の都合で、話によって使われる音源の尺が変わる。

しかし、
「I wonder」は音源の時点で
尺が2分38秒とコンパクトなため
1話から毎話フル尺でエンディングに使用されていた。

ものによっては1番の中でもBメロがカットされたりと
歌詞の意味が繋がらなくなる切られ方をすることもある中で
毎話フル尺で流れるのは

書き下ろし主題歌として理想的なドラマとの関わり方であり
楽曲宣伝としても嬉しい使われ方だ。



TikTokの方は動画の再生数の割に
そこからMVを見たり音源を聴いたりといった
楽曲への還元率が低いのだが

ドラマ主題歌は
MVや音源で楽曲を聴く人が多い。


大前提としてドラマ自体がある程度、話題にならなければならないという条件付きではあるが
楽曲への還元率は高い。

MVのコメント欄を見ても「ドラマから来ました」という声も多かった。



そして、それと同じくらい多かったコメントが
「ラジオから来ました」という声だ。




今までの「CITRUS」「スターマイン」の時との大きな違いがここで

「I wonder」はラジオで流れることが多かった。



ラジオ局内のランキング番組や
radikoの楽曲ランキング(週間・月間)で
ランクインしていた。


その中でも特に

関西圏を放送地域とするFM802で
日曜日の昼の12時から15時に放送される番組
「FM802 OSAKA HOT100」

FM802全番組のオンエア回数、タワーレコードの全店総合アルバムセールス、レコチョクのダウンロード数を元にした デジタルセールス、Spotify Japanのストリーミング再生回数、以上をもとにポイント集計。 関西で 今 ホットな100曲を導き出すオフィシャル・チャート・プログラム

