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インディフィニト・ノート 6話

<前話までのあらすじ>

ずっと気になってた、かおりが身に着けているアクセサリーの話から、ロボットプラモデルで盛り上がると車内で行為に及ぶと思っていた安藤は意外な
提案を受ける。二度と来ないかもしれないチャンスに不確定要素は頭の隅に
追いやり、本能に赴くままに抱き合っていた。一度だけ、車が通りかかり、
30秒程、停車していたのを忘れずに覚えていた。

1話は<1~5P>こちらから
5話は<21~25P>こちらから

         6話<26~30P>

 運が良かったのか悪かったのか今だに判断が付かないのだが、まぁ3年以上も前の記憶を鮮明に覚えている人間などいないと結論付けて今日に至る。   
 大したミスではないと強く思い込む事で精神を安定させて出世争いで結果を残してきた。

 目を覚ますと給湯室の横に設置してあるマッサージ機で寝てたみたいだ。時計を見ると14時を過ぎていた事が分かる。流石に、腹が減ってはいたが食堂のおばさん達の片付けは終わっているだろう。確か今日のメニューは、サバの味噌煮だった気がする。楽しみにしていただけにテンションが下がっていた。
(さて、どうしたものか)

 今日だけは特に業務しなくても何も言われない事を思い出すと久しぶりに通いなれた店へ食べに行く事にした。体育会系のノリなのか小型のプラカードが各部署のトップの机に置かれており、出社、外出中、退社の札をスライドして交換できるようになっていた。

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 安藤が居る部署は一月前から部長が交通事故で休職中になっていた。他部署も応援したいのは山々だが人材不足もあって部長の仕事も兼任という形をとっていた。パワハラは絶対にしない事でも有名だったので失敗しても個人的に面談して指導する方法を徹底していた。
 
 その事もあって人事としては文句の一つも言わずに仕事と向き合っていた事を評価されての異例のスピード出世となったのだ。

 10日程経って部長から一度だけ直接、電話で会話した事を思い出した。確か休日中に走り屋の聖地である群馬県の榛〇山に乗用車で観に行った帰りの夕暮れ時にドリフトしてきた対向車が中央線を大きく、はみ出してきて、ボディの側面に衝突されたらしい。

 相手は20代後半で本人は金欠みたいだったが親が会社を経営してるらしく保険屋よりも早く慰謝料を手渡しで貰ったとの報告を受けた。詳しく聞くと幸いにも正面衝突は、免れたので命の危険にさらされる事は、無かったという。ジープ車で練習していたみたいだ。
 

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 しかし事故の衝撃で首を痛めたとの事で、免許書の点数がヤバイから当事者同士で済むような話にはならなかったみたいだ。ドライブレコーダーも鮮明に映っていたとの報告も受けたので当て逃げになる事はなかったのが部下としては、ほっと胸を撫でおろしたところだ。定年間近で聖地巡礼ってのに驚きまくったが人の趣味に文句を言う筋合いでもないので引継ぎ業務はメールでお願いしますとだけ伝えたのが最後だった気がする。

 普通ならパソコン業務が苦手な年代では、あるのだが。どういう訳か新入社員よりもタイピングが速くて驚かされた事がある。最初は片手の人差し指だったのが一ヶ月が過ぎると両手打ちに変わって更に驚いた記憶が蘇った。

 給湯室でバッタリ鉢合わせた時に、疑問に思っていた事を聞いたら二十歳の愛人に教わっていた事が分かった。異性が絡むと英会話が達するという話も聞いた事があったので、あながち嘘では無い気がしてくる。
 

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 腹が減っては戦はできぬというコトワザが好きすぎて1日三食は必ず食べるをモットーに、これまで生きてきたまである。断食なんて事は考えた事もなかったのだがミステリの王道である。名探偵シャーロックホームズは空腹の方が思考が捗るという知識だけはあった。ミステリーマニアと呼べる程、詳しくもなく、たまたま学生時代に国語教師の担任(活字中毒)が学級図書に自書を持ち込んでいたのが興味を持つきっかけだった。

 担任が持ち込んだ書籍の感想を用紙に書いて提出して気に入られれば宿題忘れの免除があった。
 うっすらとでは、あるが四つの署名だけは面白かった記憶がある。そんな事を思い出していると目的地であるJR中野駅から徒歩2分の場所の店に着いた。遊べるレストランという目新しいコンセプトの店でもあり、店内のボードゲームを自由にプレイできるのだ。

 癒し空間に美味しいオムライスも味わえるので、お気に入りの店となって
いた。  

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 卵焼きの上にケチャップ添えた王道のイメージが強いオムライスではあるが、この店は野菜の風味と旨味を凝縮した自家製のケチャップを使用しているのが特徴だ。甘みと酸味のバランスが絶妙で一口食べるとスプーンの手が止まらない位に美味しい。入社式に思い描いていた”ふわとろオムライス”は今度にすると決めて、この店に入っていた。以前まではボードゲームに熱中し過ぎてドリンクのみの料理を全く食べていなかったのであった。

 紹介してくれた友人からは会うたびに、せっかく美味しいオムライスがあるのだからと催促されていたので約一年ぶりのオムライスが、こちらの店にした理由だった。店員からメニュー表を受け取る前から実は頼むメニューは決めてあった。お店の人気No1メニューの「ごぼうポタージュオムライス」だ。

 東京都中野区の観光資源に認定されており、魅力的だった。案の上、店員は、月替わりのユニークなオムライスアピールしながらメニュー表を手渡した。 

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         6話<26~30P>  

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