iPhoneのメモ帳から覚えのないネタが見つかったので書く
*設定はフワッとしてる
割といいお家柄の一人娘として産まれた私。そんな私にも婚約者というものがいるわけなのだが、それがこの国の第一王子である。
とはいえお互い幼い頃より「なんか違うな?」という思いがあったのか思春期に入る頃には「好きなやつができたらいい感じに婚約破棄とかするか。」みたいな話をしていたわけだ。
そして17となり王立の学園に入学し、とある少女と出会ったことで私は気づいた。
彼女がヒロインでここはとある漫画の世界であることに。己が所謂異世界転生というものをしていたことに。
まあ少し古めの……よくある王道漫画と言えばいいのか、とても簡単に言って仕舞えば「王子と平民の女の子が波瀾万丈の末ゴールインする話」だ。
その波瀾万丈の中に私が悪役令嬢として本来いたわけだ。
だがこれと言ってあの王子に執着もなく、ささっと婚約解消して仕舞えばいい。が、それだけでは2人がくっつくことはできない。なぜなら身分差がエグいから。
原作では悪役令嬢やらその取り巻きから責められ「せめて王子の横にいても見劣りせぬ女性に!」とヒロインが成長していく。やがてそれが国にとって重要と思われるほどに。
しかし現状はといえばのほほんと毎日を送っている。なぜなら私が責めないから。
いや、正確にはどうにか奮い立たせようとちっちゃい嫌味は言っているのだけれど、いまいち響いてないというか。なんだったら懐かれているような気さえする。この間は手作りのクッキー持ってきてくれた。とても美味しかったけどそうじゃない。
ちゃんと責めろって?やだよ。なんで?推しだからだよ!!!ああそうさ!推しだったよ!じゃなきゃ気づかねえさ!
「いやわかる、成長していく姿も良かった。でも今ののほほんとしてるあの子も好き。かわいい。」
「そうか。」
「そうかじゃないよこのままだと王子とくっつかないじゃん。」
「俺に言われても?」
目の前には王子の従者……とはいえ身分自体は割と高めなのだが。こちらも幼い頃よりずっと一緒にいた仲のため時折こうやって話したりするのだが。
「王子も王子でなんでアピールしないのアイツ?なんで遠くから見つめてるだけなの?ちっちゃく『かわいい……。』とか呟いてんなよ本人に言えよ!」
「まあああ見えて引っ込み思案ですからね。」
「クソッ、こんなことなら社交性高めるために色んなところ引っ張り回すんだった……。」
昔から婚約者としての体裁もあるしと舞踏会からピクニックまでできるだけ誘ってはいたが、お互い「どうせ別れるしなあ」の気持ちがあったせいであまり積極的にはなれなかった。
まさかあれが「無駄なことに労力使いたくない」とかでなく単純に「人に会うのが億劫」だったなんて誰が気づこうか。
「くそっ、何か良い案が「あっ。」
突然従者が声を上げたのを聞いて顔を上げる。そして彼の視線の先を見れば王子と知らない女が横並びに歩いていた。
それを見て2人して固まっていると、突如女が王子に擦り寄った。王子はといえば少し戸惑ってはいるものの特に抵抗をする様子はない。それを見て私はすぐに駆け寄る。そして
「私の苦労を全部無駄にするな色ボケ王子がぁ!」
王子に飛び蹴りをかました。
………………
メモには
『①王子と令嬢が完全に相棒的ポジションでヒロインと付き合うのを応援とか誘導してたのに、何でかいつの間にか知らねえ女が王子を誘惑してて「はあ?てめっ、このっ!私の苦労無駄にする気かボケが!」ってなりながら王子殴りつつとヒロインちゃんをくっつけようとする話』
ってあったよ
何の時に書いたかは全然わからないよ