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香港の新たな展開

上海での傷が癒えない状態の中、昨年(2015年)末に勢いで決めてしまった香港での次なるポップアップが3月下旬から始まろうとしていた。しかしながら、こちらは上海とは違い、着実に実績を積んできているため、気持ち的にはだいぶ余裕があった。ただ、初の遠隔、つまりは、門間屋の人間が現地に行かず製品だけを送って現地のパートナーに任せると言う今までやったことがないパターンに挑戦することになっていたため、一抹の不安はあった。なぜ、そのようなやり方を選択したかと言うと、僕がそうしたかったというよりも、この頃になると、上海が失敗したにもかかわらず、僕があまりにも海外に傾倒するため、社内において海外事業に対しての空気が微妙なっていたためである。一方で、香港ではいつもおなじみの販売スタッフになっていた、日本語ペラペラ、見た目まるっきり日本人のK君の商品知識や販売スキルが確実に向上していたため、まあ何とかなるであろうと言う思いもあった。

無題

結果的に、最初の1週間は苦戦していたが、2週目で徐々に売れ始め、最終日に迷っていたお客様がまとめ買いをすると言うポップアップにおいての最高パターンで幕を閉じた。採算的にも、12月ほどの売上にはならなかったが、僕の宿泊交通費等の経費がゼロになったこともあり、完全にプラスとなった。時間もお金も節約できるので、今後はこのやり方が良いかもとすら思った。ところがである、次なる展開を見込んで、意気揚々と商談に臨んだところ、店長の様子がいつもと違うのである。最初は二日酔いかな、くらいに思っていたが、頭のキレはいつも通りなので、どうやらそうではないらしく、よくよく話をしていくうちに理由が明言された。それは、「作り手の方が、来なくなるとお客様が求めている物が解らなくなり、次第に売れなくなりますよ。今後も、香港でやっていきたいなら、毎回ちゃんと来て、お客様の好みの変化や御社に対して求めている物の変化を肌で感じた方が良いですよ。」とのことであった。頭をガツンと金づちで叩かれたような衝撃と共に、ちょっと調子に乗って遠隔を標準化しようとした自分を恥じた。やはり、現場をなおざりにしてはいけないという事を改めて心に刻んだ。これ以降、どこでやるにしても、必ず現場に行くようにしたことは言うまでもなく、更に、今まで以上に真剣にお客様を観察するようになった。そして、そのおかげか今でも海外は順調に推移している。
上記のような耳の痛い指摘を受けつつも、次の展示機会も頂けた。何と、2か月も空けない5月中旬からの2週間であった。正直、製造の観点からも、もう少し時間を空けたかったがせっかくの機会だし、という事でも今回も勢いで決めてしまった。

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しかしながら、現実的に考えて製造が間に合うはずがなかった。これは流石にヤバイ、と思っていた時に妙案が閃いた。上海でトラブってる商品をこっちに送る事にしたのである。どう言う事かと言うと、前回書かせていただいた、上海で多額の増値税を払ったにもかかわらずほとんど売れなかった製品を香港に転送する事にしたのである。と言うのも、上海で大量に売れ残った商品を日本に送り返そうとしたところ、新たな難題が発生した。それは、消費税である。消費税に関しては、もちろん、僕も知らないはずはなく、知ってはいたが売れる前提で輸出していたので、かなりの誤算であった。簡単に説明すると、自社の製品を上海から日本に再輸入する形になってしまうので、その分の消費税が発生するのである。当時、消費税は8%ではあったが、送った量が量なので、かなりの金額となってしまうのは明白であった。そんな時に、救いの神、香港が舞い降りたのである。なぜなら、香港はフリーポートのため、関税が発生しないのである。しかも、輸送コストも日本に送るよりもはるかに安く、香港での商材不足も確定していたので、完璧な作戦であった。まさに、捨てる神あれば拾う神あり、であった。
その後、万事うまく運び、5月のポップアップも充実のラインナップで開催することができた。

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今回も期間は2週間であった。1週目が終わりかなり苦戦していたが、前回同様、後半で伸びるであろうと高をくくっていた。ところが、くくった高がどこかに行ってしまったのか、2週目に入っても全然伸びないのである、そして、気が付けば最終日を迎え、更に気が付けば、そのまま閉店の時間を迎えてしまったのであった。全く売れなかったわけではないが、今まで順調に推移していたのが嘘かのようなひどい売上であった。まさかの事態に、呆然としてしまったが、これが、店長が言っていたことかもしれないと自戒した。確かに、順調に推移していたため多少の慢心もあり、キチンと商品ラインナップを精査せずに、ありもので対応してしまっていたのは事実であった。その結果、売場がお客様の求めている物から少しズレてしまっていたのかもしれない。もしくは、たまたまかもしれないが、そう思った時点で、今後の成長はなくなってしまうので、全てを自分のせいとして受け入れ、今後の教訓とした。
そして、かなり厳しい結果ではあったが、次回に関しては12月頭の2週間と会期中に商談済みであったため救われた。内容に関しても今までの箪笥のみではなく、家具も取り入れ、ルームシーンを作る提案型の売場とする新たな提案をしていたためかえって期待はしてくれていた。個人的にも箪笥のみの売場構成には限界を感じていたので、輸送コストはかかるものの新たな挑戦にかなりの可能性を感じていた。逆に言えば、これで結果が出なければこの次は無いという覚悟もしていたので、かなりの緊張感ではあったが。

提案型の売場で実際にどうなったかは、次回のお楽しみにとさせていただきます。

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