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1 田代勇輝は、O街道をタクシーで走っていた。 時刻は午前零時を回っており、流石にO街道を走る車の量は減ってきている。道路の脇の歩道には、人通りは全く無くなっていた。 先ほど長距離の客をM駅で拾って三十分くらいの距離にあるW町まで乗せて行き、そしてまたM駅に戻る途中だった。 田代はタクシー運転手になってまだ日が浅い。 もともとはメーカーで営業をやっていたのだが、3か月前にタクシー運転手に転じた。 メーカーに勤めていた時は仕事のノルマは厳しく、業務効率化の名のもと
女性はそれほど興味があるわけでもないのか、その隠語についてそれ以上訊いてくることはなかった。 田代は気を取り直して前方に集中する。 ちらちらと横目でメーターを確認する。大丈夫だ。法定速度はしっかりと守っている。 一か月前に、昼寝をしようと路肩にタクシーを駐車して、寝ていると、警察に窓をコンコンと叩かれたことがあった。何事かと思って窓を開けると、 「ここは、駐車禁止エリアだから」 その中年の男性警察官は、事務的な口調で田代に告げた。 結局、違反切符を切られてしまい、