韓国ニュース:N番部屋裁判、重罪の判決は出ない?

昨日、ハッシュタグ#NOMORE_NTHROOM #n 번방재판_오덕식_배제해 (n番部屋裁判_オ・ドクシク_排除せよ)がトレンド上位になりました。このオ・ドクシク裁判官の裁判官資格剥奪を求める国民請願も、3/28の8:00段階で26万人を越えています。

開始から一日でなぜここまでの同意を得ているのか。オ・ドクシク裁判官とはいったいどのような人物なのか。関係する記事を訳してみました。

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「n番部屋裁判」を引き受けたオ・ドクシク裁判官、「性奴隷脅迫」事件でも執行猶予

女性を脅迫して性搾取物(ポルノ)を撮るように強要し、その映像を金銭を受け取って流布した「n番部屋」グループが続々と捕まり、関連裁判もあちこちで開かれている。「博士」チョ・ジュビンの核心的な共犯者の一人として知られた「太平洋*」(16歳・テレグラムニックネーム)事件もその一つだ。

*訳者注:このイ・某という16歳の少年は、15歳ごろからテレグラムに出入りしていたと考えられ、「太平洋遠征隊」というチャットルームをつくっていた。「博士の部屋」とはまた別の部屋。

ところが、この「太平洋」事件をソウル中央地裁のオ・ドクシク部長判事が担当することになったというニュースが伝えられ、「判事を変えなければならない」という世論が沸き上がっている。オ部長判事の過去の判決の傾向を見ると、今回も「軽い」処罰が出てくることを懸念した声だ。

オ部長判事は、代表的には、ガールグループKARAのメンバー、故ク・ハラさんの「違法撮影被害」事件など、大衆の関心が集まった性犯罪事件を多く担当した。ところが、そのたびに、一貫して執行猶予を言い渡した。「軽い」結論自体も議論を呼んだが、特にク・ハラさんの事件で違法撮影に対して「無罪」とした根拠がより大きな議論を呼んだ。

「定期的に性的関係を持った間柄だったので、違法撮影でない可能性がある」という論拠がその代表である。この内容は、ロートークニュースが単独報道し、アメリカのワシントンポスト<A K-pop star's death is the latest reminder of how Korea's justice system fails women>とブルームバーグ通信で引用報道された。

このような背景から、(2020年3月)27日、青瓦台(韓国大統領府)の国民請願掲示板には「n番部屋」を担当するオ・ドクシク判事の権限資格剥奪を要請する請願*まで上がった。

*訳者注:「被害者のことを考えるならば、国民の人権を考えるならば、彼(オ判事)は絶対に二度と性犯罪の裁判官に加わってはならない」と裁判官資格の剥奪までも求めたこの請願は、開始から一日で26万人以上の同意を得た。SNSでのハッシュタグ#NOMORE_NTHROOM #n番部屋裁判_オ・ドクシク_排除せよ はトレンド上位に入った。

ク・ハラ事件で「違法撮影」の容疑無罪と判決して議論を呼ぶ

昨年8月29日、ソウル中央地裁・刑事20単独(=部署)のオ・ドクシク部長判事は、ク・ハラさんの元交際相手のチェ某氏に懲役1年6ヶ月、執行猶予3年を言い渡した。チェ氏はクさんの裸を違法に撮影し脅迫した容疑などで裁判となったが、容疑の核心となった違法撮影の件では無罪となり、執行猶予で釈放された。

オ部長判事は判決文で、「被害者(クさん)の意思に反した撮影と断定するのは難しい」とし、その根拠として6つの「総合的な考慮事項」を提示した。その中には「二人は定期的に性的関係を持った間柄」という点と、「(最初の出会いの時に)クさんが最初にインスタグラムのDM(ダイレクトメッセージ)で連絡した」という点が含まれていた。

検察は、「クさんが好感を先に示したことはそうで、恋人関係だったことも事実であるが、(それとは関係なく)違法に撮影をされたもの」と主張したが、オ部長判事は受け入れなかった。

*ク・ハラさんが亡くなった後、韓国サイバー性暴力対応センターなど6つの市民団体が記者会見を開き、「正義がダメになっても最後まで被害者のそばに立ち人権を守る必要があるにもかかわらず、その責任を放棄する裁判官たちも共犯」「「性積弊判事」のオ・ドクシクは法服を着る資格があるのか」と批判した。

