中国からの手痛い洗礼
上海においては、前回(2015年12月)行った和雑貨店でのポップアップが散々だったので今回(2016年2月)の日系百貨店での春節のポップアップ(11日間)に関しても、やや懐疑的でありながらも、内心は祈るような気持ちでもあった。と言うのも、そこには、売らなくてはならない事情があったのである。それは、もちろん前回全く売れなかったからと言うのもあるが、それ以上に前回の上海への輸出の際にとんでもない事件が起こっていたのであった。
それは、初めての中国への輸出のため税制等をよく理解していないがゆえに起こった事件であった。前回のポップアップ終了後に帰国したところ、物流会社から請求書が来ており内容を確認したところ、桁が一つ多いのである。見積り金額との乖離があまりに大きいため、何かの間違いかと思い確認したところ、何と「関税や増値税が加算された金額だから間違いありません。」との回答であった。「増値税?」と言う感じの私に、物流会社の担当者は事も無げに、「中国は増値税が17%(当時)発生するんですよ。」と言ってのけた。「なんじゃそりゃ~!!そんなもん知るか!!」と心の中で叫びつつ、冷静に「お見積りに載ってないのですが、それはどういうことですか?」と確認したところ、「いや、tax欄のところにon dutyと記載があります。」と言うのであった。確かに書いてはあるが、そのあまりにも不親切な態度が僕のやる気スイッチをオンにしてしまった。「それでは素人には意味が解らないし、説明もされていない。何のために、プロにお願いしていると思ってるんだ。それに、そもそも、増値税が17%ってことを知ってるのなら先に言うべき、もしくは、せめてパーセンテージを入れておくべき。」と見方によっては正論ではあるが、ある程度、貿易実務を身につけた、今から思えば、かなり無理のある豪快な逆ギレをしてみせた。が、「失礼しました。次回以降気を付けます。」と見事にスルーしようとするも、そんなスルーをやる気スイッチがオンの僕が許すはずもなく、もはや大炎上。「お前では話にならないから、上を出せ。」とお決まりのセリフを叩きつけ、上司にバトンタッチさせ、引き続きゴネまくるのであった。その後、当然のことながら両者の主張はほぼ平行線を辿り、遂には法的措置を取る取らないにまで発展していった。だが、冷静に考えて、法的措置を取られた場合、相手は大手、そして、内容的にも勝ち目はない上に、弁護士費用まで掛かってしまう。そこで、作戦変更、和解を申し入れお互いの妥協点を探ることにした。結果、不本意ではあるが、当然と言えば当然、こちらがかなり妥協する内容で落ち着いた。と、長くなってしまったが、そんな訳で、上海においては、想定以上の物流コストを稼ぐ上でも、売らざるを得ない状況なのであった。
しかしながら、そんなこちらの差し迫った状況とは裏腹に、ポップアップは非常に微妙な状況であった。まず春節のセールは、日本で言うところの正月の初売りなので、日本同様、人が押し寄せるように来るのではないかと思っていたが、そんなことは全然なかった。と言うのも、上海は中国全土から田舎者が集まる大都会なので、お正月は皆、それぞれの出身地に帰省するのであった。春節に帰省する人の割合は日本のそれ以上に多く、この時期上海からはかなりの人がいないくなるのである。もちろん、上海出身の人もいるのだが、中国人は日本人以上に家族とのつながりを大切にするため、正月は家族全員が集まって家で食事をすると言うのが慣例行事となっているのであった。という事を、春節真っ只中に知ったところで後の祭りである。結果、お客さんが来ないわけではないのだが、ランチとディナーの前後に波があるだけで後の時間は、ほとんどお客さんがいないと言う、非常に微妙な状況なのであった。しかも、ランチとディナーの前後にくるお客さんも一つ上の階にあるレストランを目当てに来るので、家具を買う気など皆無なのであった。
その上、場所的にもメインストリームからはズレた場所のため、更に、人通りは少なかった。こちらは下見はしていたのだが、春節でお客さんがわんさか来るはずだから大丈夫だろうと、場所のマイナス分をタイミングで補う計画だったのだが、その当てが見事に外れたのであった。更に、追い打ちをかけるような出来事が起こった、何と換金したばかりの中国元をほとんど丸々落としてしまったである。どちらも初日の事だったので、それからの10日間は、精神的にも非常につらかった。売上が上がってくれさえすれば、少しは癒されたであろうが、癒しの神はついに現れなかった。最早、拷問のような11日間を終え、逃げるようにして帰国したのであった。結局売上は、日本円にして10万円ちょっと。完全に赤字である。むしろ、落とした金の方が多いくらいである。
そして、そんな意気消沈した状態ではあったが、翌3月には別の日系百貨店での1週間の催事が予定されていた。こちらは、生活用品系の有料催事でしかも1階のメインエントランスを入ってすぐの場所での大規模催事だったので、ある程度の集客は期待できた。ただし、客層が合うかが一番の懸念事項であった。ところが、残念ながら、その悪い予感が的中してしまった。周りの出展者達の商品が思った以上に、ショボいのである。完全にバッタモンとしか思えないようなキャラ系のファブリック製品や見たことの無いブランド名の入ったキッチン用品等が大量に軒を連ねているのである。ある意味、夜市、いや闇市なのではないかと言う勢いであった。ただし、その分人の入りは良かった。しかしながら、客層が全然合わないため、ほぼ見向きもされないだけでなく、10分の1の価格なら買ってやるなどとふざけたことを言う歯の抜けたおっさんが登場する等、もう滅茶苦茶であった。最早、売る以前に、商品が盗まれたり、傷つけられたりしないかの方が気になり、一刻も早く会期が終了してくれることを祈るばかりであった。ところが、そんな状況の中なぜか小箪笥が2つ売れて、20万円ちょっとの売上となった。どうやら、前回春節の際に別の百貨店で見て迷っていたお客様が来てくれたのであった。まあ、いずれにせよ、トータルでみれば完全に赤字ではあるが。
と、そんなこんなで、中国からの多くの手痛い洗礼を受ける一方で、ほぼ良いところがないまま、一連の上海でのイベントは終了するのであった。
この話にはまだ後日談があるのでそれに関しては次回以降で書かせていただきます。