香港での3つの出会い
香港で開催した初の展示販売会は前回書かいたように、売上的にはとても残念な結果で幕を閉じていたが、そこでは、その後に続く、売上以上の素晴らしい出会いが3つもあった。
まず一つ目は、トークイベントの際に通訳をしてくれた香港在住の日本人デザイナーのMさんとの出会いである。Mさんは香港において10年以上のビジネス経験があり、門間屋のビジネスを一緒にしているわけではないが、香港の兄貴的な存在として、香港に行くたびに飲みに行き、くだらない話から、香港でのビジネスにおいて判断に迷う事等を多岐にわたり話せる貴重な壁打ち相手である。そんなMさんを通して、門間屋のビジネスだけでは出会えなかったであろう香港ローカルの若手デザイナーや作家との接点もでき、香港においてモノづくりに携わる若者の思った以上の熱量の高さを実感した。その熱量は、多かれ少なかれ、今後の香港マーケットにおいて、存在感を記してくるであろうと思われ、そんな彼らが、僕にとっては、これから香港マーケットを開拓していこうと考えている自分自身と妙にオーバーラップするところがあった。おそらくMさんも、直感的にそれを感じたからこそ引き合わせてくれたのではないかと勝手に思っている。Mさんや彼らとは、近い将来、何がしかの形でコラボをして香港での門間屋のビジネスステージをもう一段上げていきたいと思う。
そして、二つ目の出会いは、初日のトークイベント後のレセプションの際にヘルプで入って飲み物を配っていた日本人の若者と思いきや日本語ペラペラで見た目も日本人のような香港人のK君との出会いである。今となっては、この時のK君との出会いが無かったら現在の門間屋は存在していないと言っても過言ではないくらいのスペシャルな出会いであったが、当時はまさか、そんなスペシャルな出会いだとは露ほども思っていなかったので、何でそんなに日本語が上手で、しかも見た目からして日本人ぽいのか等を無駄にヒヤリングしていた(笑)。K君が門間屋にとって如何にスペシャルな存在かは、今後折に触れて書いていこうと思うのでここでの詳述は避けようと思うが、間違いなく言えることは、K君は今や門間屋の絶対的なエースであるという事である。
最後に、三つ目の出会いは、売上に関しては、ほとんど期待できないという事がある程度解り始めた、展示販売会開催から数日が経った時にご来店いただいた香港そごうのS店長との出会いである。返還前から香港そごうにいる大ベテランで見た目からして怖く、厳しい視線で門間屋の商品を睨みつけるその姿に、縮み上がった。しかしながら、そのS店長のお眼鏡にかなったのか、なんとテストマーケティングとしてわずか1か月ちょっと先の5月初旬のタイミングで香港そごうでの小規模なポップアップショップの機会を頂けることになったのであった。今や門間屋の旗艦店と言っても過言ではない香港そごうとのご縁は思えばこうして始まったのであった。そして、まさかの共通点もあり、今となっては大変良くしていただいているS店長とのご縁もこんな恐怖体験から始まったのであった(笑)
以上の3つが売上にはほとんどつながらなかった香港での初めての展示販売会の際に得た、プライスレスな出会いである。どの出会いも、偶然の産物であり、当然の事ながら、その後の事も計算できていた訳ではない。だからこそ、変な打算もなく、とてもフラットな気持ちとスタンスで接していた。それが良かったのかどうかは解らないが、それらの出会いが数年後にまさかの結果となっているのだから人と人との出会いは本当に面白い。
海外においては、時間も出会いも限られているので、その機会を如何に活かすかが、その後のビジネスに大きく影響してくると今となっては実感する。一方で、だからこそ、先述のようにフラットなスタンスで自分自身の人間性を知ってもらい、相手の人間性も理解しようとするスタンスが大切なのだとこれまた、今となっては殊更に、実感する。やはり、ビジネスは人と人なので人間的に受け入れられない人とはビジネスも成立しない。特に、物理的距離が発生する海外ビジネスはお互いの信頼関係が全てと言っても過言ではないと思う。
香港での具体的なビジネスに関しては次回以降で書かせていただきます。