15.蠟燭 →
躑躅(ツツジ)や蝙蝠(コウモリ)にも似た、おどろおどろしい字面。読めそうだけど書けそうにない「ローソク」である。
ここでは結婚疲労披露宴でのキャンドルサービスや、地球にやさしいキャンドルナイトではなく、SMプレイの話をする。
緊縛して吊られたマゾヒストの肌に、めらめらと炎燃えさかる真っ赤なローソクを垂らしていき、ロウの固まった部分めがけて強かに鞭を打つ。弾け飛ぶ欠片───そうしたプレイは派手に見せられるのでショーなどでは欠かせないものだが、なかなかめんどくさいため普段クラブ内での頻度は低いように思う。
手がかかるのは、溶けたロウがそこらじゅうに貼り付いてしまうと簡単に取れないこと。あらかじめ養生シートを敷くなどの準備は必須で、プレイ中は布製品や部屋の備品に付着しないように細心の注意を払う。終わるとゴミもたくさん出てしまうが、М男に掃除をやらせ、「そこ、まだ残ってる。言われたことも満足にできないの」などと罵声を浴びせるところまでがプレイなのである。
さらに、使って解いた縄は持ち帰り、あちこちについたロウをカリカリと落とすという地味な作業も残っている。
新人女王様のうちはローソクの垂れ方や火の取り扱いに慣れていない。ロウが周りにつかないように、火事にならないように、などと考えているとプレイがおろそかになってしまうし、逆にプレイに集中しすぎると火災を起こす危険もある。
ローソク以外にもSMには危険が付き物だ。たとえば、縄をきつく縛ると、うっ血してしまうことがあるので指一本分の隙間を作りながら縛るとか、水責めの窒息事故や格闘プレイでの怪我なども起こり得る。慣れてきても油断はできない仕事なのである。ご安全に。
さて、あるМ男の話をしよう。SM歴は私より長く、おそらく一日の大半はМ的妄想をしているであろう、ごく普通(?)のサラリーマンで東京郊外にマイホームを持つ、4人家族の父である。絵に書いたようなジャパニーズ・スタンダード。
このМ男がある日、マイホームに一人で留守番することになった。
このチャンスに一人でやることと言えばオナニーである。普段から創意工夫をして楽しむタイプなので、「一人ローソクプレイ」をしようと閃いた。
家にあるのは仏壇の白いローソクだ。アルミホイルを巻いたローソクを「角ハンガー」のピンチに挟む。角ハンガーも洗濯物ではなく、ローソクを吊るす運命になろうとは思ってもみなかっただろう。
自分のカラダにロウがうまく垂れるよう、高さと角度を調整した。ヨシ。
妄想と股間を膨らませつつ全裸になり、いざ点火。すばやく角ハンガー下へ滑り込み、垂れてくるロウを待つことしばし───
ひぅあ、あっちぃぃぃぃぃぃぅぇ!!!!!!
このとき「低温ローソク」の存在を知らず、色が違うだけだと思っていたらしい。これまでにプレイしてきた女王様方は、もれなくイジワルだったのだ。
本人曰く「ご先祖様のバチが当たった」。
じゃ、次!「く」