〚お客をえらぶギター奏者の物語(仮題)〛通し番号19. 《お客をえらぶギター奏者》(3)
子どもの苑の 年忘れお楽しみ会までは、もう日にちが無い。
親方は これも大切な仕事だから、と 特別に午後の数時間を割かせ、
4番弟子を 少年との練習に専念させた。
彼女は 自分のギターを家族に残して来たため、工房のを使った。
子どもにも耳馴染みの良いギターの名曲や、
一緒に歌える 季節の童謡、アニメの曲等に加えて、
彼女の故郷の曲も いくつか少年に伝授された。
少年は 何しろ覚えが早く、習得は すらすらと進む。
初めて知る 異郷のリズムと旋律を 特に喜び、
いきなり 教える4番弟子を感激させるほどの出来ばえであった。
ふたりは熱中し、様々なアレンジを試しては 笑い合った。
が、子ども達に分かりやすいように、と 結局はメロディーを生かした シンプルなのでいくことにした。
童謡は 親方と惣領弟子に、アニメソングは3番弟子に歌ってもらい 練習した。
「この調子なら大丈夫そうだな」
親方の耳打ちに、惣領はうなずき返しながら 頼もしさとわずかな寂しさを感じ取った。
(この物語は おとぎ話です。登場する人びと、場所、出来ごと等 全て 架空の存在であり、モデルはありません。こんな人びとがいたら良いな、と願って書いているところはあります。)