コネなし、カネなし、知名度なしの地方零細ものづくり企業の海外展開のススメ③
こんにちは、門間屋の門間です。note第4回目となる今回も、前回に引き続きコネもカネも知名度も無い、無い無い尽くしの弊社のような地方の小さなものづくり企業が、海外展開をするにあたってのステップを弊社の経験を踏まえて簡単にまとめさせていただきます。
前回は、商談のクロージングから輸出して相手先に届くまで、で終わっていましたので、今回はその続きとして、価格設定や販売員の採用、売場での実際のエンドユーザーとのやり取りと、その後の納品のためのローカルデリバリーについて書かせていただきます。
今回の内容は、実際の売場での話が中心となりますので、臨場感がありお楽しみいただけるかと思いますが、バイヤーへの卸で完結している方にとっては発生しない実務になりますので、その点はご注意ください。一方で、期間限定のポップアップショップや自社の直営店の運営を検討している方にとっては、かなり参考になる内容だと思います。
■価格設定
まずは、商売の基本とも言うべき価格設定に関してです。これを間違えると、全然売れない、もしくは、売れても利益がほとんど出ないというような非常に残念な状況になってしまいますので慎重に行いましょう。価格設定に関しては、単純にかかったコストを積み上げれば良いという訳ではなく、類似品やターゲットが被りそうな製品の現地での販売価格や商習慣つまりは値切り交渉等も加味して決めていきます。ただ、初めてやる国の場合は、商習慣に関しては、未知数なので、一番多くいる民族の民族的な特徴も考慮して、ある程度のゆとりを持って決めることをおススメします。その際に、売りたい気持ちが先走り、ギリギリの価格設定にしてしまうと、後で泣きを見ることになりますので気を付けましょう。私はこれで何度泣きを見たことか(笑)
一方で、高過ぎるとこれはこれで、売れないどころかお客様からの信用を失いかねないので十分に注意が必要です。単発ではなく、結果を出して、定期的に展開することも視野に入れるのであれば、初回は、多少の利益は削ってでも、ギリギリ+αくらいの価格設定でテストしてみるのが良いと思います。そして、その価格でどの程度の値引きを要望されて、結果的にいくらで売れたかと言う実績を基に、次回以降の価格と限界値引率を設定します。それを繰り返し行い、価格と値引率をチューニングすることで、必ずやベストプライスに辿り着き、結果的に売上も利益も増えていくはずです。最初から欲張ると結果が伴わず、次がなくなってしまうので、その点は十分に考慮しましょう。
■販売員の採用
販売員の採用にはいくつかパターンがあり、一番簡単で安心なのが、現地にある日系の派遣会社にお願いすることですが、これは、想像がつくと思いますが、何かと経費が加算されているためか、かなり高いです。更に、その販売員に日本語スキルまで求めてしまうとこれまたエラいことになります。それこそ、開催期間にもよりますが、下手したら利益が吹っ飛ぶなんて事すらあり得ちゃいますので、その点は気を付けましょう。
他のパターンとしては、間にエージェントを挟んでいる場合は、そのエージェントに任せてしまうことです。その場合は、日本語スキルと質はほとんど担保されませんが割安ですし、ごくまれに大当たりすることもあります。そして、もう一つ、これはちょっと上級編ですが、まずは、現地で現地人通訳を雇い、その通訳の知り合いを紹介してもらうという方法です。もちろん通訳にもいくらかの紹介手数料は払います。この場合だと、通訳の費用分高くはなりますが、販売員の給与に余計な経費が乗らないため最終的には、そこまで高くなりませんし、何より、通訳の知り合いなので、コミュニケーションがとりやすく、シフトの調整等が非常にスムーズです。ちなみに、どのパターンの場合でも事前にオンラインで良いので簡単な面談をすることをおススメします。中にはいくら何でもそれは無いだろうという人もいないとも限らないので(笑)
そして、現場に立つ前の販売員教育に関してですが、事前研修のようなものを開催するのは難しいので、現地の言葉に翻訳したパンフやFAQ等があれば事前に写メでもよいので送っておき目を通しておいてもらうか、現地で似たような商品を扱っているショップがあれば、ピックアップしてとりあえずでも良いので見ておいてもらう等が考えられます。ただし、ほとんどの場合は何もしてくれていないと考えた方が賢明です。事前に言われたことをキチンとやっているのは日本人くらいです(笑)ですので、直接会ってから、個別にインプットしていくのが一番間違いありません。そして、各人の接客スキルの確認のためにも初回は最低でも3~4日は滞在し、次回以降のスタッフのセレクションに活かしましょう。
