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由希子<エピローグ>
幸せにしてくれる人と一緒になるのが幸せ。
・・・そんなこと、
自分にしてくれる人なんて現れるのだろうか。
そんな雲を掴むような希望を持つより、
いかに相手に好かれようとする努力をする方が人生の勝算はいくらかある。
そう考えて来た。
ここがヤだとか、これをしてくれないからダメ、ではなく
ここが好き、これをしてくれるから好き、って思うことにしようって・・・
一見、前向きだけど本当は「これをしてくれるから」は
「これしかしてくれないけど、これは"まだ″してくれる」の裏返しだ。
それでも、それでもまだしてくれることがあるなら・・・
人からしてみれば、
「そんなこと"しか"してくれないだよ!」
って言われるけど、みんな幸せの基準が違う。
「"こんな彼でも"してくれるってすごいんだよ」
それが自分の幸せだって、思おうとしてた。
ちょっとしたことがすごくうれしく感じられる方が良い、
何かしてもらおうなんて思う方が贅沢過ぎるんだよって
そんな風に幸せまで節約してた。
自分を大切に、とかよくみる文句だけど
自分が大事だから自分の好きな人と現実見ないフリしてまで一緒にいた。
自分の為、だった。
誰かの幸せは誰かの上に成り立つもので
誰かが幸せだと、誰かはそのことで不幸せになる。
それが現実なんじゃないのって、そんな気さえしてた。
そうじゃないと、そう自分に罪を背負わせないと
幸せは手にできないと思った。
彼と出会って二年が経ち、私は38歳になった。
彼が別居中だった頃、家のことや奥さんのことを話題にしては愚痴っていたのが、最近はすっかり話題にしなくなった。
会える日もぐっと減った。
気づいてる。
奥さんが家に戻って来ていることも、
私の存在が疎ましくなってきていることも。
「こんな俺じゃ幸せにしてあげれない、一緒にいていいのか」
と何度も聞くようになった。
最初はそんな確認しなかったのに。
どうして男は自分が悪者になることを避けようとするんだろう。
ハッキリ言ってくれれば・・・
いや、ハッキリするべきは自分だ。
もう答えは出ている。
自分が幸せ、としがみついたものは
今もはもう、不幸でしかないことを嫌でも気づいている。
最近、仲の良かった後輩がよそよそしい。
もしかしたら、私たちの噂が耳に入ったのかもしれない。
彼との連絡もこの噂が流れ始めたことで途絶えた。
・・・噂は彼にとって都合が良かっただろう、
罪悪感を感じることなく、これで私を切ることができる。
自分も、これで終われる。
「お互いの為」と言った彼の最後の言葉を信じたフリをした。
自分らしくない自分が一番、ヤだ。
・・・そう思っていた自分に戻りたい。
後輩に私の話をしたら、私を軽蔑するかな。
でもきっと、真剣に怒ってくれそうな気がする。
彼女はとても、とても真っすぐで
自分を愛するように、人も愛せる人だから。
明日、ランチに誘ってみよう。
断られても、何度でも。