中高年女性に多い“めまい”
たかがめまい。されどめまい。タイプは4つに分けられる!
春は、気温の寒暖差が激しいですが、そんな時起こりやすいのがめまいです。 悩む人は、男女比では1対3と女性に多く、特に60代以上では2人に1人が経験者です。「たかがめまい」と放っておく人もいますが、重大な病気のこともありますので、誤解のないように、きちっと判断するために、めまいを取り上げます。
簡単な運動で治るめまいもあれば、危険な脳の病気のめまいもあるります。そもそも「めまい」と言っても、その種類によって、大きく4つに分けられます。
1.ぐるぐると、目の前が回る「回転性めまい」
2.フワフワして、スポンジの上を歩いているような「浮動性めまい」
3.ゆらゆらと、体が揺れるような「動揺性めまい」
4.立ち上がったときに、フワーっとする「立ちくらみ」です。
ぐるぐる、フワフワ、ゆらゆら、そして立ちくらみ、の4つですが、立ちくらみは、血圧の調整がうまくいかず、脳の血流が一時的に不足して起こるものです。 原因は、主に疲労やストレスによる自律神経の乱れですので、ストレスや生活の改善がカギとなります。
脳からくる怖いめまいも。症状はきっちり伝える!
めまいというと、ただの疲れと思いがちですが、実は脳の病気の可能性もある脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れる脳出血、脳に腫瘍ができる脳腫瘍こうした病気の影響で、めまいが起きることもあるんです。通常のめまいに加え、体の麻痺や痺れ、激しい頭痛、言葉がうまく出てこない、特に、安静にしても、どうしても立てない、歩けない場合は、直ちに医者へ。通常のめまいは耳鼻咽喉科になりますが、こうした場合は、神経内科や脳神経外科へ。 その場合、医者へは、次のことを伝えてください。めまいが、いつどんな状況で起きるのか。どんなめまいか(ぐるぐる、フワフワ、ゆらゆら)どれぐらい続くのか。そして、頭痛など、他の症状はどんなものなのか。特に、この、めまい以外の症状が、重要になります。
代表的なめまいが「良性発作性頭位めまい症」
症状が、めまいだけの場合、その原因の9割以上が「耳」にあります。 その中で特に多いのが、「良性発作性頭位めまい症」と言います。このめまいは「ぐるぐる」型のものが多いです。バランスに関わるのは、耳の奥、鼓膜よりも脳に近い「内耳」です。そこにある「三半規管」がバランスをとる、というのは、時々、聞くかもしれませんが、めまいについては、もう1つ、別の器官が影響しています。それは「耳石器」で粘着性で、石ころのようなものがたくさん乗っかっていて、通常、身体を動かすと石ころが粘膜上をゴロンと動き、脳がバランスを確認します。ところが、この石が、粘膜にくっついていればいいのですが、粘膜からはがれ落ちて、三半規管の中に入ることがあります。すると、三半規管が、この石ころでかき回されて、バランス感覚がおかしくなり、ぐるぐるといった、めまいを感じてしまうのです。
女性は骨粗しょう症に注意!
特に中高年の女性の2人に1人はめまいを経験していますが、これは、中高年の女性に多い病気、骨粗しょう症に関係しています。50代以降の女性は女性ホルモンが低下し、カルシウムが不足することから、耳の石ころも弱くなって、はがれやすくなると考えられています。
治すための、リハビリ!
治療そして普段の訓練で治ることが多くなっています。まずめまいに悩んだら、まずは脳神経外科、神経内科を受診してください。そこで、脳に問題が無ければ、耳鼻咽喉科のめまい外来での受診になります。症状がまだ軽い場合は、1,2ヶ月で自然治癒することもあります。なのでその場合、めまいを抑える薬や、吐き気を抑える薬、不安を抑える薬で、つらい症状を一時的に和らげる治療をしていきます。一方、重症の場合は、ただ安静にしているだけでは、いつまでたっても治りません。その場合はリハビリを行い、三半規管に入り込んだ、石ころを元あった場所に戻します。いろいろなリハビリがありますが、一例として、横浜市立みなと赤十字病院の新井基洋医師が考案したリハビリでは目が回らないように小脳を鍛えるリハビリを導入しています。フィギュアスケート選手が高速回転をしても目を回さないのは練習の積み重ねによって小脳が鍛えられたからですが、これを同じ手法で行います。具体的にすることは、まず、4泊5日ほど入院し、「めまいリハビリ体操」を行います。24種類の体操メニューを、1日4回、こなす事で、7割の患者さんが入院中に改善し、その後の自宅リハビリをあわせると、9割の人がめまいを克服できるそうです。
どんな体操かというと・・・
1個につき、15分程度で、例えば、両手を肩幅に開いて前に突き出し、両方の手はグーを作り親指を立たせます。そして、頭は動かさず、目だけで、左右の親指の爪を20回、追うだけです。こうした運動を24種類行うことで、バランス感覚を取り戻せるそうです。そして、もう1つ、予防としても重要なのは、寝る姿勢をいつも同じにしない事。いつも左右どちらかに向いて寝る人は、重力で耳の石ころが落ちやすいので要注意です。これを治すリハビリもあります。あとは、骨粗しょう症の改善。これは食生活の改善と運動で対応しましょう。
2016/3/14森本毅郎・スタンバイ!医学ジャーナリスト松井宏夫さんより。