短編小説『絶対アイドルやめないで』
まえがき
アイドルという存在は、時に光り輝くステージの上で、時に厳しい現実の中で、私たちに夢と希望を与えてくれます。彼女たちが笑顔の裏にどれだけの努力や葛藤を抱えているのか、その全てを知ることは難しいでしょう。しかし、彼女たちがステージに立ち続ける姿は、私たちに多くの勇気を与えます。この物語は、一人のアイドルが「やめない」という強い意志を持ち、挫折と向き合いながら成長していく姿を描いた短編小説です。
絶対アイドルやめないで
「もう限界だよ……」
楽屋の片隅で膝を抱える遥。彼女はステージに立つ度にその完璧なパフォーマンスで観客を魅了してきたが、その裏で自分自身との戦いを続けていた。
デビューしてから3年。トップアイドルとして数々の栄光を手にした遥だが、最近はSNSや週刊誌での批判や誹謗中傷が耐えなかった。「笑顔が作り物だ」「実力がないのに推されているだけ」――そんな言葉が彼女の心を蝕んでいく。
楽屋のドアが軽くノックされる。
「遥、そろそろ出番だよ。」
マネージャーの凛子が声をかける。彼女は遥の高校時代からの親友で、デビュー当時からずっと彼女を支えてきた。
「大丈夫、遥ならできるよ。」
その言葉に少しだけ力をもらった遥は、ゆっくりと立ち上がった。
ステージの上。
眩しいスポットライトが遥を照らす。観客の歓声が耳を打ち、心臓の鼓動が早まる。いつもならこの瞬間、パフォーマンスに集中できるはずだった。しかし、今日は違った。
「笑顔が作り物だって……。」
ふと頭をよぎるその言葉に、遥の体が少しだけ硬直する。
だが、観客席の一角に見えたのは、一人の少女。まだ小学生くらいだろうか、ペンライトを握りしめ、遥の名前を叫んでいた。
「遥ちゃん、頑張って!」
その純粋な応援に、遥の胸が熱くなった。自分がアイドルを目指した頃の気持ちが蘇る。
「私も誰かに夢を与えたい――それが始まりだった。」
遥は深呼吸をし、笑顔を浮かべた。それは自然と出たもので、決して作り物ではなかった。
ライブが終わり、楽屋に戻った遥は凛子に言った。
「やっぱり、私はアイドルをやめない。どんなに辛くても、私の存在が誰かの力になれるなら……。」
凛子は微笑みながら、彼女に飲み物を手渡した。
「遥の決意は本物だね。私も、ずっと支えるよ。」
その日から、遥は変わった。批判の声に耳を塞ぐのではなく、自分の信じる道を貫く強さを身につけた。ステージの上ではより一層輝き、観客の心を掴むパフォーマンスを見せるようになった。
遥が10周年を迎えた日のステージ。
観客席には、かつての少女が大人になり、友人たちとともに遥の名前を叫んでいた。彼女は言った。
「遥ちゃんがやめないでいてくれたから、私も夢を諦めずに済んだんだ。」
遥の瞳には涙が光る。彼女はマイクを握り、観客全員に向けて感謝の言葉を伝えた。
「皆さんがいるから、私はここにいます。絶対にやめないと決めたからこそ、この瞬間があります。」
スポットライトに照らされた遥の姿は、誰よりも眩しく輝いていた。
あとがき
アイドルという存在は、夢や希望だけでなく、多くの困難とも向き合わなければなりません。しかし、彼女たちの努力や笑顔が誰かの人生を変えることもあります。この物語が、何かに挫折しそうな時の勇気や支えになれば幸いです。
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