薬の説明不足・注意点

薬のネット販売の3割で、ルール違反!

厚労省は先週、インターネットサイトで薬を販売しているサイトの中には、高いリスクがある薬なのに、およそ3割がルールに沿った販売をしていないとする調査結果を発表しました。薬について十分な説明がされていないのはネットだけでなく、実店舗・薬局でもあります。薬を買うときに、どんな部分に注意するといいのか。まず、今回の厚労省の調査ですが、これは去年10月から今年1月に行われたものです。調査の方法としては、実際に調査員が薬を購入してみる覆面調査で、516のサイトで購入したところ、そのうち29%では副作用のリスクが特に高い第1類の薬にも関わらず、義務である「情報提供」がなかった。また、本当に薬剤師が情報提供したのかどうか不明のサイトが「2割」ほどあったそうです。

情報提供のルールは?

市販の薬には、第1類のほかにリスクの低い第2類と第3類とありますが、情報提供について、第2類は努力義務、第3類は必要なしとされています。合わせて第1類の情報提供について法律では「薬剤師がする」と義務付けられています。第1類・第2類のネット販売が可能になった、2年前の6月の薬事法の改正でこういったルールが決められています。

薬のネット購入の流れは・・・

ネットサイトで、薬を購入する時、購入する前には、必ず年齢や症状などの状況を確認されます。そしてサイトには、販売する専門家(薬剤師・登録販売者)の名前や連絡先があって、「初めて飲む薬なんですけど、副作用が出たらどう対応すればいいか?」など、質問すると、個別の質問にあわせて、注意点などにメールや電話で答えてくれる=情報提供する、という仕組みがあることが義務付けられています。さらに、薬を買おうとしている人が、薬の情報について、「理解しているかどうか」を確認することが義務付けられています。購入者が「情報を理解しました」「他に疑問はない」という連絡をして始めて、販売する側は、薬を送ることができるようになります。

ネット販売業者のチェックポイント!

ネット販売のルールとしては、週に30時間以上開店している、実際の店舗があること。実店舗もただあればいいというわけでなく、購入者の見やすい場所に店舗の標識があり、薬剤師もしくは登録販売者が常にいることになっています。またネット上に、店舗の名前や、実店舗の写真、薬剤師などの名前を載せるのが義務なので無ければ、怪しいと思った方が良いです。

実店舗でも副作用の説明が足りない

ここまで情報提供がきちんとされていない、薬のネット販売についてでしたが、一方で、実際の店舗の薬局で、薬について、きちんと説明がされているかというと、私個人の印象としては、まだまだ足りていないと感じています。対面の薬局で渡される処方箋に書いているのは、薬の効き目と飲み合わせの注意くらい。薬の情報提供という点で、薬を使う側として特に気になるのは薬の「副作用」です。医薬品の副作用は、薬が病院や薬局に納品されるときに、ついてくる医薬品添付文書の「重大な副作用」の項目に、書かれています。処方薬の場合、薬剤師が患者さんに、副作用を説明する義務がありますが、患者さんが文書を直接見たり、説明を受ける機会はほとんどありません。

副作用の情報は更新される!

患者さんの方でも注意しておきたいのが、薬の副作用はどんどん更新されていること。その一例を挙げますと、糖尿病の薬で、「SGLT2阻害薬」と呼ばれるものがありますが、これは、血の中の糖を尿として出す働きがあるものです。この薬に新しい副作用が去年9月に追加されています。その副作用は体内の糖が少なくなって、脂肪がエネルギーに利用されることで起こる症状で、一時的に高血糖状態になり、めまいや倦怠感が生まれます。ひどい場合は、意識障害やこん睡状態に陥り、命にも関わるものなので、糖尿病の患者さんが知っておくべき副作用の1つと言えます。こうした新たな、命に関わるような副作用も含めて、この2年間で、国内の売上上位100位の薬のうち、「16種類」で、報告されています。

全ての人が副作用の実験対象

治験の段階ではわかっていなくても、実際に問題が報告されてから追加される、副作用がけっこうあります。一度、販売された薬について、言わばすべての人が副作用の実験対象となるので、新しく発見された、副作用を追加するのには時間がかかります。市販後調査と言って、発売後の薬を処方した患者さんに副作用が出たら、お医者さんは、その薬を作った製薬会社に報告することになっています。それを一度、国が副作用を精査し、一つ一つの薬に反映します。結果は、厚労省のホームページに、しれっと書かれているだけなのですが、正直、一つ一つを追いかけるのは大変です。

過剰な表現に騙されないで!

薬の副作用については、あちこち本や雑誌のタイトルで目を引くために、「危ない薬」や「怖い副作用も!」などと、過剰な表現が多く使われています。皆さんが名前を知っているロキソニンなども副作用に、胃潰瘍や腸閉塞といった副作用があるから「実は怖い」などとの表現が見られますが、それが全てではありません。副作用の情報は、更新されるものだということ。そして、最低限、ご自身の飲んでいる薬の名前については、知っておくことが大事です。薬で不安なことや何か異変があった時、ちゃんとした専門の薬剤師であれば、ネットであれ薬局であれ、それにしっかり答えてくれるはずでし、それが指標になります。

日本全国8時です。毎週月曜日は、医学ジャーナリスト松井宏夫さん   2016/6/20掲載分




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