レッドシアターキッズだった21歳女がジャルジャルKOC優勝について語る
2020年9月26日、キングオブコント2020でジャルジャルが優勝した。決勝進出は4度目、芸歴は決勝進出者の中で最長とか言っていたような気がする。決勝の1stステージが終わりファイナルに進む3組が決まったとき、この頃すっかり第7世代にご執心の21歳の私は「2位と16点も差あるからジャルジャル優勝するんだろうけど、空気階段も頑張ってほしいなぁ」なんてことを思っていた。しかしファイナルの結果発表を終え、涙ぐみながらトロフィーを手にするジャルジャルの2人を見たとき、私は11歳の頃を思い出しながら同じように涙ぐんでいた。
10年前の9月、『爆笑レッドシアター』という番組が幕を閉じた。内村光良がMCを務め、当時人気を誇っていた若手芸人達が様々なシチュエーションでコントを披露する番組。メンバーは、はんにゃ・フルーツポンチ・しずる・我が家・ロッチ・狩野英孝・柳原可奈子、そしてジャルジャルだった。私は当時この番組が大好きだった。しずるの村上にどハマりして、初めて誰かのファンになったのもこの番組だった。レッドシアターメンバーがフジテレビの夏のイベントのためにTHE BOOMの「風になりたい」をカバーしたCDを出したときは、もちろん購入した上に何度も聞いて誰がどこのパートを担当しているかも覚えた。間奏のはんにゃ金田によるラップも今でも歌える。また、すごくパーソナルな話をすると、女装した男性に魅力を感じるという特殊性癖が芽生えたのもこの番組がきっかけだった。この番組から私のオタク人生が始まったと言っても過言ではない。オタク気質が覚醒したことで私の人生はだいぶ豊かになった。だからレッドシアターには感謝しているし、私の人生に大きな影響を与えた番組であることは間違いない。
しかし、ここまで色々レッドシアター愛について書いてきたにもかかわらず、私は上の段落の1文目に書いたレッドシアターの終了時期を全く覚えていなかった。何ならWikipediaで調べた後も本当にその頃終わったのかピンと来なかった。大好きだったという事実や好きなネタは覚えているが、細かいことはあまり覚えていなかった。その程度だったんだと思う。そういえば、元ツイが見つけられなかったので私の気のせいかもしれないが、私の大好きだったしずる村上がいつかこんな旨のツイートをしていた。レッドシアター時代に「ファン」と名乗って「一生応援する」とか言っていた人達は今どこに行ったんだろう、みたいな。「これは私のことだ」と思った。あの、ツイートが胸に突き刺さるような気持ちはしっかり覚えているので、たぶんこんなツイートは存在したのだと思う。レッドシアターが終わった後、私は漫画・アニメ・声優・アイドル等をつまみ食いして色んなジャンルのにわかファンになった。オタクはオタクでも熱しやすく冷めやすいオタクだった。言い訳するつもりはないが、私を含めた多くの人間は熱しやすく冷めやすい。その上、熱されているときに軽率に「一生」とか「絶対」とか言う。いつか冷めるというのに。ファンでしかあり得ない私達はその都度対象を猛烈に好きになるのでその後冷めたときに与えるダメージについては無自覚だ。私は存在したであろうそのツイートを見たとき、なんだか心の底から申し訳ない気持ちになった。(ここまで言って当該ツイートが存在しなかったとしたら、これは私の心の闇が生み出したんだと思う。)
ちょっと脱線してしまったので話をキングオブコント2020に戻す。冒頭でも述べたように、私はキングオブコント2020が始まった時点で、いや何なら結果発表の瞬間まで自分がレッドシアターキッズであったことをすっかり忘れていた。何なら思い出さないようにしていたかもしれない。あまり言い方が良くないかもしれないが、当時のフジテレビのコント番組は花形であったにもかかわらず、番組終了後のレッドシアターメンバーはあまりはねなかった。当のジャルジャルも、めちゃイケメンバーに選ばれる等活躍の場を広げていくと思いきや、いきなり2人揃って金髪になったり、何ならそのめちゃイケ自体が終了に向けて下降していったりと、私が普段目にする関東のお笑い番組のメインストリームにはなっていなかった。レッドシアターでもツートップのような存在だったはんにゃ金田とフルーツポンチ村上は今や2人ともいじられキャラとして活躍している。いじられキャラが悪いとは思わないしむしろ進んでそこに行けるのは素晴らしいと思うが、どうも2人が10年前に想像していた未来ではないように思えてならない。我が家杉山は嫌われ芸人として名を馳せ、坪倉と谷田部もその嫌われネタに乗っかっている。しずるの池田はファミマのラジオで結婚を発表した。どれが悪いとは言わないしそんなことは言えない。ただ、どれもこれも、きっと10年前の私が想像していた未来とは違うと思う。様々な場で見かけるピカルの定理メンバーを横目に、私はレッドシアターが大好きだったという事実から目を背け始めていた。ジャルジャルがストイックにYouTubeにネタを上げ続けていたことも知っていたのに、観る気になれなかった。『勇者ああああ』の配信ライブで『ピラメキーノ』が復活し、そこにしずるも登場したことでかつて『スクールデイズ』という本を出版したメンバーが再集結したというニュースを観たときも、観れば良かったという気持ちを抱えながらもニュースを直視できない自分がいた。
そんな風に10年後の世界を生きていた臆病で卑怯な私が見つめる画面の中で、ついにジャルジャルが優勝した。M-1もラストイヤーまで出場し、決勝で惜しくも敗退しながらも自分達のスタイルを貫き続けたジャルジャルが、キングオブコントに至っては第1回から毎年出場し続け、3度も決勝に進出していたジャルジャルが、4度目の決勝で優勝した。不思議なことにジャルジャルの2人は10年経っても全く見た目が老けていない。画面の中で涙を堪えながらガッツポーズをしていたのは、10年前と同じ姿のジャルジャルだった。それを見たとき、本当に嬉しかった。涙も出そうだった。YouTubeすら観ていなかった私にはこんな思い入れがあったような発言をする権利が無いことは分かっている。しかし、優勝したジャルジャルの姿を見て、10年前の楽しかった日々が思い出されて、ちゃんと自分が好きだったものと向き合うことができた。私はレッドシアターが大好きだった。劇団ジョセフィーヌも、天使と悪魔と小柳も、イヤイヤヨゲームも大好きだった。みんなかっこよかった。そして、ジャルジャルが今でもみんなかっこいいということを愚かな私に教えてくれた。今からキングオブコント2021まで、私はしずるのネタを沢山観ようと思う。2021と言わず、キングオブコントがある限り沢山観ようと思う。キングオブコントは結成年数無制限。私は初めて私をオタクにしてくれたお笑い芸人が涙を流しながらトロフィーを持つその瞬間、後ろめたい気持ちなどなく画面越しに堂々と一緒に泣ける人間になりたい。コッペパン。