しりとりエッセイのあとがき
おかげさまで先日、全20篇の「しりとりエッセイ」を書き終えました。水増ししたような中身の薄い駄文にお付き合いくださって、ありがとうございました。
書きながら考えたこと、終わってから思ったことなど少し綴らせてください。
半世紀を越える人生の中でないまぜになったモノがどこかに溜まっていって、歳を重ねるごとに増す絡み具合いを感じていました。無意識に忘れなければ生きていけないような出来事もけっこうありました。
ときおり、紙のノートに手書きで吐き出すことで解きほぐしていたんですが、この不定期連載を始めて、書けば書くほど心がラクになる不思議。これがカタルシスというやつか、と。
この機会にそうしたことを思い出しても意外なほど ほぼ無感情でいられ、客観的に俯瞰しながら明文化できるようになった心境と、拙いながらも言いたいことをそのまま書き表せる技術が幾分か備わったこと、さまざまなネタになる経験を与えたもうた縁の数々に感謝したいところです。
執筆中、著者と編集者のような一人二役になれたのも良かったのだと思っています。「原稿まだか」と追っかけて、「今、書いてます!」と噺家っぽいマッチポンプで自分らしく、気に入っています。
また、過去にかかわりのあった人たちに会いに行かずとも一気にまとめて勝手に思い出して、結果的に自伝的エッセイあるいは私小説的なものとして短期間にカタチにしてしまうのが、もしかしたら走馬灯現象の一つで死期が近いんじゃないかということも考えました。
長生きはしたくないけど、ちゃんと終活をやって納得してからくたばりたいです。
あとは、途中で優柔不断癖を発症しまして、「このテーマよりもっと面白く書けそうなものがあるから、別のワードでつながるように調整しよう」というのを2回やりました。
当たり前ですが最後を「ん」にしないとしりとりを終わらせることができないため、「ん」へ着地するにはあーしてこーして……と、紙のノートはフローチャート的な矢印と取り消し線、後から貼ったメモ用紙などでぐちゃぐちゃ。
で、骨組み100%+肉付け60%くらいの完成度になっていた7本の原稿をボツにしました。せっかくなのでタイトルだけ公表して日の目を見る、ということにしておきます。
「無駄」「つまみ」「ギガ」「コンドーム」「見舞い」「がばがば」「ルンペン」
以上がボツになったもの。成仏してくれ、とは思っていますが後日ゾンビになるかも。
それから、最近では一般にも知られるようになった水星逆行という現象ですが、執筆中の8月5日から29日、ちょうどこれが重なりました。
作用としては「過去のことを思い出させる」とか「振り返ることを促す現象を引き起こす」とされていて、そのおかげかたいへん捗り、まさに滑るように書けました。スベるのはイヤだけど。
それにしてもなんの役にも立たず、毒にも薬にもならない米の粉で作った丸薬のような文章を、根気強く全篇読んでくださった皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。<完>