小説もどき

とある企業の社長の父に4人の息子達。母は末の子がまだ三つの時に他界した。それがうちの家族構成。
その中でも俺は長男で、唯一の成人……とは言えまだ大学生だが。
家にいることの少ない父の代わりとまではいかないが、それなりに弟達の面倒も見たりしてきた。

そんなある日、父に知らせたい事があるからとある日曜に集められた。

「紹介しよう、こちらお前たちの新しいお母さんと兄妹だ。」

そう言って隣にいる女性と制服の、恐らく次男と同じくらいの歳の少女を紹介する父。
二人は軽く頭を下げ、女性が口を開く。

「三嶋優里(みしまゆり)改め、赤枝優里(あかえだ)といいます。
こちらは娘の透子(とうこ)です。」

「これから一緒に暮らしていくんだ。」

そう言って嬉しそうに笑う父を見るのは、かつて自分が幼い頃……母が生きていた頃以来だった。
あの父が選んだのだから、相手の素性についてなんかは大丈夫だろうとは思うが……。

「っんだよそれ!」

思った通り、横から怒声が飛び出した。
相手方にわかりやすいようにと出生順で並んだせいで、俺と三男がもろに耳に被害を受けた。

「俺らに相談も無しか!?なのにいきなりここに住む?ふざけんなクソ親父!」

「落ち着け楓真(ふうま)。」

次男楓真は次が高3、受験に入ろうという今家庭環境を変えるのは俺も流石にどうかと思うが、声を荒げる必要はないだろう。
コイツは熱くなると言わなくていいことまで言ってしまうことがある。

「楓真の気持ちもわかるけど、オレの耳まで破壊すんのはやめてくんない?」

そう言って三男、紫苑(しおん)が耳をさする。
それを見て楓真がまた少し苛立っているのが見えたので、肩に手を乗せ少し力を入れる。

「その辺りの話はまた後だ。
とりあえず自己紹介くらいさっさと済ませよう。」

「……チッ。」

「弟が失礼しました、何分にも私達も何も聞かされていなかったもので。」

「いえ、無理もないでしょう。私も少し早急かと思ったのですが、善は急げとも言いますし。」

楓真の怒声を聞いても柔らかい笑みを浮かべる優里さん。普通年下とは言え男に怒鳴られたら少しは怖いと思うだろうに。肝が座っているというかなんというか。

「申し遅れました。私は長男の杏也(きょうや)、順に次男楓真、三男紫苑と……。」

「柚月(ゆづき)です。」

「はじめまして、龍太(りゅうた)さんからみなさんのことはお伺いしてます。
ほら、透子も自己紹介は?」

「……三嶋透子、高2デス。」

「……透子?」

「ヨロシクオネガイシマス。」

なんだ?緊張してるとか思春期の嫌がりとは違う。というか今なんか優里さんからすごい圧を感じた気がする。
ほんとにこの人何者なんだろう。

「ブッサイクな妹とかクソかよ。」

隣からぼそっと小さな声が聞こえすぐさま頭を叩く。
聞こえてしまったかと二人を……というより透子ちゃんの方を見るとじっと楓真を見ていた。

「何見てんだブス!」

「楓真!」

これは頭に血が上りきってる、良くない!
とりあえず楓真を部屋から出すしかないかと考えていると、透子ちゃんが近づいてきた。そして楓真の目の前でぴたりと止まる。

「ちょっ、透子ちゃ「ガッ!!」

抑えていたはずの楓真が吹っ飛んだ。楓真の頭があった場所には代わりに透子ちゃんの頭があった。
思いっきり頭突きをしたのだ、自分よりでかい、それなりに体格のいい男を吹き飛ばすほどの。
そして

「どこがブスだ、両親いいとこ取りのイケメンだろうが。
目見えねぇのかこの直情バカが。」

そう言って髪をかき上げた少女の額には傷一つなかった。
一方倒れた楓真はというと、衝撃のあまりそのまま気絶している。

「ひゅー、やるじゃん。」

「楓兄かっこわるー。」

茶化す紫苑と倒れた楓真を指で突く柚月、父と優里さんはニコニコと笑っていた。
何このカオス空間!?ってか父さんは自分の息子のこと心配してくれ!

「……キョーヤさん?」

「は、はい!?」

「フーマさんが暴言吐いてもほっといて大丈夫ですよ。私も母も、それぞれあしらい方心得てるんで。
ただ、私は『こう』ですが母は口が達者なので、廃人にならせたくなければ絡まないことを勧めます。」

「あら大丈夫よ、私またしばらく居なくなるから」

「はあ?また勝手なこと言って!?」

「まあまあ、今日はその話をしに来たんだ
楓真は一旦別室で寝かせてもらって、我々は食事でもしながら話そうじゃないか」


…………
同居もののドラマとかゲームとかあるけどこういう攻撃的な子がきた時どうなるんだろうって
自己肯定感高いタイプなので「○○家にふさわしく無い!」みたいなこと言われても「勉強もできて顔も良くて何が不満なんだてめえは!」って相手泣かせる。
先生方にも「こんなんが会社のトップに立ったら、不満たまってできる社員からさっさと転職して、最終的に会社潰れんだからちゃんと調教しろや!」とか言っちゃう。

かわいそ


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