「ストーリーのお披露目」がしたいならTRPGのシナリオは不向きなフォーマットだと思うという話
どーも、黒単スーサイドです。
皆さんシナリオ書いていますか?
私は気が乗らないと書かない質なのであんまり書いてないんですが、今私がこんな世迷言を書き連ねている間にも将来の名作シナリオが誰かの手によって生み出されているかも知れないですね。
さて、話は少し変わりまして。
皆さんのシナリオを書くモチベーションってなんですか?
「PLに楽しんで欲しい」とか「思いついたギミックを試したい」とか色々あると思います。
その中には「ずっと温めていた『ストーリー』をお披露目したい」というものもあるのではないかと思います。
しかし、私はストーリーのお披露目というモチベーションでシナリオを書くのはTRPGのシナリオというフォーマットはミスマッチなんじゃないかと思っているところがあります。
前置きが長くなりましたが、今回は「ストーリー」を描きたいならTRPGのシナリオは不向きなプラットフォームだと思う理由をいくつか挙げていきたいと思います。
※以下、私のとても偏った意見が繰り広げられます。
それによって傷つく可能性もありますが、それは自己責任です。
誤解が無いように先に言っておきますが、私はこのモチベーションを真っ向から否定する意図はありません。
ここを克服できたらより自由度が高くなると思います。
私の意見を交わしたいなら、ぜひコメントお話ししましょう。
1.TRPGは「個人」の「創作」をする場ではない
この意見には賛否が分かれると思いますが、TRPGは個人が自由に創作を行うフォーマットではないというのが私の意見の根底にあります。
セッションの風景を思い浮かべてもらえれば分かると思いますが、TRPGは基本的には個人で完結するものではありません。
GMが状況を説明し、それを受けたプレイヤーがその状況に対して行うリアクションを宣言して進めていくという構図があります。
この構図において「完全に自分がコントロール出来る部分」というのはほとんどないと言えます。
一緒にセッションしている方は、自分とは違う意識を持った存在なので、自分の予想もしないことを言ったり行動に移したりします。
例えば城門の前にPCがいる時、GMは正々堂々と真正面から入っていくストーリーを思い描いていたとしても、もしかしたらプレイヤーはキャラクターに城門を爆破するような行動を取らせるかも知れない訳です。
その行為がゲームを有利に進めるのかどうかは大きな問題ではなく、やる人はやります。
また、それによって有利な状況が発生するのであれば、その状況を発生させないという選択肢をとることは実質出来ません。
この様に、特定の個人の思い通りの展開を作ることは結構無理です。
故に個人が自由な創作をするというには難しいフォーマットです。
2.TRPGの展開は予想がつかない
比喩でもなんでもなく、TRPGの展開は予測がつきません。
これは先程書いた「他人の意思」によるものもありますが、ここを入念な打ち合わせによって回避出来たとして、今度は「判定が成功するか失敗するか」という要素が立ちはだかります。
例えば、思い描いていたストーリーでは「PCはなんとか切り抜けた」としても、判定で失敗したら切り抜けることは出来ません。
もちろん、ストーリー上重要な部分は判定をしないようにシナリオを組むという方法もありますが、それをすることによってセッションはよいものになるのかを一度しっかりと考える必要があります。
様々な局面での判定は展開の不確定さというデメリットは与えますが、成功すれば大歓喜間違いなしの分かりやすい舞台装置なのは間違いない事実。
思い描いてきたストーリーにその不確定さが邪魔だと思うなら、やはりそのストーリーはTRPGのシナリオにするには不向きと言っていいと思います。
3.TRPGは演劇ではない
詰まるところはここになるのかも知れないですね。
理想的なストーリーをやるにはPCの行動を制限しないといけないところが出てきます。
しかしTRPGは自由さが大事にされる遊びなので、あまりにも行動の制限が多いと「せっかくTRPGで遊んでいるのになぁ…」という気持ちが出てしまい十全に楽しめない人も出てきます。
まるで演劇かの様に台本を書き上げたうえで「私が思い描いた様にしてほしい」というGMもいる様ですが、リンク先の方はその卓が苦痛になっていたみたいです。
上記はあまりにも極端で稀な例ですが、こう言った卓でプレイヤーの気持ちを盛り上げるにはGMとしてかなりの力量が必要になります。
力量が伴っていないGMがやるとシナリオ朗読会になりかねませんからね……。
じゃあどうシナリオを書けばいいのか
色々書きましたが、じゃあどうやってストーリーを描かずにどうシナリオを作るのか。
ここであまり革新的なことは言えませんが、ずっと実践され続けているいる方法があります。
それは「出来事を書く」です。
ルールブックに載ってるサンプルシナリオを見てみましょう。
そこには「どこ」で「なに」が「どうなる」かが書いてありますよね。
小説や演劇の様な情景の描き方は想像力を掻き立てる程度で、特定の順番だったり特定の行動で進まないと崩壊する様な書き方ではないはずです。
これは、GMではなく、プレイヤーの行動がストーリーを形作っていくことを意識した書き方になっています。
なぜGMではなくプレイヤーの行動がストーリーを形作るのか
GMはストーリーを描くポジションだと思っている方もいますが、実際はプレイヤーの行動による世界の変化を描くポジションです。
例えば「1000万円が手に入る依頼が舞い込んでくる」という出来事が起こったとしましょう。
あるキャラクターは金にがめついので報酬の吊り上げを要求するでしょうし、またあるキャラクターは困っているならタダでやると言い出すかもしれません。
これはプレイヤーが選んでキャラクターにとらせた行動ですが、GMが見ているシナリオには、よほど不都合が起きる予想がつかない限りは「1000万円が手に入る依頼が舞い込んでくる」だけでしょう。
シナリオにキャラクターのリアクションは書かれていません。
しかしリアクションによって片方は「1000万では足りないので報酬の上乗せを要求した」、もう片方は「困っているなら報酬はいらないと1000万の報酬を断った」というストーリーが出来ていますよね。
これで、出来事に対してキャラクターが起こすリアクション、つまりプレイヤーの行動がストーリーを作り出していくのがわかったと思います。
どうしてもTRPGでストーリーをお披露目したいなら
それでもTRPGでストーリーをお披露目したい。
これを叶えるアイディアは私にはがありません。
強いて言うなら「吟遊詩人」と揶揄される手法をわざわざ取り入れる位です。
しかし、これは「3.TRPGは演劇ではない」で例示したような状況になってしまうのでおすすめはしません。
誤解がないように言っておくと、決してこのモチベーションを否定するつもりはなくて、寧ろそれを実現した上で参加者が満足できる形が出来上がるのならそれが一番いいと思っています。
まとめみたいなもの
と言うわけで、ストーリーはプレイヤーがつくモノなのでシナリオでストーリーのお披露目をするのはちょっと無理があると思うというお話でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。