シカが出産直後の子ジカを舐めまわす訳
シカが子を産むと、子ジカの体中を丹念に舐めまわします。
舐めまわしたいほど可愛いから・・・ではなく、ちゃんとした理由があるのです。
それは、我が子を守るためでした。
生まれて間もない子ジカは数日間置き去りにされる
シカが肉食獣に襲われると、ほっそりした脚で驚くほどのスピードで逃げ去ります。シカが生き延びるたは、走って逃げることが絶対に必要なことです。
ところが、生まれて間もない子ジカは、まだ走れません。
そこで、母ジカは、肉食獣に見つからぬような物陰を選んで、子ジカを出産します。
出産後、一緒に走れるようになるまで、三日間ほど、そこに子ジカを置き去りにするのです。
置き去りにしている間は、日に数回、安全を見計らって授乳に訪れます。
それ以外は、その場所に置き去りです。
子ジカも心得たもので、その場を動こうとしません。
たとえ、肉食獣が近づいたとしても、母ジカは見て見ぬふりで、決して子ジカを助けに行こうとはしません。
子ジカを舐めまわすのは匂いを消すため
肉食獣は、嗅覚が優れているので、獲物の匂いによって獲物を見つけるのです。
そこで、母ジカは、生まれた直後の子ジカの身体中を丹念に丹念に舐めまわして、子ジカの匂いを消すのです。
匂いを消された子ジカが物陰にじっとして隠れていると、肉食獣はその近くに近づいたとしても、匂いがしないのであえて物陰を探そうとはしません。
子ジカも本能的に心得ていて、じっとして動きません。
子ジカが動かない限り、肉食獣がそれをみつけることはできないのです。
そうして三日ほど過ぎると、子ジカもしっかりと走れるようになり、母ジカと一緒に行動することになります。
母ジカが生まれたばかりの子ジカを舐めまわすのは、舐めまわしたいほど可愛いからではなく、肉食獣から生き延びるための本能的知恵によるものでした。
動物たちの本能はすごいですね。