*ク・ハラさんの事件以外にも、芸能人の性的被害として、2009年に亡くなった俳優のチャン・ジャヨンさんの事件がある。彼女は亡くなる前にマネージャーに手紙で、自分が番組プロデューサーや企業重役に対して接待・枕営業をするよう所属事務所から強要されたことを記したとされる(偽造とも)。事務所社長は逮捕・起訴されたが、接待を強要したとされる人びとは不起訴に。2018年、MeToo運動の盛り上がりの中で、事件の再捜査・真相究明が叫ばれた結果、再捜査となり、朝鮮日報のチョ・ヒチョン元記者(議員選にも出たことがある人物という)が強制わいせつで起訴されたが、これもオ判事が担当で、無罪となった。

酒に酔って倒れた10代の女性を家に連れて行き性暴行しても「執行猶予」

オ部長判事は昨年11月、酒に酔って酩酊した10代の女性を家に連れて行った上で性暴行した建設会社職員にも執行猶予を宣告した。あわせて、この事件の被告人に対し、性犯罪者告知・就業制限命令を出さなかった。判決文にはその理由として、「被告人の社会的なつながりが確かであり、性暴力教育の履修のみで教化が十分である」と書かれていた。

そのほかにも、違法撮影容疑で起訴されたカメラマンのイ・某氏に対しても執行猶予を宣告した。集合写真を撮るために、ステージ前方に人が出てくる際、床にカメラを設置し動画を撮影する手法だった。

イ氏はソウルの有名ホテルで2年近く女性客のスカートの中を撮影した。オ部長判事は「この事件は、悪質な犯罪で、犯行期間も長期間に及び被害者も多数」とした。しかしそう言いながらも、「初犯で、反省しており、社会的なつながりがある」という点などをふまえて善処した。

「n番部屋」に類似の「性奴隷脅迫」事件でも執行猶予

あまり知られていないが、昨年末、「n番部屋」事件と非常によく似た事件がオ部長判事に任された。

女性を性的奴隷とした後に強制わいせつ行為をし、奴隷契約を抜けようとした女性に金銭と性関係を要求して脅迫した事件だった。加害者の40代男性A氏は、脅迫の過程で性搾取映像を積極的に利用し、被害者が抵抗できないようにした点で、もう一つの「n番部屋」事件だった。

Aさんが女性を「性的奴隷」とした手法は、ゲームだった。彼は昨年8月、ソウルのあるカフェで20代女性2人に偽の金塊を見せ、「他の画像検索ゲームをして、勝てば金塊をあげる。負けたら私の奴隷になれ」と提案した。

ゲームで勝ったA氏は、被害者に服を脱がせ「私はあなたの奴隷」と言わせた後、これを映像として撮った。その後、被害者が「奴隷契約をなかったことにしてほしい」と哀願すると、A氏はその映像を口実に脅迫し、500万ウォン(の金銭)と性的関係を求めた。他の被害女性も奴隷契約を口実にして、自分の車や家で性犯罪をおかしたことが判明した。

検察の捜査の結果、Aさんは、強制わいせつ・恐喝未遂・性暴行犯罪の処罰などに関する特例法違反(カメラ等利用撮影)の容疑で起訴されたが、オ部長判事の選択は執行猶予であった。懲役1年6ヶ月、執行猶予3年を宣告した。

オ部長判事は「犯行が悪質である」としながらも、「捜査機関では一部の犯行を否認したが、裁判の過程ですべて認めて反省した点、同種あるいは執行猶予以上の前科がなく、身元確認がされた被害者3人と合意した点などを考慮した」と量刑理由を説明した。

性犯罪事件は「25%の確率」でオ・ドクシク部長判事にいく

オ部長判事が有名な性犯罪事件を一手に引き受ける理由は、彼がソウル中央地裁性犯罪担当裁判部の所属だからである。全国で最も多くの事件を担当するソウル中央地裁は、5つの性犯罪担当裁判部を置いている。刑事13・14・16・20・22単独がその担当である。

このうち16単独は、「児童虐待」に関する裁判をあわせて任されており、実質的には4つの裁判部が性犯罪事件を受け持つ。オ部長判事が担当の裁判部は20単独である。4分の1の確率で、ソウル中央地裁管轄で発生する事件を審理することになる計算だ。

このような背景から、今後もオ部長判事は「n番部屋」関連事件を審理する可能性が高い。

ロートークス
https://news.lawtalk.co.kr/issues/2007

〈記事はここまでです。だからこそオ裁判官を排除したいという請願になっているわけですね…〉

追記: n番部屋事件の担当が、オ・ドクシク判事からパク・ヒョンスク判事に交代になりました。
「国民請願事件と関連担当裁判長(オ判事)は上記の事件を処理するにあたり著しく困難な事由があると認め、担当裁判長がその理由を記載し再割りふりを求め、パク判事とする」とのことです。

追記2: 日本語版も記事が出ました。https://this.kiji.is/619784426124543073?c=39546741839462401


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