スシローペロペロ事件に見る損害賠償請求の効果を広報的な視点で考察してみる。
先日から、いわゆる「スシローペロペロ」に関する、ネットニュースで、損害賠償額が高すぎるとか、そこまでしなくてもという、論調が出てくるようになってきた。
根本的な問題点や本事件の詳細については、既報でさまざまなニュースやメディアが取り上げているので、コメントや分析の詳細は割愛しますが、今回は、広報専門家の視点から見た、本事件の損害賠償額の効果について分析してみたいと思います。
ネットニュース等で出てきている加害者擁護の論調
「高校の退学を余儀なくされた」「すべての店舗設備を変更するのは因果関係がない」といった発言によるものと、損害賠償額が高すぎるといった声が散見されている。また、この動画は個人的に撮影したもので、拡散されたのは、インフルエンサーによるものとするコメントなどが見受けられる。
広報的な視点から分析すると、そもそも論として、行った行為自体が問題であり、ITリテラシーが低い、また拡散は想定していなかったとする発言は本末転倒であると考えている。この事件が、日本で初めて起きた事件なのであれば、このような発言も一理あるということもできるが、これまでもこの事件だけではなく、コンビニのアイスボックスに入っているバイトや大手定食屋さんのバイトテロであったり、様々なSNSによる問題が生じていることから考えていても、想定ができなかったというのはあまりにも稚拙であると考える。
また、過去には、某迷惑系ユーチューバーのスーパーでの事件なども大々的に報じられていることもあり、拡散は想定していないという論理は、破たんしていると考えています。
損害賠償額と広報的な効果
本事件の損害賠償額の大小に関してではなく、損害賠償を行った意義について、広報的な視点から分析すると、この損害賠償額は、大きな抑止力にはなり得るという意味で、効果的なものであると考えています。
過去でいえば、同様の損害賠償として、電車の置石問題においても同様の損害賠償事件があったと記憶していますが、その結果、依然と比較して置石の問題は減少していると考えられます。
昨今のコロナ禍において、店舗側やそれを利用する消費者は、衛生面にかなり気を使っており、そんな中で起きた事件は、損害賠償の大小にかかわらず、抑止力という意味で、非常に大きなマイルストーンをもらたすと考えています。
一部のコメントや弁護人の発言では、全店舗の備品を回収、改善する必要性について、発言していると報道されていますが、店舗側からしてみれば、リスク事案において、対象店舗のみならず、全店舗において同様のリスクが考えられるのであれば、回収、改善するのは、対消費者に対する安心安全を提供する側として当然の判断であると考えます。
そうでなくても、飲食店は、日々、衛生面を考慮し、それに対して指導をはじめ社員教育に力を入れており、食中毒の問題などにも最新の注意を払っている中で起きた事件に対して、リスク回避として全店を対象にするのは当然の動きであると考えます。
安易な投稿やSNSの弊害の抑止力
各報道によると、株価の下落が160億円であったりと報じられているとおり、ひとたび、問題が起これば(今回の事件以外でも)会社の存続を脅かすような影響と波及する複合的なリスクは計り知れない状況になることを考えると、今回の損害賠償の提示による抑止力は、スシローだけではなく、すべての飲食店の持つリスクを顕在化し、消費者に対してまたSNSを行う消費者に対しての注意喚起に有効な方法として作用していると考えます。
損害賠償額が認められるのか否かが問題ではなく、この行為自体の是非とリテラシー、SNSの炎上拡散リスクとそれによる企業への影響などを改めて考えることができる題材であると考えています。
一方、今回は、消費者が企業に対し行った行為に関してですが、同様に逆のパターンも起こり得ます。
社員の態度であったり、食材の提供など、今回の損害賠償は、逆の意味で、企業のコンプライアンスや倫理観に対しても同様に抑止力に働く可能性があると考えます。