「父を送る《改》」出来!
少々クセの強い父親との縁を切ろう、と一度は覚悟を決めた娘が最期まで引き受けることになったキッカケとは────
訪問医療や介護施設の実状から葬儀の流れまでを記録した、これからお看取りをする可能性のあるすべての人への一助となる(かもしれない)一冊。
重版【父を送る《改》】スターオブババア著/B6判/260ページ/600円
著者が執筆を始めたのは「父を送」って半年ほど経った時期だと記憶する。本書のあとがきでも、「きつく、しんどい作業だった」と振り返っている。
「身内」には「家族、親族」の他に「からだの内部」という意味をもつが、著者の「身内」を喪失した傷がまだ癒えていない中、その一部始終を反芻し、平易に、明瞭に、文章という形でつまびらかにしていく作業は、昔の記憶から内臓までえぐり出すような思いだったかもしれない。実父の死を通して著者自身の人生観も確立したのではないか、と感じる内容だ。
本書では「日常」からゆるやかに「家族の死」を意識させられるが、そこには意外にも暗澹たる要素は薄く、しかし着々と濃厚に描かれていく。読み手としては想像をかきたてられ、追憶を思い起こさずにはいられない。
おそらく誰にでもいつか訪れる可能性のある、誰かを看取るという状況。ここに一つの家族のかたちがある。
追記。
初めて拝読したのは粛々とnoteに連載されていく「父を送る」だったが、それが本になり、前回の文学フリマ東京37にて購入。そして繰り返し読む。
編集作業中は、仕事というよりまるで映画を観ているかのように感情移入した。初校、再校と都度見直す中、いつも同じシーンで涙がこぼれ、なるほど! と唸り、イラッとしたり、ふふっと笑ったり……。お看取りの記録はもとより、喜怒哀楽も満載なのだ。
本書はもしかしたら名作映画か、あるいはネタバレもとい、オチがわかっているのに何度も聴いて、ついにはクセになってしまう古典落語のような類なのかもしれない。
もし、すでに初版本の「父を送る」をお持ちであっても、さらに読み応えある「父を送る《改》」をお求めになることをオススメします。何卒!