■売場でのエンドユーザーとのやり取り
売場でのお客様とのやり取りは、国にもよりますが僕の得意としている香港・上海は、基本的に中華系民族の方々なので非常に苛烈です(笑)百貨店であろうがどこであろうが、パッと見が上品であろうがなかろうが、イケると思ったらとんでもない値引きを要望してきます。大阪のおばちゃんどころの騒ぎではありません。もはや、悪魔のようです(笑)特に、上海と言うかおそらく中国全般だとは思いますが、いきなり半額とか信じられないことを平然と言ってきます。僕も初めのうちは、冗談かと思っていたのですが、どうやら冗談ではないらしく、結構本気で、しかもしつこく言ってきます。そして、応じないと、こんなに高いのはおかしい的なやや穏やかでない感じになる方すら出現します。しかしながら、それでもその方に買う気が無いわけではないのが難しいところで、実は結構買う気だったりします。
日本人の感覚で言えば、喧嘩に近いやり取りになる事すらありますが、その後、お互い納得いく内容にさえなれば、普通に買ってくれます(笑)しかも、交渉次第ではありますが、値引く代わりにまとめ買いを提案すると、大体乗ってきますし、まとめ買いのまとめ方も半端ないので、結果的にはそれなりの売上とやや目減りした利益が出ることになります。この内容からも先述の価格設定が如何に重要かがお解りいただけるかと思います。以上のようにお客様とのやり取りは、それなりにハードになることが多々あると思いますが、慣れてくればそれすら楽しめるようになります(笑)
■ローカルデリバリー
ローカルデリバリーつまりはお客様宅への配送は、やらないですむなら、やらないに越したことはありません。ですので、多少大きくとも持ち帰りができる商品の場合は持ち帰っていただく事をおススメします。なぜなら、ローカルデリバリーの質が、ほとんどの国において日本と比べて恐ろしく低いからです。商品を傷つけるだけでなく中には、お客様の家を傷つけてしまう事すらあり得ます。そして、何かあった時に、自らの非は決して認めませんので、確実にクレーム化します。
しかしながら、どうしてもやらざるを得ない場合は、具体的な商品内容や重量をしっかりと伝えて、モノによっては、多少高くなっても人数を多めに連れてくるようにコチラから指示をします。そうでないと、会社によって異なるとは思いますが、ドライバーがスタッフを手配するため、スタッフが多いと自分の取り分が減るため、何も言わないと1人でやって来るか、大型商品にも関わらず半分素人みたいなバイトを一人連れてくる程度でやってきます。にもかかわらず、無理やり運ぼうとするため、当然のごとく事故ります。ですので、もし納品に立ち合いができるのであれば、立ち合いをするのが一番確実です。そうでないと、色々とごまかしていることも十分あり得るからです。ちなみに、日系の物流会社も運ぶのは提携しているローカルの物流会社がほとんどなので、質はあまり変わりません。にも関わず、お値段は倍近くすることすらあり得ますので、その点は十分注意して、必ず事前見積りを取ることを心がけましょう。
■終わりに
今回のnoteは、かなり現場的な内容で書かせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?大変だけど面白そうだと思える方であれば、おそらく2~3回やれば段々と楽しくなっていくと思います。
当たり前の事ではありますが、国によって考え方や習慣は異なります。でも、同じ人間ですので、こちらが一生懸命やっていれば段々と協力的になりますし、仲良くもなります。もっと言うと、入り込みさえすれば、海外のほうが日本よりも親切な方が多いことに気づくと思います。と言うのも、日本人ほど遠慮がないので、何かと距離も近いですし、言いたい事も平気で言ってきますし、色々と余計な世話を焼いてくれます(笑)なので、慣れないと、それがしんどいのですが、慣れてしまえば、むしろ、楽ですし、居心地良く感じるようにすらなってしまうものなのです。ですので、興味のある方は、是非、海外ビジネスにチャレンジしてみてください。
ご質問等あれば、遠慮なくご連絡ください。
次回以降は、弊社の海外ビジネスの現状や売場での出来事等をコラム的に書かせていただきます。