NASH(ナッシュ)」=お酒を飲まないのに肝炎になる状態
今日は「お酒を飲まない人の肝炎=NASH(ナッシュ)」について。「NASH」というのは「アルコールの飲み過ぎではないのに、肝臓に脂肪がたまり、その影響で肝炎となった状態」の名前です。1998年頃から、ようやく認知されるようになってきた病気です。日本語ではそのまま「非アルコール性脂肪肝炎」。英語で(「Non」「Alcoholic」「Steato(脂肪)」「Hepatitis(肝炎)」)
C型肝炎は今や「治る」病気へ。一方、脂肪肝由来の肝炎は要注意
ウイルスやお酒ではない肝炎だからこそ見落とされがちで、特にこれからは注意が必要です。日本では、これまで、肝臓がんの、およそ7割が、C型肝炎が原因でした。ただ、C型肝炎は、ウイルスをやっつける薬ができたので、今後は、C型肝炎は治る病気となり、これによるがんは減っていくとみられています。
そうした中、肝臓がんの割合として増えているのが、ウイルス性ではない「脂肪肝」から肝炎になるケースです。「脂肪肝」というのは、肝臓に脂肪がたまる病気で、3割以上が脂肪となった状態を、「脂肪肝」と呼んでいますが、これを放置すると、肝炎などになってしまいます。この脂肪肝には2つあって、いっぱいお酒を飲んでなってしまう「アルコール性脂肪肝」とお酒を全く飲まないのになってしまう「非アルコール性脂肪肝」です。 お酒を飲む人は、ほとんどの人が、肝臓に良くないなと、気にしています。そこで、検査の結果を見て、お酒を控えたりしますので(実際に控えられるかは別として)、気づくことが多いようです。
お酒を飲まなくても脂肪肝からNASHに。肝臓がんのリスクも
お酒を飲まないし、また肝臓自体が大きな臓器なので影響が出にくく、ほとんど自覚症状がないまま、脂肪肝になっている状況にあります。実際、日本では、非アルコール性の脂肪肝の人は、およそ2千万人といわれています。これに気付かずに、放っておくと、脂肪肝が肝炎に進行して非アルコール性の脂肪肝炎=「NASH」になるわけです。「NASH」になると、2割近くが肝硬変に進行し、そこから肝臓がんとなっていきます。
NASHの原因は「食べすぎ」
ご飯やパンなどの炭水化物は、体内で「ブドウ糖」に変わります。そして、お肉の脂身や揚げ物などの油は、体内で「脂肪酸」に変わります 。 この「ブドウ糖」と「脂肪酸」は、普段はエネルギーになりますが、食べ過ぎると、肝臓の中で、中性脂肪となってしまい、脂肪の多い肝臓、脂肪肝となって、やがて肝炎「NSH」へと進んでしまいます。
NASHかどうかの判断は?
問題は「NASH」は放置していると危険なのにもかかわらず、気づきにくいことです。では、どうしたら「NASH」に気づけるのかというと血液検査と超音波検査でわかります。①まず、血液検査で、お酒も飲まないのに「ガンマ・GDP」が高かったら注意です。また、炎症しているかどうか、血小板の数値に異常があれば、注意が必要です。③それから、超音波検査で、脂肪肝かどうかを調べます。脂肪が多いと、肝臓が白っぽく見えるそうです。サシが入っているような感じです。これらで異常がある場合、肝臓の細胞を顕微鏡で見れば「NASH」かどうかわかります
NASHになったら治療は?
「NASH」の治療は、薬を使いながら、同時に生活習慣を改善します。 1つ厄介なのが、糖尿病、高脂血症、高血圧などを合併していることがあることです。こうなると、治療に使える薬が限られます。例えば、糖尿病の薬となると、インスリンを思い浮かべますが、それらの中には、肝臓を悪化させる作用のあるものもあるんです。この分野は新しい分野のため、ようやく2014年、薬のガイドラインができました。既に生活習慣病を持っている人は、お医者さんに相談しておく必要があります。一般的には「NASH」は、ビタミンEを服用して治療します。ビタミンEには、中性脂肪を抑える効果があります。
根本治療は、薬ではなくて・・
「NASH」の改善は、その原因である肝臓の脂肪を減らすのが一番です。肝臓は脂肪が、溜まりやすい臓器ではありますが、減らしやすい臓器でもあります。では肝臓の脂肪を減らす予防・改善法を3つ、ご紹介します。 ①うっすらと汗をかく程度の運動をしましょう。30分の早歩きがいいと言われています。筋肉は第二の肝臓とも呼ばれていて、脂肪を燃やすのに最適なんですが、脂肪を燃え出すのは運動が10分以上続いてからなので、30分程度の早歩きが必要です。②食事。間食をやめ、食事は寝る2時間前までに済ませること。③脂肪ビタミンEをとりましょう。ビタミEが含まれるのは、青魚やアーモンドなどですが、アーモンドはカロリーが高いので「1日に片方の手のひら一杯ほど」を目安に。バランスの良い食事と生活習慣が重要です。「NASH」は、薬の服用と生活習慣の改善で、大体1ヶ月間で改善していきます。
要注意!急激なダイエットはNASHに逆効果!
注意が必要なのは、脂肪を減らそうとして、急激なダイエットをすること。急激なダイエットは、逆に肝臓の脂肪を増やす危険もあります。肝臓に溜まった中性脂肪を血液中に送り出す時には特殊なタンパク質が必要ですが、急激なダイエットで、そのタンパク質が足りなくなることがあるからです。
森本毅郎・スタンバイ!医学ジャーナリスト松井宏夫さん
2016/5/09掲載分。