下手な人生論より徒然草
著者: 萩野 文子
本棚が一杯になると、少し整理しましょう、ということで、残す本、残さない本、とふるい分けをはじめることはあると思います。
この本は、何度かのふるい分けのなか、残す本のなかにずっととどまり続けた、貴重な一冊です。
かつて、吉田兼好が好き勝手に徒然草を書き綴ったように、著者の荻野さんものびのびと書いているようにお見受けします。
著者の荻野さんは、予備校の「マドンナ先生」と紹介されています。
古典の女性講師、というイメージからは少し外れた男っぽいところがあるんでしょうか? 語彙の豊かさ、自分の思いをはっきりと書き上げてくるところに、彼女の頭の良さ、回転の速さを想像します。
そんな彼女ですから、思ったことをはっきり言う、にとどまらず、時に、口論に発展してしまうこともあるようです。彼女は自分でもこう書いています。
『怒ったときの雄弁さといったら、われながらこんな巧い表現がよくできたと感心するほど、相手をグウの音もでないほど叩きのめしてしまう』
端で見ているだけなら面白そうな光景だが、当事者は笑っている場合ではないんでしょう。そんな時の解決策を彼女はこう書いています。
『「私はこうしたい。で、あなたはどうしたいの?」意見の食い違いだけを示して、先に相手の言い分を聞くのである。
途中で何度かムカつくが、無理にでも相手の話にうなずく。これは意外な効果がある。首をふるリズムが、揺り籠のように怒りを宥めてくれる。最後まで聞けば、相手の立場も見えてくる。
そうしているうちに、自然と解決策を考え始める。相手の要求と自分の主張の間に、わずかな接点を見いだそうと頭が回転しはじめる。理性が働きだすので、感情が抑えられていく。うまく解決策を思いついたときは、宝石箱を開けて見せるようなワクワクした気持ちで明るく話せる。相手も、いいたいことがいえてすっきりし、前向きな私の対応に機嫌をよくしてくれる。』
不毛な言い争いに疲れることが度々ある、と思われる方は参考になさってはいかがですか?