https://funky802.com/hot100/

この番組で8週間TOP3にランクイン
その内、4週連続で1位になっていた。


世間にグループが知られていない状態からのヒットと
名前が広まってからのヒットでは
取り上げられ方が違うことを考慮したとしても


ここまで多くラジオでオンエアされることは無かった。


radikoやポッドキャストの普及
違法アップロードではなく公式からのYouTube配信のおかげもあって
ここ数年、ラジオの聴取率は上昇している。


様々な媒体が情報源となっている現代は
それぞれの媒体に人々が完全に棲み分けられてしまっている。


媒体問わず布教しないと
本当の意味で認知させるのは難しくなってしまっているのだが

今回の「I wonder」で遂に
それを果たすことができた。






認知拡大以外の要因として考えたのは
"1曲 2分38秒"という短さ

あっという間に終わるので繰り返し聴かれやすい。


約5分の曲と比べた時に
単純計算で、5分の曲を一回分聴き終わる時間で「I wonder」は二回分再生できる。



ただし、
曲の短さはこのようなメリットを持つが
その反面
デメリットも抱えている。

それは
展開が少なくなることで飽きが来やすい
つまり再生回数が伸びにくくなる。


二律背反であるから
そこまで普及していないのだろう。




「I wonder」で
各音楽配信サイトで上位にランクインしていた

配信開始1ヶ月後から
Apple Musicでは3ヶ月間
Spotifyでは4ヶ月間
TOP20を維持していた。

配信開始から5ヶ月経って
どちらのアプリでも20位以下に下がっている。


曲の短さによるメリットとデメリット
どちらも直に受けていることが分かる。





リスクを抱えながらも戦略的に
情熱を持って作り上げられていった作品が
運も味方につけたことで

グループ史上最速でストリーミング1億再生を果たしたのだ。


2.「I wonder」のヒットから見える
     Da-iCEの可能性



「I wonder」の音源が解禁された時

申し訳ないが個人的には
「CITRUS」「スターマイン」に次ぐヒット曲になるとは思えなかった。


というのも
世間が求めている "Da‐iCE像"と異なると思っていたからだ。


恐らく世間一般からDa‐iCEは
"ハイトーン曲のグループ"という認識が強いと思う。

「CITRUS」「スターマイン」は
曲調は違えど
どちらも歌唱力で魅せる楽曲だった。

そのイメージが強すぎて
「I wonder」ではインパクトが少なすぎるのではないかと思ったのが第一印象。



チルアウトな楽曲も流行っているから落ち着いた雰囲気の曲でもヒットの勝算はあるのでは?
という意見もあるかもしれないが、

Da‐iCEは緩やかさや落ち着きではなく
今までの2曲のような突発的なインパクトがないと世間には響かないのではないかと考えていた。




それと、もう1つ
ここまでヒットすると思えなかった要因が

今、日本で流行っている音楽ジャンルがヒップホップだということ。




世界的には人気ジャンルだが
日本ではそうではなかったヒップホップ。

完全アンダーグラウンドだった頃から少しずつ変化がおとずれ、身近な音楽となった。



考えられる理由としては3つ、

K-POPブームとtiktokダンスとCreepy Nuts。



この数年間
確実に日本で巻き起こっているK-POPブーム

K-POPは世界で活躍するためにと迎合した結果
ヒップホップとEDMを融合した楽曲が鉄板となっている。

そのため、若い世代にもヒップホップに近いサウンドが馴染み深くなった。



同じく若い世代の流行りの最先端であるtiktok

目まぐるしくトレンドが変わる踊ってみた動画
その音源として日本のラッパーの楽曲が多く使われるようになり、ゴリゴリのヒップホップも日常的に耳に入るようになった。



そして、Creepy Nuts。

世界一のDJと日本一のラッパーであるCreepy Nutsが
ラジオやテレビなど、メディアでの積極的なタレント活動と
巧みなラップスキルをポップスで昇華させたことで
ヒップホップカルチャーに取っ掛りを作った。

そして、
音楽に専念するために とメディア活動を辞めた後にリリースした音源
4曲ともジャージークラブがトラックに使われている。

間口を広げて、興味を持ち始めた人々を
世界的トレンドであるジャージークラブで一気にヒップホップの世界へ引き摺り込んだ。



その結果、
日本のアイドル
ダンス&ボーカルグループ
ソロアーティスト
時にはバンドも
ヒップホップチューンをリリースするようになった。



今の流行りにJ-POPで対抗できるのか
分からなかった。



しかし、
そんなのは杞憂だったかのように

4ヶ月という短い期間で
ストリーミング再生1億回を突破したのだ。





高い歌唱力を必要とする
ロックバラードの「CITRUS」

フェスで盛り上がること間違いなしな
アッパーチューンの「スターマイン」

誰でも口ずさめて踊れる
あたたかな王道J-POPの「I wonder」


方向性の異なる3曲がヒットしたDa-iCE



そこから感じたのは

"どんな楽曲でもヒットさせられる可能性を秘めている"
ということ。




以前、noteに書いたこともあるが

Da-iCEはデビュー以来
ジャンルレスにJ-POPを突き詰めてきた。

特に、2017年以降
メンバー自身がコンペの試聴会に参加するようになってから、さらに楽曲の幅を広げていった。



バンドにはない
ダンスボーカルならではの強み

それは
楽器を持たない、演奏をしないこと。


つまり
楽曲内でどんな楽器を使っても
どんなジャンルの楽曲でも
ライブでパフォーマンスできる。



ヒットした3曲とも系統が異なることで
曲調から"Da-iCEらしさ"というものが割り出せ無いというのは欠点とも捉えられるかもしれない。


バンドの大半は
特徴的なギター使いなどのサウンド面で
"〇〇の曲"だと分かるようになっている。


ダンスボーカルグループの大半が自分達で曲は作らない
作家のコンペで曲が決まるので制作陣も毎作変わる

何となく"〇〇っぽい"雰囲気は作り出せても

Perfumeのような完全プロデュース性でない限り
本当の意味での"サウンド面で特徴付ける"というのは難しい。


Da-iCEの場合
メンバーが作っていようがコンペで決めるため
毎作誰が作った曲になるか分からない。
それに加え、編曲者も楽曲によって変えているので
やはりサウンド面での特徴は付いていない。



ただ、上述したように
サウンド面の縛りがないからこそジャンルに囚われることなく制作できる。


系統の異なる3曲をヒットさせた実績がある以上
これから先、
どのジャンルが当たってもおかしくない。


スターマイン誕生秘話で楽曲制作者の工藤が話していた内容で
「CITRUSがヒットした後にもう一回バラードを出そうって言ってくる大人がいたけど、
もう一回バラード出したらバラードのイメージがついてダンスボーカルって思われなくなる。」
「ヒット曲と同じジャンルを二番煎じって1番やっちゃダメ。」
というのがあった。

CITRUSしかヒットが無い状況なら確かにその通りなのだが
続くスターマイン、I wonderで幅を持たせられたおかげで
またバラードでヒットさせることもできるようになった。



次ヒットするのはどんな曲になるか
彼らがどんな曲を仕掛けてくるのか
世間はどんな反応を示すのか

気長に待ちたいと思う。



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