突発性難聴は時間との戦い!その注意点と対策

きょうは日本でも年間3、4万人が発症するという「突発性難聴」に注目します。突発性難聴は、文字どおり、突発的に左右どちらかの耳が難聴となってしまう病気です。そして、この治療は、時間との勝負で、対応が遅れると治らなくなるので大変です

いつ聴こえにくくなったか、わからない・・・

そして、この病気の問題点は、放っておく人が多い、ということです。      左右どちらかの耳が突然難聴となっても、片方が聞こえているので、         放置する人が多い!仕事が落ち着いてから病院に行く、という人も多く、 そこで、お医者さんに、「いつから聴こえにくくなりましたか?」と尋ねられても、「何日の何時何分に、聴こえにくくなった」と答えられない人が  ほとんどなのです。右の歯がちょっと痛くても、左で噛むことにして、      しばらく歯医者に行かないみたいにそういう、後回しにする人が多いようで、医者に行く頃には「いつからだっけ」と…

時間との戦い。ポイントは「発症から1ヶ月」

ただ、ここで重要なのが、突発性難聴の治療は「時間との戦い」だということ。治療は、発症から1ヶ月で終えるのが、重要です。1ヶ月以上経つと、残念ながらほとんど回復が望めません。治療に2週間程かかるので、         逆算して、最低でも発症してから2週間以内には、受診するのがポイントとなります。逆に言えば、早くお医者さんに行けば、治る、というわけです。

そもそもなぜ突然、難聴に?原因はカタツムリ・・・

耳の中のカタツムリの殻みたいな形をしている「蝸牛」という所に障害が起きます。耳は、大きく分けて、3つのパーツに分けられます。                    耳という漢字は、音読みで「じ」と読みますが、一番外側、外部に近いのが「外耳」、一番内側、内部に近いのが「内耳」、そしてその中間が「中耳」と呼ばれています。音は、鼓膜を通って、外から中、そして内側へと伝わります。そして、内部の内耳にあるカタツムリの形をした蝸牛が、音を電気信号に変換して、脳に伝え、そして音が聞こえる仕組みになっています。      この耳の中のカタツムリ=蝸牛に突然、障害が起きて、脳に音が伝わらなくなるのが突発性難聴です。

カタツムリに障害。その原因には「2つの説」が

でもなぜ、蝸牛に障害が起きるのか?原因は確定していませんが、             今あるのは2つの説。1つは、「血液の流れが悪くなっているケース」で、もう1つは「ウイルスに感染しているケース」です。

まず「血液の流れが悪くなっているケース」というのは耳の中のカタツムリ=蝸牛には、血液が栄養と酸素を送っていますが、何らかの原因で血管が細くなったり詰まったりして、血液の循環が悪くなり難聴になるというケースです。このため、この病気は「耳の心筋梗塞」とも呼ばれるようです。

2つめの「ウイルスに感染しているケース」というのは、カゼをひいた後など、免疫力の弱いときに、ウイルスに感染し、炎症を起こして、難聴になるというケースです。

治療は、2つの説、両方をにらんで、投薬!

突発性難聴については、薬の治療が進んできています。順を追って説明すると・・・

まず、症状を見極めるために、CTやMRIでの検査となります。蝸牛から脳に繋がる神経、聴神経に腫瘍がないか調べます。聴覚の神経に腫瘍があると、初期症状で突発性難聴が表れることがありますので、まずは、腫瘍なのか、突発性難聴なのかを、見極めておくために検査するわけです。そこで、腫瘍ではなく、突発性難聴だと確定したら、薬の治療になります。

治療は、先ほどお話した2つの説、「血液の流れ」「ウイルス感染」に沿ったものです。まず、血液の流れが悪くなっている場合、蝸牛に届く血管が詰まったり、狭くなったりしていると考えられるので、血管を広げる薬を点滴します。そして、ウイルス感染では、炎症を抑えるステロイドを使うのが効果的です。ただステロイド薬は副作用に注意が必要で、高血圧や糖尿病に持病がある場合、症状が悪化する可能性があるので、きちんとお医者さんに報告してください。そのような場合は、全身への影響を避けるため、ステロイド薬をピンポイントで耳に注射する方法もあります。これらと合わせて、耳の神経の働きを助けるビタミンBを飲む方法もあります。あとは、入院して安静にすることもあります。突発性難聴の原因は、血液の循環やウイルス以外では、「ストレス」があると考えられているので、安静が重要、というわけです。

早めの治療が完治への道

確約が出来ないのがまたまた厄介なところです。中には治療することなく治る人がごくまれにいますが、突発性難聴では、完治する人が3割、治らない人が3割、それ以外は、一定の後遺症が残ってしまいます。それでも、基本は、早めの治療をすることが重要です。1ヶ月以上経つと、残念ながらほとんど回復が望めません。左右の耳で、聞こえ方が違うなどした場合は、耳鼻科へ行ってください。

日本全国8時です。毎週月曜日 医学ジャーナリスト松井宏夫さん   2016/5/02掲載より。




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